野の花 庭の花

野の花や山の花は心を慰めてくれます。庭園に咲き誇る花は心をはなやかにしてくれます。

昔から垣根に好まれたクコ

2019年10月21日 07時50分11秒 | 

クコの花は目立たないので、つい見過ごしてしまうが、可憐な紫の花が咲くと、赤いクコの実が実る。どこにでも生える元気な木で、果実は薬にも食用になる優れものだ。クコ酒もおいしいし、精力減退に効くという。昔から親しまれてきた植物だけに、俳句でも好まれた季題だ。江戸時代にはクコの垣根を作る人が多かったらしく、蕪村も「枸杞垣の似たるに迷ふ都人 蕪村」と歌っている。「枸杞摘まなこの楽章の終りなば 岡崎光魚」も面白い。枸杞という字がきれいなのも、俳句で好まれた一因か。

(2019-10 東京都 調布野草園) 

 

クコ(枸杞)
落葉低木
北海道-沖縄の日当たりのよい原野、海岸、川辺の土手、林縁、道ばたなどに多い。高さ1-2mになる。枝は稜があり、葉腋や枝先には刺がある。葉は互生。短枝の先に束生状につくことが多い。葉身は長さ2-4cmの楕円形-披針形。先端は鈍く、基部は葉柄に流れる。ふちは全縁。両面とも無毛。短枝の葉腋に淡紫色の花が1-3個つく。花冠は長さ約1cmの漏斗状で、上部は5裂する。萼は鐘形で、上部はふつう5裂する。果実は液果。長さ約1cmの楕円形。晩夏から初冬にかけて赤く熟す。直径2-3mmの扁平な種子が10-20個入っている。花期は7-11月。(樹に咲く花)
学名は、Lycium chinense
ナス科クコ属

 

枸杞

ひたすらに枸杞の芽を摘み去に支度 中里其昔
君が家束ねし枸杞のほぐれたき春辺 梅林句屑 喜谷六花
垣の枸杞を分けて鶏舎見たりけり 長谷川かな女 雨 月
垣根より溢るる枸杞を摘みにけり 斉木 うた子
堰とめて筏ひたせり枸杞の雨 原石鼎
奥砥部の古窯の跡に枸杞芽吹く 池内けい吾
宿かれば月に枸杞つむあるじかな 芳 之
帰り来て昼には早し枸杞を摘む 松藤夏山 夏山句集
枸杞さげて帰船を呼ぶや菩薩祭 松瀬青々
枸杞にかも雨降る瞼覚めざるは 千代田葛彦 旅人木
枸杞に尿る犬に口笛樹の間より 河野静雲 閻魔
枸杞の芽に沖の帆よりの風まとも 田中英子
枸杞の芽のうす紫の籬かな 安藤 雅子
枸杞の芽の傷みて黒し春の霜 高橋春灯
枸杞の芽の水にちかきは夥し 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
枸杞の芽やけふ薄着せし妻の胸 細川加賀
枸杞の芽や旧街道の機の音 火村卓造
枸杞の芽や星原に水夫降り立ちぬ 水野真由美
枸杞の芽や童駈け来る磯の糶 羽田岳水
枸杞の芽を摘む恋や村の教師過ぐ 河東碧梧桐
枸杞の谷に蛙叩いて居る子かな 長谷川かな女 雨 月
枸杞を摘む人来て堰のかがやける 宮下翠舟
枸杞垣の似たるに迷ふ都人 蕪村
枸杞垣やいつち芽ぐみし夕あがり 木歩句集 富田木歩
枸杞摘まなこの楽章の終りなば 岡崎光魚
枸杞摘むや雲噴きあがる海の方 本宮銑太郎
枸杞青む日に日に利根のみなとかな 加藤楸邨
枸杞飯か垣に女の歌もなく 尾崎紅葉
枸杞飯やわれに養生訓はなく 山口青邨
枸杞飯や山より風の荒びきし 岸田稚魚
湯治人枸杞摘みに出る小春かな 乙字俳句集 大須賀乙字
無常にゆく道は枸杞の復興期にだけ明ける 加藤郁乎
風色や枸杞垣煽つ宵涼し 富田木歩



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