診察室でのひとり言

日常の診察室で遭遇する疑問、難問、奇問を思いつくままに書き記したひとり言

医師会報

2022年08月17日 | ブログ

開業して 20 年以上が過ぎてしまうと、開業当初を知っておられる患者さんもかなり少なくなってしまった。当初は、日帰りで心臓のカテーテル検査や治療を希望され、かなり遠方からもお越し頂く患者さんも多かった。今と同様、一般診療も行っていたが、その数は今とは大きく異なっていた。先日、診察中に『 先生、このクリニックは心臓の治療を日帰りで行っていたんですね。凄いクリニックだったんですね 』と 76 歳のSさんに尋ねられた。昨年、当院は開業 20 周年を迎えたのを機に、医師会より翌年( 2022 年度)の医師会雑誌(医師会報)に私の歴史の寄稿を依頼された。出来上がった会報は今年 4 月。さほど時間も経っていないので当院の歴史としてご一読ください。

 

『 開業 20 年を迎えて 』

 21 世紀の始まり、そして 40 歳という区切りのいい年である 2001 年に、新金岡の地にクリニックを開業した。長らく虚血性心疾患( 狭心症、心筋梗塞 )の専門家としてカテーテル治療( PCI )を行ってきた技術を生かそうと、多くの人たちの協力でちっぽけなビルの無床診療所でカテ開業を始めた。技術ミス、判断ミスを来せば患者の命に関わる検査、治療であるため、応援してくれる人たちが多くいた反面、気狂い扱いし否定する人たちもいた。結論から言うと、2 例、私の心拍数が速まる様なアクシデントに遭遇するケースはあったが、上手く対処することで治療ができ、経過観察目的で近隣の病院に一晩お世話になったケースはあったが、緊急に至るケースは 1 例もなかった。勤務医時代より技術を研磨し合った仲間が全国津々浦々におり、開業するや否や、治療の指導を依頼されたり、各地域のライブ( 実際の治療をしているカテ室と、その様子を大画面に映しだすホテルなどの大会議場をリモートで中継する研究会 )のオペレーターやコメンテーターを依頼されることが一気に増えた。また、外資系カテーテル企業とアドバイザリースタッフの契約を結び、近大心臓血管外科( 佐賀教授 )とは非常勤講師の契約を結び、また日帰りではリスクの高いと考えられる症例に関しては、JR 大阪鉄道病院、ベルランド総合病院、奈良香芝旭ヶ丘病院よりカテ室の利用を勧めて頂き、私が出向し同院で当院の患者の治療を行うなど、多くの関係者の方々には大変お世話になった。その他、大阪府下、兵庫県下の幾つもの病院からは治療の依頼を受け、昼休みや休診日を利用して出向した。滋賀の草津ハートセンター( 顧問契約 )と福岡の循環器病院( 飛行機で日帰り )にも月 1 回定期で出向した。全国的なライブ( CCT )、北海道地方の札幌ライブ、東北地方の安達太良ライブ、東京の心臓血管研究所が主管の DCA ライブ、東京医大八王子医療センターでのライブにも定期的に招聘され、クリニックを休診にして出かけることが多かった。現在、関西では近畿心血管ジョイントライブというのが継続されているが、開業 2 年目?に関西の達人たちと創設したライブ研究会( 学会扱い )で、その略は KCJL と名付けた。会議では KCL 3文字で決まりかけたが、私の姓名の頭文字が K J であることもあって、KCL の間に J を忍ばせてやった(笑)。今から思えば、よく頑張ったなあというより、楽しくて仕方がなかった。当然、頑張っても勤務医では給料が増えるわけでもなく、制限が多い。開業することで、フリーランスになり収益も莫大に増えた。 ・・・( 中略 )・・・ 『 私、失敗しないので・・』というドラマがあるが、失敗したら二度とお呼びがかからない世界であり、患者に大きな迷惑をかけることになる。この 20 年間、我々の技術が後輩たちに継承され、道具や技術はパワーアップしており、最早私の出番はない。結局、クリニックでの日帰りカテーテル治療は 12 3 年間行い、2017 12 月、2 代目の装置の寿命と共に診断カテ検査も終了とした。現在は、ベルランド総合病院( 前部長で現岐阜大循環器内科教授の大親友である大倉先生と、彼の後任で現院長の片岡先生には大変お世話になっている )に若い先生方のエネルギーをもらいに時々カテ室にお邪魔している。そして今、当院のカテ室は 64 列のCT装置に置き替わり、癌や出血、大動脈瘤などの早期発見の検査室になっている。先日、恐ろしいことに還暦を迎えることになり、もう若くないことを実感させられた。休みにはゴルフに出かけることが多くなってきたが、108 mm というカテ治療とは比べものにならないほどの大きな穴になかなかボールが入らない。まだまだ精進が必要なようだ。親も子も医者でない私にとって、加藤内科循環器科クリニックは今後どうして行けばよいものか、さあ、最後の課題である。  ( 医師会報より )

 


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