上州の冬は寒い。今朝は寒かったな。事務所に石油ストーブを出すべ、今年の春しまった石油ストーブをごそごそと出して灯油を入れて火を付けてOK。そして大体翌日になると、石油ストーブが壊れたから直してくれという電話がかかってくる。
毎年のことだが、寒さの初日ではなく決まって2日目に電話がかかってくる。行ってみると芯が固まっていて動かない。昨日はちゃんと火が付いたのにという。お客様に灯油の在処を聞くとポリタンクが太陽に当たっている。これ昨シーズンからここに置いたままでしたか?。はい。
原因は、灯油が太陽に当たって化学変化を起こしたためです。芯を交換していきますから、もったいないようですが新しい灯油を使ってください。それとシーズンを越す場合は太陽に当たらない場所に置いて持ち越してください。
お客様のところで新聞紙を広げて芯を抜き出して持って行った芯と交換する。手が灯油まみれなって油臭くなって下手すると着ている物まで油が付いてしまう。寒くなって石油ストーブを使い始めると毎年何件かこういうことがある。
ぼくが昭和38年に店に入ったすぐは、まだ芯にガラス繊維が使われていなかったので、太陽の当たる所で灯油を持ち越したからといって芯が固まってしまうというトラブルはなかったように記憶している。その代わり芯が短くなったので取り替えてくれというのはしょっちゅうあった。
どっちにしても灯油まみれになって芯の取り替えをするのは店に入った時からやっていたことで、芯を取り替えてくれと言われた時にすぐに取り替えられるように芯の在庫は切らさないようにしていた。芯を交換してくれと言われて、生憎と芯の在庫がありません、何日か待ってください、などと言おうものならこのくそ寒いのにそんなに待てるか早く交換しろ、と脅しつけられる。
そして石油ストーブの芯がガラス繊維になった。店に並べた時に現物を見てみた。なるほどこれなら焼けて芯の先端が短くなることはないなと思った。ついでに取り扱い説明書を読んでみたら、太陽に当たって持ち越した灯油は化学変化を起こしているので使用しないでください、と書いてあった。
何じゃこりゃ。今まではそんなことは書いて無かったぞと思ったが、その年は何事もなくシーズンを終えた。トラブルはその次のシーズンの幕開けに突然やってきた。忘れた頃にやってくるというやつだ。
石油ストーブの芯がガラス繊維になったお陰で、芯を交換する作業の絶対量は減ったのだが、毎年持ち越しの灯油が太陽に当たっていたことによる芯の交換が何件かあった。最初の頃は電話がかかってくると大わらわで対応していたのだが、何年かすると、今日ストーブ出したから明日当たりどこかから電話がかかってきそうだなと思っていると、案の定電話が掛かってきた。
ぼくの感覚ではストーブの芯がガラス繊維になったのが原因ではなく、石油の精製方法が変わったために起きた現象のような気がするのだがよく分からない。
話は変わって隣の店を借りて店を増築した年の冬、コロナの石油ストーブを仕入れている取引先が大型の石油ストーブを1台持ってきてくれた。大きな燃焼筒が二つ並んだ最新式の石油ストーブだ。
早速店に出して灯油を入れて火を付けた。暖かい。しかし店全体を暖房できるほどのパワーはない。それでも七輪に練炭よりはいい。この石油ストーブの天板は反射鏡が付いていて熱くない。
腰掛けるのに丁度いい高さに天板があると大概の人が腰掛ける。腰掛けると天板がいい具合に暖まっていて下の燃焼筒で燃えた熱が足に反射して実に気持ちがいい。あんまり長居をして座っていると怒られるので、入れ替わり立ち替わり石油ストーブの天板に腰掛けていたら、天板が少し変形してしまった。
今も昔も石油ストーブの燃料タンクに灯油を入れるのは手が臭くなって嫌なんだが、かといって寒い思いをするのはもっと嫌なのでやる訳だ。なりが大きいだけあってこの石油ストーブの燃料タンクには灯油が一杯入る。よっこらしょと持ち上げていかないといけない。
冬の朝店を開けると石油ストーブの燃料補給が日課となる。誰がということはなく、その時手が空いている人がやることになっている。この石油ストーブは灯油を馬鹿食いするので店の裏には灯油をドラム缶で買ってある。
これは大きくていいや。これと同じ石油ストーブをくれというお客様がいるかと思っていたのだが、そういうお客様はいなかった。市内ではボス猿がよく行っていたパチンコ屋さんで、うちの店と同じストーブを使っていた。それを知っているということは、ぼくもその頃パチンコをやっていたということだけどね。
店の人が石油ストーブの天板の上に腰を掛けたり、時にストーブの前でお客様が暖を取ったりしながらも、冬になるとこの石油ストーブは店を閉鎖するまで朝から晩までもくもくと燃え続け故障らしい故障をしたことがなかった。
それもそのはず、この石油ストーブは芯上下式ではなく、芯の位置は固定で浸潤してくる油の量を調節するタイプだった。しかし灯油の量を調節する人は誰もいない。つまりどこも動かさずに使っていた。
シンプルイズベストという言葉はパソコンやり始めてから覚えたのだが、世の中何事もシンプルイズベストがいい。それにしてもお金が無い今日この頃である。不自由を常と思えば不足無しなんだが、ぼくもFRBのようにゼロ金利にして市場にじゃぶじゃぶとお金を供給したいよ。インフレ起こして米国債という借金を目減りさせるつもりかね。かなかなかなー。