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生理心理学3回目:脳の働きを測る

2009-10-18 15:18:02 | Weblog
10月16日の生理心理学は、「脳の働きを測る」と題してお話をしました。

3つのキーワードを覚えてくださいと言いましたね。

アルファーブロッキング(α-blocking )、エフエムシータ(Fmθ)、そしてピー300(P300)の3つね。

まず、心の働きは脳の働きと考えることにしましょう。

心理学の目的は、心の働きを予測し、制御すること。

心の働きを知るには、脳の働きをみればいいとなりますね。

では、脳の働きはどのようにして測定することができるのでしょうか。

生理心理学では、生体反応を測定する技術をもちいて、心の働きをみようとします。

いろんな生体反応の中でも、中枢神経系の働きをリアルタイムで観察できればいいでしょう。

脳波測定の歴史をふりかえってみましょう。

19世紀後半の身体の科学的究明の流れに乗って、生体電気現象を観察した多くの研究がなされました。

ハンス・ベルガーがはじめて人間の脳波を記録することに成功したのは1929年のこと。今から80年前です。

ベルガーは、人の脳波は8-10Hzの周波数をもつ波が主たるものだということで、α波と名付けました。

目を閉じていると後頭部から記録される脳波はα波なんですが、目をあけると周波数の高い、振幅の小さな波に変わりました。

これを、αブロッキングと呼んだんのです。

脳の神経細胞が、働いているときにはα波は観察しにくいことがわかりました。

脳波をたくさん頭皮上から計測すると、どの部位にα波が出て、どの部位からα波が観察されないかなどをみると、今現在、その人の脳では、どの部位が活発に働いているかが分かりますよね。

側頭部からα波が消えれば、聴覚が活動している。左半球だったら、言語昨日が活発である。

後頭部からα波が消えれば、視覚処理が活発に行われている。

頭頂部の後ろからα波が消えれば、体性感覚が発生している・・・、といった具合。

こうして脳波のマッピングをとる例を、Fmθという特別な脳波律動を例に説明しました。

Fmθとは、前頭正中線部から観察される、周波数6-7Hzのθ律動で、計算作業などの課題に没頭し集中ている最中にしばしば観察される脳波律動です。

13枚目の図は、脳波を12チャンネル測定しながら、小学生の男の子にテレビゲームで遊んでもらっているときの10秒間の記録です。

4つめの脳波記録(青色の網がかかった部位)が、Fzという部位からの脳波。

10秒間、ずっと、振幅50-100μVのθ律動が出現しつづけているのがわかります。

14枚目の図は、この10秒間の脳波記録を高速フーリエ変換して、周波数分析したものです。

右下には、脳を上からみた12の電極位置に、周波数分析の結果をパワースペクトラムとして布置しました。

丸で囲んだのがFzの領域。6-7Hz成分が鋭く高いパワー値を示しています。

左上の図は、周波数帯域ごとのパワー値を12の部位ごとにプロットし、等高線を描く要領で等電位分布図を作成したもの。

いわゆる、脳波の周波数マッピングというものです。二重丸で示した上中の図(θ帯域)をみると、前頭部にθ律動がかたまって出現している様子がわかりますね。

このようなFmθは、クレペリン検査中にも、バイオリン演奏中にも観察されます。

15枚目の図がそれです。大学生がクレペリン検査をしている最中が左、バイオリン演奏をしている最中が右。

赤く線をひいた箇所が、Fmθ出現部位。いずれもFzでたくさん出現していますね。

16枚目の図は、10名の大学生がバイオリンを演奏している最中、楽譜のどの場所でFmθが出現するかを黒いバーで示しました。技巧が必要な箇所、楽音で酔うような箇所で多くの演奏家の脳波にFmθが出現している様子がみえます。

このように、脳波のある成分を観察しつつけていると、今現在、その脳波を出している人は、どのような状況なのかが推測できますよね。これが脳波を計測する生理心理学の真骨頂です。

さいごのキーワードが、P300.

脳波の事象関連電位、EPRsの一つでs。

測定原理を18枚目の図で示しました。

刺激を与えてから500ミリ秒間の脳波を256回加算する様子が示されています。

刺激時点でそろえて、脳波を加算処理して得られた波形は、刺激によって誘発された加算平均波形なので、平均誘発電位と呼ばれます。

誘発電位は、刺激の認知や注意の出現などといった事象と関連していると推察可能です。

そこで、事象関連電位(ERPs: Event Related Potentials)と呼ばれるようになりました。

ERPsには、刺激の有無や刺激属性(強さや大きさ、長さなど)に対応して出現する外因性成分と、注意や比較判断などの内的事象を反映した内因性成分とに分類されます。

19枚目の図は、オッドボール課題とよばれる課題で観察されたP300と呼ばれるERP成分です。

2種の音刺激を1-2秒間隔で提示します。例えば0.1秒持続する1000Hzと800Hzの純音。提示比率を2:8にすると、高頻度刺激には出現せず、低頻度刺激にだけ出現する成分がこのP300.

ポジティブ(プラス)の電位で、刺激提示から300msあとに現れるのでP300の名がつきました。

注意の集中に関連した電位だとかんがえられています。

21枚目の図はCNV。よーいドンでスタートする陸上競技選手の脳では、このように、よーいからドンまでの間に、ネガティブ(マイナス)電位が発達しています。これを、随伴性陰性変動(contingent negative variation)と呼んでいます。

期待波、注意波とも呼ばれています。

αブロッキング、Fmθ、P300などの特徴ある脳波成分やERPを観察すると、どのような心の働き・脳の働きをリアルタイムにかつ連続的、非侵襲的に観察できると考えますか?

今週金曜日は生理心理学の授業はありません。その間、そんなことを考えて過ごしてください。

では。

2009/10/18・記




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