Pierre’s Holiday

我が家の愛亀「ピエール」と過ごす日常。休日に楽しむ家庭菜園などについて、思うまま書き綴ります…。

ピエールへ 3

2010-09-11 23:07:54 | ピエールくん
カメを買うことにしたのはいいが、ホームセンターにはまだ着いたばかり。
まだ、広大な店舗の3分の1も見ていない。
特に目的があって来たわけではないが、もう少し店内を散策してから、カメを連れて帰ることにして、とりあえず会計だけ済ませた。
売り場のおじさんにその旨を伝えると「間違って売っちゃうといけないから、こっちに入れておくよ」と言って、隣の水槽にカメを移した。その水槽には「ロシアリクガメ」という種類のカメが10匹以上入っていた。
先ほど選んだギリシャリクガメよりもひと回り大きく、甲羅の色も黒っぽいので、なるほど、この中にいれば他のカメと間違えることはないだろう。
「だいたい何時頃取りに来る?」とおじさんに聞かれたので、奥ちゃまと目を合わせてから「1時間後に」と答えた。

そして再び買い物へと戻ったのだが、ついに念願のギリシャリクガメを手に入れた僕は、興奮状態で何を見ても上の空。
そんな僕を見兼ねて、奥ちゃまは「別に買うものがあるわけじゃないから、このまま帰ってもいいよ。落ち着かないんでしょ」そう言ってくれた。
まるで、おあずけ状態から「よし!」と言われた犬のように、僕は目を輝かせて頷いた。

ついさっき「一時間後」と言ったのに、5分後にはペット売り場に戻って来た。
僕は少しバツ悪そうに照れながら、おじさんに「やっぱり今連れて帰ります」と言って、一緒に先ほどの水槽のところへ行った。
しかし次の瞬間、僕は青ざめた。「・・・いない!?」
さっき確かに入れたはずの水槽にお目当てのカメの姿が無い。中にいるのは、たくさんのロシアリクガメだけ。
まさか間違って売られてしまったのでは…
売り場のおじさんは、「そんなはず無いなぁ…」と言って水槽の中を探り始めた。
水槽の中では、手前側の角にロシアリクガメが折り重なるように集まり、山のようになっていた。
おじさんが、そこから一匹ずつ、カメをどかしていくと、山の一番下に僕が買ったギリシャリクガメがいた。
自分よりもひと回り大きなカメが何匹も覆い被さっていたのだ、身動きもとれず窮屈で、怖かったのだろう、最初は笑顔に見えたその顔は、泣きべそ顏になっていた。その表情がさらに愛おしく感じた。

帰りの車の中、紙製の箱に入れられたカメを助手席の奥ちゃまが持っていた。
不安を感じているのか、カメはガサガサと箱の中で動き回っていた。
「大丈夫だよ」奥ちゃまは、膝の上の箱に向かって優しく声をかけた。
そしてハンドルを握る僕に聞いた。
「名前はこの前言ってたのでいいんでしょ?」
「うん」僕は頷いた。
「ピエールくん、君は”ピエール”って言うんだよ」奥ちゃまは箱の中に向かってそう言った。
我が家に着くと、まず温浴をさせて、庭のプランターで育てていたチンゲン菜を与えた。
おなかが空いていたのか、凄い勢いで1枚食べた。
両手で葉をしっかり押さえて食べる仕草に、僕も、奥ちゃまも頬が緩んだ。
用意しておいた水槽に入れてあげると、満腹になったのか、角っこでスヤスヤと眠った。
幸せそうな寝顔は、それから毎日僕らを癒してくれた。

2003年8月24日。僕らが掛け替えの無い存在に出会った日。
僕らはこの日をピエールの誕生日にすることにした。


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