MRは、ぼくのために6畳のプレハブを用意してくれた。そしてMRは夜の仕事としてスナックをやっている。カウンターの中には、MRの嫁さんと手伝いに来ている女の子が入って接客していた。
MRとぼくは、スナックに来る若いお客様の話し相手になっていた。これは、MRの帳面を見に来ていた時からやっていたことで別に目新しいことではない。月に一回だったのが、週に何回かという頻度に代わっただけだ。
話し相手になる回数が増えると次第に仲良くなるのは世の常。その内に麻雀すんべという流れになって、それじゃおれの部屋でするべか。で、ごく自然にぼくの6畳のプレハブが麻雀部屋になった。
ベットを置いてあるところはカーテンで仕切ってあるので、4畳半位の空きスペースがある。麻雀卓置くには持ってこいの広さだ。早速麻雀卓広げておっぱじまった。シロぽん。
ぼくも麻雀は嫌いではない。どちらかと言えば大好きだ。居ながらにして毎夜毎夜メンバーが集まってきて麻雀をおっぱじめる。こちらから出かける必要がないから楽なもんだ。
一つだけ困った問題がある。遅くても12時までという暗黙の約束をしてあるのだが、白熱してくると12時を越えることがしばしばあった。やるべやるべと言った手前ぼくがおらやーめた。と、言う訳にいかない。
来るメンバーは日によって違うが、ぼくの方は身代わりがいない。いても隣でがらがらやられたんでは寝ていられない。これじゃたまらないから、おい毎日やるのはやめんべということになった。
昼間はきつい肉体労働、夜は麻雀で夜更かし。当然翌朝は起きられない。MRの嫁さんが起こしに来る。起こしに来なければいい女なんだが、飯食わせてくれる人だから文句言う訳にいかない。眠い目をこすりながら毎朝起きていた。
通常人は、7時間から8時間眠ればよいと言われているが、ぼくは9時間くらい寝ないと駄目な人で、これは今でも変わっていない。ナポレオンは3時間で大丈夫だったというけど、ぼくには理解不能な世界だ。
話が逸れた。麻雀は主にスナックのお客様。まぁ町の若い衆を相手にやっていたのだが、たまに仕事を持って来てくれる人を相手にしたことがあった。やる前にMRがこれは接待だからと一言言ってくれれば良かったのだが、何も言わないで麻雀を始めてしまった。
ぼくは接待という感覚をまったく持たないで満貫以上の手しか狙わないでやっている。結果的にこれがよかった。先方もぼくに習って大胆な役作りをしてきた。大三元をつもったお客様は大喜び。
さすがに大三元2色をポンされたら後の1色は出せなかったのだが、最後の1つを引いて来た。その日は、お客様のつきが良かったようで次から次と上がりまくり、ぼくの方は後一歩のところまでいくのだが、ろんできなかった。
そして12時前お客様は満足して帰った。こちらは悔しくて悔しくて仕方がない。やっている最中は気が付かなかったのだが、一晩寝て起きたら、ああ、あれは接待麻雀だったのかと気が付いた。ぼくの場合気が付くのがワンテンポもツーテンポも遅いのが欠点だな。それでも注文もらえればいいや。
ぼくの麻雀は、昭和39年に店でOTさんから教えてもらった10円麻雀が根底にある。OTさんは、大きい役を教えるだけで、降りることを教えなかった。だからぼくの麻雀は結構豪快な役作りをする。相手をする方はそれを知っていればいいカモにすることができるかもしれない。
麻雀教わったのが17歳の時、一時は夜ごとにバトルを繰り広げたが10年もしたらやらなくなった。やりたくても面子が4人集まらないとできない。いろいろな人と麻雀をしてきたが、年と共に面子が揃わなくなって麻雀から足を洗ってしまった。今では並べる位はできるが点数を数えることができない。
2の1乗、2乗、3乗…9乗は512というのは、麻雀しなくなってから覚えてた世界だが、これがまた似ているんだわな。