図は(資料2)のスライドを改変したもの
赤色の線: 高糖質食; 血糖値の乱高下、ブドウ糖がエネルギー源
緑色の線: 糖質制限食(低糖質食); 血糖値は全く上がらず、ほとんど変動しない、脂肪酸とそれが分解されたケトン体がエネルギー源
糖質制限の簡単なまとめ
*これは、非常に簡単にまとめたものです。詳しくは、糖質制限の日本の第一人者 京都高尾病院 江部康二理事長の著書をご覧ください。
糖質(米、パン、麺、芋などのデンプン、糖を含む液体飲料など)を食べる
今の日本人の平均的な食事は、摂取エネルギーの60~65%が、糖質により供給される高糖質食で、タンパク質と脂肪は20%程度ずつと少量
糖質は、消化されてブドウ糖になり血液中に入り、ブドウ糖濃度(血糖値)が上がる
すい臓からインスリンが出てブドウ糖濃度を低下させ、ブドウ糖を筋肉などに使わせる
仕事や体温調整にブドウ糖を使ってしまえば肥満に関連する問題はない(血糖値の上昇と低下に関連する問題はある)
しかし、仕事・生活の機械化、夏場のクーラーや冬場の暖房により、体がブドウ糖を使わなくなった
ブドウ糖が使いきれずに余ってしまう問題が出てきた
使い切れずに余ってしまったブドウ糖は
(1)脂肪に変換されて、腹に内臓脂肪としてたまって体重を増やし、有害なサイトカインを出し、
①血圧を上げる
②コレステロールを上げる
製薬会社から金を貰っていない日本脂質栄養学会の調査によれば、コレステロールは生きるのに必要な成分で、高コレステロールは長寿の要因
コレステロールは感染症・がん・長寿の強い味方 https://blog.goo.ne.jp/gadamski/c/e6f24b6f0f62a5bba4421eb32ffe855c
のブログ記事を参照
③中性脂肪を上げる
④インスリンの効き目を悪くしてブドウ糖を使いにくくする
インスリンの効き目が悪くなると、すい臓からさらにインスリンを出し続ける----すい臓が疲れ果ててインスリンが出なくなり糖尿病になる
(2)肝臓に脂肪としてたまる(脂肪肝)
(3)脳に悪い作用をして、うつ病、アルツハイマーなどを起こす
ではどうするか----糖質制限食にする
糖質を食べないようにして減らす
その代わりに、タンパク質と脂質を食べる
米、パン、麺、芋、糖を含む液体飲料などを食べない
肉、魚介類、卵、豆腐、チーズ、バター、ラードなどのタンパク質・脂質を含む食品、糖を含まない野菜を食べる
体に必要な糖(ブドウ糖)は、肝臓が、タンパク質・脂質の分解物、運動によってできた乳酸などから自動的に作ってくれるから全く心配ない
糖質制限食の効果は
(1)腹の内臓脂肪が減って正常な状態になり
腹の内臓脂肪が、良いサイトカインを出して、
①血圧が正常になる人が多い
②コレステロールが正常になる
人により変化は違う、高くなる人・低くなる人・変わらない人がいる
製薬会社から金を貰っていない日本脂質栄養学会の調査によれば、コレステロールは生きるのに必要な成分で、高コレステロールは長寿の要因
コレステロールは感染症・がん・長寿の強い味方 https://blog.goo.ne.jp/gadamski/c/e6f24b6f0f62a5bba4421eb32ffe855c
のブログ記事を参照
③中性脂肪が正常になる(普通は低くなる)
④すい臓が休憩をとることができ、糖尿病にならない(糖尿病患者は、インスリンや血糖降下剤が少なくなる、あるいは不要になる)
(2)肝臓の脂肪が正常になる(脂肪肝の改善)
(3)うつ病、アルツハイマーなどになりにくい
糖質制限では、糖質が分解されたブドウ糖の代わりに、食事中の脂肪(脂肪酸)とそれが分解されたケトン体が、エネルギーとして使用される。
赤血球などのブドウ糖しか利用できない細胞が必要とする体にどうしても必要な量のブドウ糖は、肝臓が、タンパク質・脂質の分解物、運動によってできた乳酸などから作ってくれるから全く心配ない
(以上は、(資料2)の解説)
糖質(砂糖、でんぷん)を食べると、消化液により分解されてブドウ糖になり、吸収されて血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が上がる。
ブドウ糖は、脳の快楽中枢に作用して、幸福感を与える。
眠気も出てくる。
ブドウ糖は新型コカインと呼ぶことも可能であり、どちらも脳の快楽中枢に作用し、脳は血糖上昇とコカインを区別できない。(資料3)
ブドウ糖(グルコース)は、次のような化学反応を起こし、高濃度は体に損傷を与えるため、速やかに濃度を低下させる必要がある。
・ブドウ糖(グルコース)は、エンジオール構造〔HC(OH)=C(OH)-CH(OH)-R〕を介して自動酸化により02-(酸素陰イオンラジカル、活性酸素)を作る。
・ブドウ糖は、メイラード反応によりタンパク質と反応し、02-(酸素陰イオンラジカル)などの活性酸素を生成し、AGE(終末糖化産物)を作る。(資料1)
・過剰な活性酸素とAGEは、老化や各種の疾患の原因になる。
このため、人体は、すい臓から唯一の血糖降下ホルモンであるインスリンを大量に分泌し、血糖値を急降下させる。
この血糖値の急低下が不快感をもたらし、人体は、グルカゴン、アドレナリン、糖質コルチコイド、成長ホルモンなどの血糖値を上げるホルモンを分泌して対処しようとする。
しかし、アドレナリンの分泌は、イライラ、怒りなどを生み、精神的に不安定になりやすくなる。(資料3)
血糖値が低下を続け、食後3~4時間後くらいに空腹感を感じ、同時に、食事前よりも血糖値が低下して低血糖となる低血糖症状(手の振るえ、冷や汗、不快感、頻脈など)を起こす人も出てくる(機能性低血糖)。(資料2)
これらの現象と症状は、全て食事の中に含まれる糖質が分解したブドウ糖により引き起こされる。
人の食後の、幸福感、眠気、不快感、イライラ、怒り、精神的な不安定、約3~4時間後の空腹感や低血糖症状(手の振るえ、冷や汗、不快感、頻脈など) (機能性低血糖)は、全て糖質により生み出される。
そして、空腹感を満たすために、再び糖質を食べて、同じプロセスを繰り返す羽目になる。
例えば、糖質を朝7時に食べて、10時の間食、昼12時の昼食、午後3時過ぎの間食、夜7時過ぎの夕食で糖質を食べ続けるというパターンになっているのが、普通の糖質過剰の日本人。
糖質を食べ続ける限り、この悪循環から抜け出すことはできない(糖質の奴隷)。(資料2)(資料3)
糖質制限では、糖質が分解されたブドウ糖の代わりに、食事中の脂肪(脂肪酸)とそれが分解されたケトン体が、エネルギーとして使用される。
脂肪やケトン体は、血糖値を上げないので、インスリンを急速に分泌して下げる必要がないため、先に述べた悪循環から解放される。
つまり、糖質の奴隷からの解放である。
*糖質制限の方法(江部康二理事長による)
種 類 |
食べ方 |
備 考 |
プチ制限 |
夜のみ主食を食べない 間食のおやつを食べない |
鍋料理のシメを食べないようにするだけで実行可能 |
スタンダード制限 |
朝と夜のみ糖質オフ 昼は糖質食 |
サラリーマンは昼食を糖質オフにしにくいから |
スーパー制限 |
三食とも糖質オフ |
糖尿病の人,ストイックな人向け 本気で痩せたい人向け |
*糖質制限が禁忌の方もおられます
糖質制限の日本の第一人者 京都高尾病院 江部康二理事長
2014年03月15日 (土) 【糖質制限食を実践される時のご注意】
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-2892.html
血液検査で、活動性の膵炎がある場合、肝硬変の場合、そして長鎖脂肪酸代謝異常症は、糖質制限食は適応となりませんのでご注意ください。
糖質制限食は相対的に高脂肪食になるので、活動性膵炎には適応とならないのです。
肝硬変では、糖新生能力が低下しているため適応となりません。
長鎖脂肪酸代謝異常症では、脂肪酸が上手く利用できないので、適応となりません。
腎機能に関して、日本腎臓病学会編「CKD診療ガイド2012」において、GFR60ml/分以上あれば顕性たんぱく尿の段階でも、たんぱく質制限の必要なしと明示され、日本糖尿病学会も2013年3月の提言で、それに従うとしました。
従いまして、糖尿病腎症第3期Aまでは、糖質制限食OKです。
(引用終わり)
資料
(1)日本油化学会誌第46巻第10号(1997), p.1137-1145
メイラード反応による活性酸素の生成と消去
Production and Scavenging of Active Oxygen Species by Maillard. Reaction
早瀬文孝、明治大学農学部農芸化学科
DOI https://doi.org/10.5650/jos1996.46.1137
(2)The Food Revolution-AHS 2011
Ancestral Health Symposium 2011
スウェーデン人 Andreas Eenfeldt医師の発表
(3)夏井睦医師の講演スライド-
糖質制限で健康になろう-人類に炭水化物は必要か?-
練馬光が丘病院 傷の治療センター、夏井睦(なついまこと)
http://www.wound-treatment.jp/slide.htm