≪手を動かさねばっ!≫

日常で手を使うことや思ったこと。染織やお菓子作りがメインでしたが、病を得て休んでいます。最近は音楽ネタが多し。

桒形亜樹子チェンバロリサイタルに行った。

2024-06-18 17:14:35 | 音楽

今年も松本市音楽文化ホールでの桒形亜樹子氏のチェンバロリサイタルに行った。
わたしはこれが3回目になる。

今年のテーマは「バッハの家族愛」~愛妻アンナ・マグダレーナと天才長男フリーデマンの音楽帳を紐解く~ だ。
プログラムを開くと、バッハの家族愛~「え、これもあれもバッハでなかったの?」とあるけれど。

アンナ・マグダレーナはJ.S.バッハの後妻だ。16歳年上の4人の子連れと結婚かあ。
『アンナ・マグダレーナ・バッハのクラヴィーア小曲集』をピアノで練習した人は多いと思う。曲集はやらなくても、ト長調のメヌエットを弾いたことのある人は多いんじゃんいかな。
この音楽帳は大バッハがソプラノ歌手の妻に贈ったといわれているが、大バッハ自身の曲だけでなく前妻との息子のカール・フィリップ・エマヌエルの小品やクープランやペツォールトのクラヴサン曲が無記名で載っている。
有名なト長調のメヌエットが実は大バッハ作ではなくてペツォールト作だった、というのは最近はだいぶん有名になったね。
まあそこら辺が、「え、これもあれもバッハでなかったの?」というわけですね。


今回のリサイタルも 前々回 同様、2台のチェンバロが舞台にある。
左の焦げ茶色のがホール所有のファン・エメリック製作 フレミッシュ様式2段鍵盤チェンバロで、右が島口孝仁2000年製作の Paskal Joseph Taskin 1769 モデルだ。
島口チェンバロなのは前々回と同じだが、今回は2段鍵盤なのが違うな。
最初の2曲だけホールのチェンバロを弾いて、残りは島口チェンバロを弾いたのも前々回同様だな。ホールのチェンバロより島口チェンバロの方がキラキラした音がするんだよ。
ホールのチェンバロはヒストリカルを完全に踏襲したとはいえず、半分モダンなんだそうだ。
古楽が世に知られ 演奏する人が増え 新たに楽器が作られる過程で、ヒストリカルのレプリカが作られるまえにモダンな楽器が作られたのだが、その名残りが1984年製にあるんだな。



後半は『ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集』からだ。
ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハは前妻との間に出来た長男で天才だそうだ。この音楽帳は演奏の練習のためというよりフリーデマンの作曲のためのものだそうだ。音楽がバッハ家の家業で、演奏だけでなく作曲も親が子どもに仕込むんだな。
ちなみに前述のカール・フィリップ・エマヌエルは次男。
『アンナ・マグダレーナ・バッハのクラヴィーア小曲集』と違って『ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集』っていう楽譜は見たことがないなあ。(入手しました。)

大バッハではない作曲家ではシュテルツェルンの組曲を桒形氏は演奏したのだが、組曲最後のトリオは大バッハが作曲して しれっと組曲におさめて息子の音楽帳に載せてしまった。
そこらへんが「え、これもあれもバッハでなかったの?」ですね。

また、フリーデマンの音楽帳には大バッハ作曲のプレリュードとファンタジアが載っているのだが、これらはインベンションと3声のシンフォニアの初期稿なのだ。また、平均律クラヴィア曲集の初期稿も載っている。
ピアノで大バッハに取り組むなら最初にインヴェンションを勉強することが多いから、知っている人も多いだろう。もっと進めばインヴェンションやシンフォニアよりも難しい『平均律クラヴィア曲集』も勉強する人は多いと思う。フリーデマンも練習したのかなあ、と思うとなんだかほっこりします。
後に世に出したものと微妙に違う初期稿の演奏を聴くのはなかなか油断のならない体験だった。

アンコールは『アンナ・マグダレーナ・バッハのクラヴィーア小曲集』よりアリア。これは『ゴルトベルク変奏曲』のテーマのアリアとそっくりなのだが、ちょっとだけ違う。
ちょっとだけ違う大バッハの有名な曲つながりですね。


今回のコンサートのテーマはバッハだったが、ひねりがきいた内容でたいへん興味深かった。大バッハについてわたしの知らないことが知れてとてもよかった。
桒形氏の演奏は心地よかった。
残念なことに、チェンバロの音量は大ホールにはちょっと物足りないと思った。

今年も松本市音楽文化ホールのチェンバロ講座が開かれるのだが、初回優先で過去に講座を受けたことのある者の枠は2つしかなかった。幸運なことに当たりくじを引くことが出来た。やった!今年も桒形先生のレクチャーが受けられます



 
コメント (2)
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