goo blog サービス終了のお知らせ 

フォーラム’80 受講生寄稿

課外活動を中心に参加者に寄稿していただいています

北海道特別研修

2016-04-13 14:27:44 | Weblog
日 時:平成28年3月4日(金)~5日(土)
参加者:計39名(74期生:19名、75期生:20名)
引率者:吉田恵一氏(東京電力株式会社)、阿部滋朗氏(総合研究フォーラム理事・事務局長)
記載者:矢嶋宏康(リオン株式会社)

■はじめに
3月4日(金)と5日(土)の2日間にわたり、総合研究フォーラム研修生39名による北海道研修が行われました。出発3日前には数年に一度の猛吹雪に見舞われた北海道でしたが、新千歳空港到着時は天候にも恵まれ、近づく春の陽気すら感じられました(猛吹雪による事故の現場検証で高速道路の一部区間封鎖というハプニングがあり、空港から札幌市内まで予想以上に時間がかかりましたが)。また、既に終講式を終えた74期生にとっては最後の集合研修となりました。
研修内容は、①雪印メグミルク株式会社の視察 ②日本政策投資銀行北海道支店による講話 ③陸上自衛隊東千歳駐屯地(第七師団)の視察 ④航空自衛隊千歳基地の視察 となります。


■雪印メグミルク株式会社の視察
雪印メグミルク株式会社の広報担当より、札幌工場及び工場内に施設されている「雪印メグミルク 酪農と乳の歴史館」を案内してもらいました。

歴史館は、雪印メグミルクの前身である北海道製酪販売組合の創立50周年を記念し、昭和52年9月に日本で最初の乳業歴史館として設立されました。館内は、北海道の酪農と雪印メグミルクの歴史を知る多くの史料、製造工程の分かるミニチュア模型、またバターやチーズの歴代の製造機器等が展示されていました。なかでも、食中毒事件(平成12年)と牛肉偽装事件(平成14年)の新聞記事を掲載しているコーナーでは、企業の体質改善に向けた多くの取り組みが紹介されました。歴史のなかで2つの事件をしっかりと受け止め、決して風化させてはいけない、二度と同じ過ちをおかしてはならないとの並々ならぬ決意が感じられました。
続いて、札幌工場を見学しました。窓越しに見る製造室からは、雪印メグミルクの製品が徹底した品質管理・衛生管理のもとに製造されていることを学びました。また工場内には、驚くことに神社が設置されていました。これは勝源(カツゲン)神社と呼ばれ、同社が地域限定で製造販売している乳酸菌飲料「カツゲン」から縁起をかつぐために設けられたもので、受験生が参拝に訪れるなど大変に人気のある神社とのことでした。こうした点からも、地域に根差し愛されている企業であることを感じました。


■日本政策投資銀行北海道支店による講話

雪印メグミルク株式会社をあとにして次の研修会場へ向かうまでに、間違った会場に案内されるというアクシデントがあり、ようやく研修会場にたどり着きました。そして、日本政策投資銀行北海道支店次長の西山氏より「北海道経済の現状と課題について」の講話をいただきました。

北海道経済の特徴は大きく4点あり、まず①台湾からの来道者を筆頭にインバウンド需要が活況を呈していることです。平成26年度の訪日外国人来道者数は、前年度33.7%増の154万1,300人となり過去最高を更新しました。一方で、②ホテル業やサービス業を中心に広がる人手不足の問題、③マイナス金利などの政策誘導にも関わらず設備投資が喚起されない問題、④人口減少(2015年に550万人いる生産年齢人口が2030年予測では470万人に減少)の問題を抱えていることから、北海道経済は良くも悪くもない状況とのことでした。また、3月に開業する北海道新幹線、北海道発祥の企業紹介など多方面から見た北海道経済を、様々なエピソードと数多くの分析データと共にご説明いただきました。講話後の質疑応答も活発に行われ、西山氏からは1つ1つ丁寧なご回答を頂き、北海道の経済動向を深く学ぶことが出来ました。


■陸上自衛隊東千歳駐屯地(第七師団)の視察

 東千歳駐屯地には陸上自衛隊第七師団が駐在しています。第七師団は昭和30年に第七混成団として発足し、以降、有珠山噴火や阪神・淡路大震災などへ災害派遣、イラク復興支援群派遣やインドネシア・スマトラ島沖へ国際緊急医療・航空援助隊派遣などの国際平和協力活動など、国内外の有事に対応されています。また、陸上自衛隊唯一の機甲師団として、戦車を主体とした重戦力を保有している師団となります。

最初に史料館を案内していただき、その中で師団記念行事や戦車射撃競技会などの大迫力の映像を視聴しました。館内には、各国の戦車模型や戦車の戦場シーンを再現した大型ジオラマ、さらには旧日本軍の装備品や書物、第七師団の歴史年表など数多くの史料が展示されており、当時の出来事や時代背景を多いに学ぶことができました。特に、戦時中の旧日本軍人直筆の遺書からは、その1文字1文字から強いメッセージが感じられ大変に印象深く心に残るものでした。
その後、駐屯地内をバスで移動し戦車の体験搭乗場所へ向かいました。一面の雪景色に数台の戦車が配備されている光景に圧倒されるなか、防寒服に身を包み、ヘルメットとヘッドホンを装着し、いよいよ戦車に乗車しました。けたたましいエンジン音、傾斜の大きい雪道を突き進むパワー、そこから伝わる振動にスピード感、そのどれもが大迫力で貴重な体験をさせていただきました。
再びバスで移動した後は、フォーラム第29期生でもある第七師団長の田浦正人氏より東日本大震災の災害派遣について講話をいただきました。第七師団を率いる田浦氏のお言葉は重みがあり、当時の緊迫した状況や自衛隊員の活動内容等を説明いただきました。さらに講話を通じて、危機管理、リーダーシップ、組織運営等の企業人としても重要な考え方を、高いレベルで学ぶことが出来ました。講話後、駐屯地内の食堂で自衛隊員と会話を交えながら一緒に昼食をとり、ここでも陸上自衛隊についての知見を深めることが出来ました。


■航空自衛隊千歳基地の視察

東千歳駐屯地を後にし、新千歳空港に隣接する航空自衛隊千歳基地に向かいました。最初に基地司令の安藤忠司氏より、航空自衛隊の歴史・役割、千歳基地の紹介等をはじめとする航空自衛隊に関するお話をいただきました。日本の周辺国の動きが活発化し安全保障環境が厳しさを増すなか、今回の講話をいただいたことは大変に有意義なものでした。
続いて、第2航空団に配備されている航空自衛隊の主力戦闘機であるF-15戦闘機の格納庫に場所を移し、パイロット3名からF-15戦闘機の説明を受けました。F-15戦闘機は昭和47年に初飛行し、以来長年にわたり基本設計の優秀さと電子機器・操作設備の近代化が進められ、現在でも世界有数の戦闘能力を持つ名戦闘機となります。目前にみる全長19メートルものF-15戦闘機は圧倒的な存在感を放っていました。また、最大9Gの重力がかかるなか何時間も飛行訓練するなどのパイロットの体験談も紹介いただきました。
最後は、政府専用機の格納庫に移動しました。政府専用機は、平成4年に主として皇族、内閣総理大臣等の外遊に使用されることを目的として2機導入されました。この政府専用機は航空自衛隊の特別航空輸送隊に属しており、ここ千歳基地で整備、訓練が行われています。フォーラム研修生は4グループに分かれて機内に乗り込み、コックピット・秘書官室・会議室・事務室・随行員室・記者会見室を案内して頂き、その場で多くの質疑応答も行われました。


■所感
この北海道特別研修では4つの研修テーマ、さらにその中に幾つもの視察と講話が含まれており、大変に濃密で有意義な2日間の研修でした。
初日は、酪農と言う北海道ならではの文化と共に歩んできた雪印メグミルク株式会社と、日本政策投資銀行による北海道経済の講話が研修でした。北海道と言えば、常に観光客で賑わう新千歳空港、3月開業の北海道新幹線、2026年冬季オリンピックの招致など、とかく明るい話題の多い地域とのイメージを持っていました。しかしながら、それは外から見たイメージであって、実際には全国有数の人口減少や札幌の一極集中化など様々な課題を抱え、またその課題解決に向けた行政や企業の取り組みを学び、内から見た北海道も知ることが出来て大変に勉強となりました。
2日目は、陸上自衛隊と航空自衛隊の視察でした。田浦氏と安藤氏それぞれの講話でのお言葉には、哲学の要素も多分に含まれており高い人間力と、「わが国の平和と国民の生活を守る」という強い責任感を感じざるを得ませんでした。この責任感のもと、どのような戦略を立てるか、戦略実行のためにどのような指示を出すか、有事に備えて何をどのように準備するか等を国家レベルで思考する凄みに感嘆しきりでした。自衛隊という民間企業とは違う特殊な組織を、見て聞いて話をして体感できたことは、フォーラム研修ならではの学びとして大変に心に残るものとなりました。
最後になりますが、業務多忙のなか貴重な機会を作っていただいた、雪印メグミルク株式会社様、日本政策投資銀行の西山様、陸上自衛隊第七師団の皆さま、航空自衛隊千歳基地の皆さま、また本研修に同行いただいた東京電力株式会社の吉田様、そして本研修をまとめていただいた阿部事務局長に心より厚く御礼申し上げます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする