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BIRDのブログ&ファンフィクション

タツノコプロの往年のアニメ「科学忍者隊ガッチャマン」の大ファンです。
この話題を中心に日常のことなどを綴ってみました。

火の鳥 その後

2017-02-19 18:30:00 | ファンフィクション

                 火の鳥 その後  
        
                                 by BIRD


     #1 科学忍者隊


 地球征服、世界制覇を目指したギャラクター最後の作戦は総裁Zによる地球そのものを
宇宙から葬り去るものであった。
宇宙トラクターに牽引された反物質小惑星の接近は大規模な気候変動を引き起こし
巨大台風、落雷 竜巻、津波 大地震、フェーン現象といった自然の猛威となって世界中に
襲いかかり大災害をもたらした。
過去に三たび繰り返された地球的規模の災害よりも圧倒的な被害を全世界に与え、
地球上の都市のほとんどが壊滅的な打撃を受けて世界は荒廃していた。
 一方、宇宙へ飛び出した科学忍者隊は地球に接近する反物質小惑星の軌道変更を試みて、
小惑星を牽引する七機の宇宙トラクターのうち、三機をガッチャスパルタンに搭載した
流星破壊ミサイルで破壊し、宇宙トラクターの牽引力のバランスを崩して残る四機を相互に
衝突させ、七機の宇宙トラクターの全てを破壊することに成功した。
だが、牽引力を失ってもなお反物質小惑星は地球への接近を続け、科学忍者隊は小惑星を覆う
バリアーにより大きなダメージを受けた。反物資小惑星の地球衝突まであと1分30秒。
もはや国際科学技術庁にも国連本部にも為す術はなく、時間だけが静かに流れていった。

 反物質小惑星を牽引する宇宙トラクター破壊後もなお、宇宙パルスにより小惑星の軌道を
制御している総裁Zの壊滅を目指した科学忍者隊は、反物質小惑星のバリヤーに傷つきながらも、
ガッチャスパルタンで総裁Zの本体に突入、コンドルのジョーが自らのブラックボックスの
反応によって総裁Zの核を探り当て、核を覆うフードバリアーを破壊した。
さらにガッチャマンがバリアーを失ったZの核本体をG-フェンサーで一刀両断にしたことが
総裁Zの完全な破壊につながり、悪魔の星、反物質小惑星は地球衝突の寸前で停止した。

そして…科学忍者隊も力尽きた。

 宇宙空間における科学忍者隊との最後の決戦で総裁Zは倒された。総裁Zを呑み込んだ
反物質小惑星は地球衝突の軌道上から宇宙の果てに遠ざかり、総裁Zを呑み込むことによって
大破し、その核は永遠に宇宙を彷徨う塵となり地球の危機は去った。多くのものが傷つき、
命を失い、地球は救われた。
地球征服を狙ったギャラクターの野望を三たび退け、遂にこれを滅ぼし、地球を守るという使命を
果たした科学忍者隊の消息もそれきり途絶えた。
だが、破壊された総裁Zが反物質小惑星に呑み込まれ消滅する直前に、総裁Zから宇宙へ向かって
飛び出した巨大なエネルギー体が確認された。


科学忍者隊ガッチャマンFその後の世界

2017-02-19 18:10:05 | ファンフィクション
 科学忍者隊ガッチャマンFはン年前にニコニコ動画で一気放送されました。
文句ばっかり言ってきたけど一度は全話観ておこう!と覚悟を決めたものの
つらい日々でありました。あまりの辛さにほとんど記憶に残っていません。
今回、Fのその後を書くにあたって1、2、47、48話のみ観てみました。
とても辛かったです(^_^;)

 つまり、今回のファンフィクションにはFの細かい設定は反映されず、
私の記憶違いも多々あると思います。
それでもいいよ、と思って読んでくださる方、ありがとうございます!
しつこくしてごめんなさい。

神さま

2014-09-29 01:43:57 | ファンフィクション


                           神さま



           「ここはどこだ?」
         周りのあまりの明るさに俺は声に出して呟いた。ようやく眩しさに目が慣れて来た。
         天井の高い広々とした部屋で、見上げるような高さの円柱形の柱が壁に沿って続いて
         いる。壁には大きな窓が並び、眩いばかりに明るい場所だった。部屋の大きさは見当も
         つかない。反対側の壁に並ぶ柱をみても、とてつもなく広い場所に居るということが
         わかった。
         (ここはいったいどこだ?地球はどうなった?)
         身動きをしかけて、頭痛も身体の痛みもかき消すようになくなっていることに気がついた。
         光が満ちているこの部屋の眩しさにも、何も起こらなかった。

          立ち上がった俺はすぐ傍の巨大な柱の陰に身を潜め、あたりの様子を窺った。
         とても静かで平和そのものの場所なのに、自然と身を隠す動きをしちまうなんて、
         これも訓練で叩き込まれた性というヤツかも知れない。
         もっとも身につけている例の衣服が草っぱだの硝煙の臭いだの汚れだの、この場に
         そぐわないこと甚だしい。
         とにかく、いかなる動きをしようとも、頭痛も眩暈も何も起こらなかった。
         これから裁きを受けるのだろうが、行き先がどこであれ、痛みもなく自由に動ける
         というのはありがたい。

         すぐ目の前を白い影が横切った。まさか…。  

           「お、おい、健…」
         立ち止まった影が振り返る。
         「え?お前、俺が見えるのか?」
         相手はかなりラフな口調で言うと、健そっくりな大きな空色の眼を瞠って心底、驚いた顔を
         した。
         「だって、お前…健だろ?」
         衣装というのか、身につけているものが白なので、なおのこと健にしか見えない。
         ひとつ違うのは、バードスタイルのマントの代わりに、背中に大きな翼があることだった。

          神殿の大広間で、健にしか見えないその神さまが言うには、人間の世界にある神の絵や
         彫刻というのは、人間が神をイメージして創ったものであり、当然、その制作者が見た誰かが
         モデルになっている、ということだった。
         そりゃ、絵や彫刻を創ったヤツが、実際に神さまに会ったわけではないからな。
         「お前は俺を『健』というイメージで見ているから、俺がその『健』に見えるのさ」
         「そうなのか…」
         (まあ、最後に見たのは健だったからな)
         納得した俺はさらに訊ねてみた。

          説明によると、神さまってのはそれぞれ担当が決まっていて、人間と同じようにそれを
         仕事としていること。ただ、人間と違うのは仕事、つまり自分が司る務めを疎かにすると、
         たちまち管轄を外されてしまうそうだ。
         「ふーん、さすがに厳しいな。でも、神さまの日常ってのも、案外、俺達人間と変わりが
         ないんだな。務めを果たしたり、食事をしたり…」
         「そうだ。神が霞を食べているなんて、人間が言い出したことなんだぜ」
         「霞を食べるのは神さまじゃなくて、仙人じゃなかったか?」
         「そ、そうだったかな」
         神さまは気まずそうに視線を逸らした。

          機嫌を損ねるとマズいので、俺は話題を変えようとこの神さまについて、聞いてみた。
         「あんたは何の神さまなんだい?」
         「俺か?」
         健そっくりな神さまは、自分の司る空について説明してくれた。
         「すると、ヘルメスって神さまなのか?」
         「ああ、神話に当て嵌めるならヘルメスが一番、近いかな」
         「ヘルメス神なら翼のついた空を飛ぶ靴はどうしたんだ?」
         「それが…」
         ヘルメスに近いという空の神は言葉を途切らせて、健と同じ凛々しい眉を寄せた。

           「え?ツケのカタに春の女神に取り上げられた?」
          「笑うなよ。あの女神は俺にばっか、当たるんだ」
         ぼやく神さまに俺は笑いをこらえて、重ねて聞いた。
          「で、空の務めが果たせなくて、今はどうしてるんだい?」
          ヘルメスもどきの神さまは躊躇いながらも、ぼそぼそと教えてくれたが、
          俺は堪え切れずに笑ってしまった。
          「それじゃ、空の神をクビになって、今は貧乏神なのかよ、あんた」
          「うるさいな!」
          端整な顔にムッとした表情を浮かべた、元空の神は
          「しまった!」
         慌てて俺の後ろを通って柱の陰に隠れた。
         「どうしたんだよ?」
         「マズい、春の女神だ」

          結い上げた濃い緑の髪に花々で飾られた冠をつけた、いかにも春の女神という神さまが、
         せかせかとした足取りで辺りを見渡しながら、大広間を横切って来る。
         この女神がジュンそっくりで、俺は吹き出しそうになった。
         「ちょっと、空の神…いえ貧乏神を見なかった?」
         少し先の円い柱の脇にいた子供のような姿をした相手に、春の女神が尋ねている。
         「もう!どこに行ったのかしら、あの貧乏神!」
         貧乏神の居所が掴めなかった春の女神は、全身に怒りを漲らせ、白いドレスの裾を翻して
         去って行った。

          「行っちまったぜ」
         「すまん、助かった。女神のヤツ、いい加減にしてくれよな、まったく」
         ブツクサ言う口調が健にそっくりで、可笑しくてたまらない。
         「そもそも春の女神がお怒りなのは、あんたがツケを貯めるからだろう?」
         「そう言うなよ。戻って来たらどうするんだ」
         白い貧乏神は迷惑そうに眉を顰める。
         春の女神を恐れる貧乏神は大広間には出て行こうとせず、柱の陰で俺の質問に答えて
         くれた。
         
          「あの柱の傍にいる、子供みたいな神さまは?」
         「あれはまだ見習いの神なのさ。背中の翼が小さいだろ」
         「なるほどね」
         春の女神から質問を受けていた小柄な神さまは、俺の目には甚平にしか見えない。
         不本意な転職をさせられ、新しい務めに不熱心な貧乏神は、大広間に居る他の神々と
         その仕事について、さらに説明してくれた。
         神さまというのは司る仕事によって、見かけが異なるらしい。
         さっき見た春の女神は花の冠をつけていたし、衣服や動作が波のようにゆったりとした
         海の神は、予想通り竜そっくりだった。
         健にしか見えないこの貧乏神は、自分が司っていた空の話をする時は青い瞳を輝かせ、
         いかにも空を愛する神だ。

           「早くツケを清算して、空を飛ぶ靴を返してもらえよ。それで空の神に戻れるんだろ?」
         「俺もそうしたいんだが…」
         今は為すすべもないらしく、貧乏神は長い睫毛を伏せて項垂れてしまった。
         あまり神さまを追い詰めるのも何なので、俺は彼の白い翼越しに大広間の神々を眺めた。
         話を聞いたあとで見てみれば、氷柱に見える真っ白な髭を蓄えたのが冬の神であり、
         衣装に動物がいくつも描かれているのは、動物たちの守り神だとわかる。
         それなら、車の神や武器の神さまも居るのだろうか?
         そうだ!平和の神はどこだ?何をやってるんだ?さぞかし忙しいこったろうな…
         俺は平和の神の姿を求めて、広い神殿を見渡した。

           神々は互いに言葉を交わしたり話し込んだりしながらも、務めを果たすために忙しそうに
         広間を横切って行く。
         その中で他の神々と離れて神殿の片隅に独り蹲り、誰とも話さない、いかにも暇そうな
         神さまがいた。
         旧約聖書に記述のあるノアの方舟に由来のオリーブの枝の冠をつけ、鳩が飛び交う衣装を
         着けた、平和の神は退屈そうに欠伸をしては辺りを見渡し、またもとの姿勢に戻る。
         通りかかった別の神さまたちが、立ち止って声をかけた。会話が聞こえてくる。
         「相変わらずですな」
         「ああ、西暦でみても2000年以上、暇だよ」
         「紀元前はいかがです?」
         「その頃から、何もしてないんだ」
         平和の神はのんびりと質問に答え、肩を竦めた。我、関せず、といったその長閑な受け答えを
         聞いて、俺はカッとなった。平和を司る神が何を言ってやがるんだ!

          「おい!あんたがしっかりしないから、ギャラクターの奴らが…」
         「シッ!」
         健そっくりの元空の神で、現貧乏神は慌てた様子で、俺を大きな柱のさらに奥の壁際まで、
         引っ張り込んだ。
         「声を出すなよ。神ってのは姿が見えなくとも、僅かな差異を感じるものなんだ」
         「へえ、そうかよ、さすがは神さまだ。だけどよ、平和の神があまりに暢気で暇そうにして
         やがって…」
         「あれは平和の神ではなく戦の神だ。お前の勘違いだよ」
         「な、なんだって!」
         戦の神が紀元前から何もしていないのに地上では…
         「じゃあ、地球上で起こる争いというのは戦の神のせいではなく、人間のせいってことなのか」
         「残念ながら、そうなるな」
         (なんてこった)
         俺は言葉もなく茫然とした。


           ふと、顔を上げる。大広間に大勢が集まって来る気配が伝わって来た。
         俺と貧乏神が潜む、大きな円い柱のそばを幾人もの神さまが通り過ぎて行き、声だけが
         聞こえてくる。

         「やっと終わりましたね」
         「ようやく戻ってきますな」
         「ほんとうに大仕事でしたね」

          どうやら大きな務めを果たした神さまが戻って来るらしい。その神を迎えるために、
         神さま達は神殿に集まって来ているようだ。
         さっき、春の女神からの質問を受けていた、子供くらいのサイズの神さまがこちらに
         駆け寄って来るのが、柱の陰から見えた。
         竜そっくりの海の神もゆったりとした動作で、掛けていた窓のそばから立ち上がった。
         白い貧乏神から柱の陰から出るなと口喧しく言われているので、俺はこちらに集まって来る
         神さま達に見つからないよう気をつけて、話し声に耳を澄ませた。
         集まって来た神々は口々に、大仕事を終えて戻って来る神を称えている。

         「遂にやりましたよ」
         「最後までよくやり通しましたね」
         「丸2年掛かりでした…」


           (何の神さまが戻って来るんだろう?)
          俺には見当もつかなかった。
          不意に傍らの元空の神が白い翼を大きく広げ、ふわりと舞い上がった。
          「あっ!ちょっと!」
          俺は思わず彼を追って、柱の陰から走り出た。神々がいっせいに此方を見て、どよめく。


           「お帰りなさい、平和の神さま」
          目の前にジュンの顔をした美しい春の女神がいて、俺の手を取った。
          「待ってたんだよ!」
          息せき切って走って来た小さな神さまが甚平の声で言いながら、飛びついて来る。
          「大変じゃったのう」
          竜そっくりの海の神が労わりを込めた、静かな口調で言った。肩に乗せられた大きな手が
          温かい。
          「それじゃ、地球は…ギャラクターは…」
          絶句してその場に立ち尽くした俺の前に、翼をはためかせて、健が、いや空の神が
          舞い降りて来た。
          風が起こって、俺の白い服や背中の翼を揺すった。まさか…。
          「ありがとう、ジョー。会いたかったぜ」
          俺が最後に見た、涙をいっぱいに湛えていた、大きな青い眼がうれしそうに微笑んだ。


          ―終―

2014-01-08 21:09:37 | ファンフィクション



                                  白               
   



          ゴッドフェニックスに甚平を残し、三人でギャラクターの鉄獣メカに忍びこんだ。
         リーダーの命令を受けて影は分散し、一気に攻撃をかけた。
         が、間もなくベルク・カッツェの甲高い声が響き、メカに仕掛けられた自爆装置が
         作動を始めた。
         いち早く逃れたカッツェは、置き去りにした部下ごと科学忍者隊を葬るつもりらしい。
         三人の脱出に備えてメカを追尾しているゴッドフェニックスも爆発に巻き込めば、
         デブルスターから高みの見物を決め込んでいるカッツェの作戦は大成功だろう。
         だが、市街地の上空を飛行している今、爆発させるわけにはいかない。

         健が受け持った場所で発見した自爆装置はフェイクで、フェイクながら小規模な爆発を
         起こして周囲を巻き込むように設計されていたが、彼はブーメランで装置ごと破壊し、
         難を逃れた。
         戦闘現場に出てくる末端の連中はともかく、作戦毎に新たな鉄獣メカや大量破壊兵器を
         繰り出してくるギャラクター中枢部の技術陣は確かに優秀だ。
         そして、彼らはたった五人しかいない科学忍者隊の実体を、作戦行動を、的確に正確に
         把握しつつある。

          「あっ!」
         思わず声が出た。これも自爆装置と見せかけたフェイクだ。
         (よくここまでそっくりに作れるわね)
         フェイクの存在とその仕掛けについて、健が注意を促してきたばかりだ。
         ジュンの位置からは最も遠い箇所を受け持っているジョーの声がブレスレットから
         飛び込んでくる。
         「ジュン、見つけたぜ」
         「間違いない?」
         「ああ、こいつは本物だ。コードがわんさか束になってやがる」
         「待って」
         ブレスレットで確認しながら目の前の起爆装置の形状、コードとの接続状況を比較する。
         「こっちのフェイクとそっくり同じだわ」
         「ほんとかよ?」
   
         交信を続けながらフェイクの仕掛けを探る。
         役に立たない起爆装置と見せかけの接続をしているコード。
         仕組みの隅々までジュンは目を走らせ、爆発の危険がないことを確かめた。
         (ジョーの方を解除しなければ…)

          「ジョー、コードを手繰ってみて」
         「わかった」
         息遣いだけが伝わって来るような暫しの沈黙の後、コードを確認したジョーの声が響いた。
         「こいつを切ればいいのか?」
         「ええ。まず…」
         ジュンが告げた色のコードを切断する音が小さく伝わってきた。
         フェイクのコードもジョーの作業に合わせて切る。
         「次は?」

         スパゲッティのように絡まるコードの中から起爆回路に繋がるであろうものを
         ブレスレット越しのジュンの指示に従ってジョーが2本目を切断した時、
         二人がかりの作業を嘲笑うかのように、爆発までの残り時間を示すデジタル表示が
         一気に進んだ。

         「カウントダウンが速くなったぜ!」
         ジョーの声が低く告げる。
         「なんですって!」
         一瞬の間があり、
         「あっ!」
         驚きを隠せないジュンの声がブレスレットから飛び込んできた。
         (フェイクまでスピードアップかよ)

         トラップだ。設定された爆発時刻以前に誰かが起爆装置のコードを弄って
         一定の時間を過ぎたら、カウントダウンを早めるようにセットされている。
         (そんな…)
         改めて残りのコードの束から選んだひとつを白い手袋に包まれた指先が慎重に手繰る。
         複雑に絡まるスパゲッティの先、パネルの陰にさらに二本、コードが隠されていた。
         白と紫。
         ジョーが目の当たりにしている本物と見かけだけは同じだ。

         時間表示は残り1分
         (どっちなの?)
         20秒
         (迷ったらダメよ!)
         5秒

          ジュンは思わず眼を閉じた。
         ズン…と揺すぶられるような振動が彼女のところまで伝わって来た。
         メカが大きく傾く。
         ジョーの安否を確かめるためブレスレットを口許に近づけかけたジュンは
         盛り上がるように斜めになった床を蹴って跳躍し、天井で反動を殺して通路へ飛び出した。
         不規則に揺れ動く通路をバランスを保ちながらメカの中央部に辿り着く。
         再びメカ全体が揺れて、天井の照明が一瞬で消えた。
         替わりに点灯した非常灯で辺りがオレンジ一色になり、けたたましい警報が艦内に満ちた。
         枝分かれしている通路の先では火災が発生しているらしく、粉塵を交じえた煙が
         濃く立ち込めている。

         煙を吸い込まないようマントで防ぎながらジュンは周りを見回した。
         床に散乱する機材や破片に交じってあちこちに転がる黒い塊はさっきの爆発で
         吹き飛ばされた連中だろう。離れた個所でまた爆発が起こって、今度はメカが横滑りを
         起こした。立っていられないほどの衝撃にバードスタイルの背が通路の壁にぶつかる。
         隔壁から背を浮かせて姿勢を保持し、続く衝撃に備えて身を低くした彼女に指が絡み
         ついた。
         (!!)

         オレンジに彩られた視野を流れる油煙の中で、白いブーツを掴んだ戦闘員が倒れたまま
         マスクの下の唇を歪めた。
         蹴り上げて外そうにも床が揺れ動いて姿勢を保つのがやっとだ。
         断末魔の彼は科学忍者隊G3号を道連れにできる栄誉に声もなく笑っている。
         (このまま死後硬直が始まったら…)
         床へ手をついたジュンの背に冷たい汗が流れた。

          濃く立ち込める煙を引き裂いて飛来した銀青の鳥が敵を弾き、阿吽の呼吸で闇色の
         シルエットが彼女の腕を強く引いた。指が外れる。
         「健!ジョー!」
         ジュンは弾かれたように顔をあげた。
         「ジョー、ジュン、急げ!脱出だ!」
         凛とした声にふたりは見通しの効かない煙の中に翻る白い翼を追った。

         複雑な構造のメカ内部からゴッドフェニックスが待ち受ける開口部に向かって、
         健が確保した退避通路を一気に駆け抜ける。
         「先に行け!」
         追いついたふたりに健が命じ、ゴッドフェニックスが轟音と共に上昇してくる。
         ジョーとジュンは不死鳥のコックピットで、力強い手が巧みにホバリングしながら
         近寄せて来たトップドームに跳び移る。
         ふたりを先行させた健は海上へ誘導したメカの内部で自らが仕掛けた破壊工作によって、
         確実に爆発が起こり続けていることを確かめ、傍らに舞い降りてくる。
         不死鳥は直ちにトップドームを閉じ、回避行動をとった。
         「大丈夫か?」
         バイザー越しに大きな青い眼がジョーとジュンを気遣う。ふたりはそれに頷いた。

          「竜、飛ばせ!カッツェを追うぞ!」
         二人の無事を確かめ指揮席に付いたリーダーは南部博士との通信を終えて、
         メインパイロットに命令を下す。
         「ラジャー!」
         メインスクリーンには爆風に煽られながら逃走する紫の海星が映っている。
         ゴッドフェニックスは青い焔を吐いて推力を増し、速度を上げた。


         「お姉ちゃん!」
         「甚平」
         モニターに張り付いていた甚平のほっとした表情に微笑みかけながら席に着いた
         ジュンは、レーダー席のジョーを振り返った。
         「どっちを切ったの?」
         「紫だ」
         怪訝な表情のジュンにジョーはにやりと笑ってみせた。
         (白が切れるかよ)



         ―終―

テニス

2013-06-29 15:51:07 | ファンフィクション

                 テニス
             



 審判台に腰かけたジュンは溜め息をついた。
ラリーが続くコートではボールを打ち合う音が絶え間なく響いている。
健もジョーも空調の効いた室内コートを走りまくり、汗びっしょりだ。
真っ先にプールに行けばよかった。竜と甚平のあとに続こうとした一瞬の間に
この二人に捕まってしまい、いつ果てるとも知れないゲームに付き合わされている。

(ん、もう!)
ジュンは可愛い唇をきゅっと引き締め、眦を決して目先の勝負にこだわり
コート中を走りまくっている二人にうんざりとした視線を向けた。

ゲームカウントがタイになり、やっとサーブ権が移った。
シューズと揃いのウェアを着けたジョーはセンターマークを確かめ、サーブのために
ベースライン際に2度、弾ませたボールを掴みラケットを構えて、ネット向こうの
レシーバーをじろりと見やった。

サーブを待ち受ける健はやや前屈みの姿勢で身体の正面にラケットを構えて、前方を見据え、
まるで獲物に飛び掛かろうとする猛禽を思わせる。
シャツの襟に淡い青のラインが入っている以外はウェアもソックスもシューズも白一色だ。
長い髪はバンダナで押さえている。

ジョーは左手で掴んだボールを真上にトスすると全身を弓のように撓ませて、垂直落下してきた
球面をラケットで薙ぎ払った。
弾丸の軌道のような直線を描き、サービスコートのコーナーに吸い込まれていったサーブが
鋭い音とともに叩き返されて来る。
ジョーの真横を抜けたボールはラインぎりぎりに着地し、壁際まで跳び退った。

「15-0」
ん?という表情で健がジュンを見上げる。
「アウトよ、健」
見下ろしたジュンがきっぱり告げる。
「オンラインじゃなかったか?」
諦めの悪いレシーバーはなおも喰い下がったが、主審は冷ややかにプレイ続行を促し、
健は渋々コートに戻って行く。
納得がいかないらしく首を傾げながらグリップを確かめたり、ラケットを振っては球筋を確認している。
いかにも悔しげな表情が可笑しい。

『日頃の行いが悪いのさ』
澄まし顔の主審をちらりと見て、ジョーは再びサービスコートのライン目掛けてボールを薙ぎ払った。