毎日新聞にまた突っ込みどころのある経済コラムが載った。またまた突っ込んでみよう。
----2008年09月12日 毎日新聞 経済観測より----
…前略 総選挙をやって民主党が政権を担当することになった時に、どんな経済対策・景気対策を打ち出すかが気になる。
昨年来、民主党は、野党の気安さからか、バラマキと言いたくなるような施策を、山のように打ち出してきた。特に印象に残るのは、零細・兼業農家に対する所得保証金の支援政策であり、専業農家の競争力を高めようとした農水省も、これに負けて農家へのバラマキ予算を計上せざるを得なかった。
この民主党の支援金政策は、日本農業を世界市場から置き去りにしたと、後世に厳しい批判を浴びるだろうが、その他にも民主党の掲げている政策には、甘くておいしいが締まりのないものが多く、その累計は15兆円超にもなると伝えられている。 …後略。(大三)
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コラムの内容は民主党を批判する内容だが、ぼくは政治にはノータッチなので、政治については書かない。このコラムは、大三氏が書いているが、先の童氏といい、耳順氏といい、どうも毎日新聞の記者の農業に対する認識にズレがあるようだ。あえてズレているように書いているのかもしれないが、これでは世論をミスリードしてしまう。
大三氏は、零細・兼業農家、という表現を使っているが、日本に零細でない農家がいるのか?。目の敵にしなければならないほど兼業農家がいるのか。専業、兼業を問わず農家の倅で後を継ぐ奴は極端に少ないぞ。しのごの言わなくても農家の数は少なくなる。それが深刻な農業後継者不足と新聞が書いて不安を煽っている問題だ。
ぼくに言わせれば農業後継者不足は全然問題無いと見ている。むしろ今まで農業後継者が多すぎて、狭い農地を大勢で耕作しなければならない点に問題があった。
零細・兼業農家に対する所得保証金の支援政策、というのは何のことだろう。特定の農家に所得保障をするということなんだろうか、そんなことしたら所得保障を受けられない農家が筵旗上げるはずだし、日本の法体系からして平等とは言えない。
しかも、専業農家の競争力を高めようとした農水省も、これに負けて農家へのバラマキ予算を計上せざるを得なかった。と書いているが、幾ら計上したのだ。針小棒大に書くほどのことか。猫の目農政は今に始まったことではない。専業、兼業を問わず農家の数は減少している。無理矢理減らすと摩擦が起きるから多少バラマキやっても構わないだろう。
専業農家の競争力を高めようとしているのかどうかは知らないが、農水省が規模の拡大化、農地の集約化を施策として打ち出してきているのは確かだ。今やっているのは、ある一定面積以上の麦作をしないと麦の買上金額をカットするというもので、稲作ではまだそれをやっていない。農地の集約化にいたっては、まだ目に見えた動きは出ていない。
大三氏は、この民主党の支援金政策は、日本農業を世界市場から置き去りにしたと、後世に厳しい批判を浴びるだろうが、と書いているが、馬鹿も休み休み言いわっしゃい。国土の狭い日本の農業が、どうやって飛行機で種播いているところと対抗できるというのだ。
専業農家の競争力を高めるとは、何と比べて競争力を高めようとしているのか、よもや世界市場相手に競争力を高めるなどという脳天気なことを頭に描いて書いているのではあるまい。日本の農業が世界と競争できるなどということは、今の段階では幻想でしかない。
農業問題を考える時は、農地という私的所有権と職業選択の自由の二つを抜きにして考えることはできない。日本の農業は、GHQの農地解放によって農地の所有権をズタズタに細分化された。農水省は、そういう手かせ足かせの中で遠い将来いつか大規模化農業が実現できるようにとやってきた。
今やっと麦作で一定面積以上の耕作をしなければ麦の買上金額をカットするという方法で、大三氏の言う零細農家を切り捨てる段階まで来た。しかし、稲作には、まだ手が付けられていない。麦作で大規模化のはしりをやっている段階で、どう考えても競争力という言葉には結びつかない。
農業を考える上でもう一つ重要なポイントがある。日本は主要な野菜の種子をほとんど外国に握られている。一例をあげればハニートラップじゃなかったハニーコーン(とうもろこし)の種は輸入品だ。しかもこいつは一代交配だから自分で種を採取して播いても芽が出ない。
若い農業の担い手を入れろ、規模を拡大しろ、競争力だと騒ぐのは自由だが、机上の空論で世論をミスリードしないでくれ。種子という首根っこを押さえられたら、競争力もへったくれもない。戦争に負けるということはそういうことだ。