フォーラム’80 受講生寄稿

課外活動を中心に参加者に寄稿していただいています

リオン株式会社見学会

2013-07-10 15:25:50 | Weblog


日時:2013年6月17日 13時15分から17時
68期生:7名、69期:15名、70期生:19名
同行者:阿部滋朗事務局長
記録:有限責任あずさ監査法人 丸田健太郎(69期生)


2013年6月17日の午後に、リオン株式会社及び同社の大株主であり、同社の設立から携わっている財団法人小林理学研究所を訪問しました。当日は阿部滋朗事務局長に同行いただき、68期生:7名、69期:15名、70期生:19名の総勢41名でお邪魔させていただきました

<はじめに>
リオン株式会社は、財団法人小林理学研究所を母体として1944年に設立された由緒ある企業です。場所は国分寺の駅から5分の小高い丘の上にあり、閑静な住宅地に囲まれた中で一際その存在が目立っています。本社は19,127㎡と広大で、隣接する財団法人小林理学研究所と共に森に囲まれた素晴らしい環境です。

リオン株式会社は、日本の補聴器マーケットにおいて20%超のシェアを有するトップブランド「リオネット」を展開しており、音響及び耳の構造に関する高い技術を武器に、ドイツなど外資系の競合企業との厳しい競争環境の中、高いパフォーマンスを発揮されています。また、補聴器のみならず、その技術を活用した地震計を含む環境関連計測機器や医療用機器をも幅広く展開しています。

<会社紹介及び音響の座学>
まず、我々は会議室で、リオン株式会社の会社及び製品案内のDVDを拝見させていただき、基礎的な知識を得た後で、音響の座学ということで、音の特性や仕組みを教えていただきました。その中では、音が「波長」であることと、その波の大小(周波数)で、超音波、高周波、低周波、超低周波というように音が分類されることを理解しました。中でも、一定以上の超音波や超低周波は人間の耳で認識できず、実験では16kHzの音について、一部の参加者は認識できたものの、他の参加者は音が認識できないという実態を体験しました。

<音響設備見学>
座学の後は、3つの班に分かれて実際に音響設備を見学させていただきました。我々の班には、リオン株式会社の山崎さん(68期生)が同行いただき、丁寧なご説明をしていただきました。最初に訪れたのはグラスウールで囲われた無響室でした。この部屋に入ると不思議と音が反射せず、拍手をしても音が響きません。その意味で違和感がありました。その部屋では、補聴器の指向性の測定(音が入ってくる方向の聞こえやすさ)を行っており、特定の方向からの音を聞きやすくする補聴器の技術を体感しました。また、こちらでは、補聴器で使用しているマイクロホン材料である振動膜を顕微鏡で見ることができました。補聴器に搭載されているマイクロホンなので大きさが小さく、原理は、エレクトレットマイクロホンで振動膜と電気を貯めた電極で構成されていることを理解しました。

次に、財団法人小林理学研究所の音響科学博物館を見学しました。ここでは、昔の楽器や音響の歴史に関する展示を拝見しました。中でも、蓄音機から流れる優雅な音が、最近のデジタルな音響と対照的で非常に印象的でした。

続いて、ある部屋に案内されましたが、この部屋では何も音がしないのに、窓ガラスがガタガタ震えていました。これは、人間の耳に聞こえない低周波音によるものでした。ここでは、さらに人間の耳に聞こえる低周波音が非常に不快な音を出すことを、身をもって体験することが出来ました。この低周波音は、実験室から数十メートル離れた場所にあるポータブル(といってもちょっとした物置くらいの大きさで運搬可能な)装置から発せられていました。この装置は、道路の騒音等、実際に低周波の音による影響をシュミレーションするために用いられるようで、この装置を一般に貸し出しているようです。

次に、建築資材の防音効果等を測定するための建築音響試験室を見学しました。ここは、天井が高い大きな部屋の中にコンクリートの打ちっぱなしのコンテナのようなものが複数配置されており、このコンテナの上に建築資材等を設置し、そこにボールなどを落として、音をどの程度吸収するかを測定する試験室でした。さらに、同じ建物の中にある残響室を訪れました。こちらは無響室とは逆に、音の反射を高めた部屋で、不整5角形、7面体をしています。この部屋に入ると、音が響いて、自分で話した声が何重にも反射して聞こえます。残響室は、音を吸収する素材がどの程度音を吸収するのかを測定する実験に利用されているようです。いずれの設備も、財団法人小林理学研究所が主に建築資材メーカー等に試験室を利用してもらい、利用料収入を得て運営しているとのことでした。

いずれも、音の特性を異なる方向から分析するための興味深い実験設備を拝見し、音の研究の深さを垣間見る事が出来ました。

<音響製品及び医療機器製品実演紹介>
音響設備見学の後、会議室に戻り、リオン株式会社の各種の製品を紹介していただきました。まずは主力のリオネット補聴器をご紹介いただき、良く見かける耳かけタイプから、最新の小型で耳にフィットするオーダーメイドの耳穴型までご説明いただきました。さらに、音波関連技術を応用して、健康診断で利用する聴力検査機器から、音響や振動の計測器や微粒子の計測器に至るまでの幅広い製品が開発・販売されている点を教えていただきました。これらの中で、騒音・振動測定の技術を利用して、自動車のエンジン部品等の複雑な形式の構造物の容積や体積を一瞬で測定する最先端の計測機器のデモも行われました。

その後、耳に関する講義ということで、耳の構造や機能に関する興味深い講義を受ける事が出来ました。耳の中にある骨が人体で最も小さな骨であるといった話や、耳の構造からなぜ中耳炎や難聴になるのかといった話まで、耳と聴覚に係る非常に興味深い話をお伺いすることが出来ました。また、耳の構造の講義の後に、リオネットオーダーメイド補聴器の製造プロセスの中で、耳の中の型を取るプロセスについて、模擬実験が行われました。講義録の作成を担当している関係で、手を挙げてこの模擬実験の被験者として参加させていただきました。人生の中で、耳の中の型を取るという経験は今まで当然なく、不安でしたが、歯科医で歯の型を取るのと同じように、緑の液体を耳に入れて、固まったところで抜いて型を取っていただきました。耳に緑の液体が入る際に、鼓膜にまで達する型を取るとのお話しで緊張しましたが、結果は非常にスムーズかつ苦痛や違和感なしに耳型を取っていただき、これであればお年寄りの方も安心して補聴器を製作できると感じました。また、最近はCAD技術の発達で、耳の型から低コストでオーダーメイドの補聴器がいとも簡単に製作されているようです。

<写真①耳型取り:70期の白石さんと共に耳型を取ってもらっている写真です>

<写真②耳型:記念に頂戴しました私の耳の型です。なお、白いガーゼの個所が耳の奥です。本来はもう少し奥まで取れるようでした>


模擬実験の後、質疑応答時間と、展示品の
見学が行われました。質疑応答では、お年寄りの方の約15%が何らかの形で難聴の症状があるにもかかわらず、①高重度難聴者の方しか補助金や保険が下りないため(ヨーロッパでは全ての難聴者に補助金支給される)、②慣習として補聴器をつけることに対して、特に日本では格好が悪い等の抵抗感がある といった理由で、症状がある方の内20%しか補聴器をつけていないとのお話しがありました。一方でヨーロッパでは普及率が40%ということですので、今後日本に迫り来る超高齢化社会を見据えると、まだまだ補聴器業界は成長の余地が十分あるという点を実感することが出来ました。



最後になりますが、本見学会では、普段非常に身近に接していながらも日常あまり深く考えたことのなかった耳や音に関連する奥深い世界を経験させていただきました。貴重な時間を割いて案内をしてくださったリオン株式会社及び財団法人小林理学研究所の皆様、リオン株式会社の68期の山崎さん、69期の和泉さん、70期の加藤さん、並びに阿部事務局長に心から御礼申し上げます。


コメント
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