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Decrementum Pleurogrammus azonus?(Feb 21, 2015)

2015-02-21 21:50:59 | 時事ネタ(国内)
何か知らんが、ホッケという魚の漁獲量が減ってるらしい。
・定番のホッケ、いつの間にか高級魚 乱獲で水揚げ激減(2015年2月18日 asahi.com)

この手の話は時々耳にすることがあるとはいえ・・・。
とりあえず、2015年2月18日分 asahi.com『定番のホッケ~』から前半部分を(略)

---- 以下引用 ----
大衆魚ホッケの値上がりが止まらない。
主漁場である北海道沖での若い魚の取りすぎや海水温の変化で水揚げが激減した上、輸入物も漁獲規制で流通量が減ったことが背景にある。
安さと食べ応えが人気だった「居酒屋の定番メニュー」は、どうなるのか。

「のどぐろ開き 1900円」「きんき開き 1900円」「極上縞(しま)ほっけ 1500円」

東京・築地近くの干物居酒屋「越後屋八十吉(やそきち)」のお品書き。
ホッケが店で3番目に高価な魚だ。
店長の春田 憲司さん(30)は「大衆魚だったホッケも今では高級魚」と話す。

店では、輸入物のシマホッケと、国産のほぼ全てを占めるマホッケの2種類の干物を扱う。
シマホッケの仕入れ値は3年前と比べ、1・5倍。
大型が手に入らず、小ぶりのマホッケでさえ990円で、アジやサンマの590円より高い。

定食店「大戸屋」を展開する大戸屋ホールディングス(東京都)も、シマホッケの開きの単品価格を5年間で段階的に100円値上げし710円にした。

高値の原因は、マホッケの水揚げの激減にある。
水産庁によると、マホッケの漁獲量は、1998年の約24万1千トンから2013年には約5万3千トンと15年で78%減り、過去最低水準だ。
国産では干物にできる大きさのものが減り、代わりに輸入物のシマホッケが干物の主力となっている。
(以下略)
---- 引用以上 ----

普段俺は居酒屋に行かないのでホッケを頼む頼まない以前の問題なんだが・・・。
ホッケの値上がりの裏で深刻なのは、上の引用部分の最後に触れられていたホッケの大きさの変化(らしい)。
この事情について、生田 與克氏は『あんなに大きかったホッケがなぜこんなに小さくなったのか』(KADOKAWA/角川学芸出版、2015)で色々語っていた。
↓麻木 久仁子さんによる『あんなに~』の書評。
・『あんなに大きかったホッケがなぜこんなに小さくなったのか』(2015年1月24日 honz.jp)

『あんなに~』の書評では、(今更ながら)日本の水産資源管理に問題があると言及した上で、その資源管理方法を述べていた。
以下、2015年1月24日分honz.jp『あんなに~』から中盤部分を(略)
ただし、斜め文字部分は『あんなに~』の原文からの引用部分。

---- 以下引用 ----
それにしても、日本の漁業と言えばしっかりと資源管理をしているはずなのでは?と思いきや。
それがそうでもない、いやまるでなってないということに、まず驚かされる。

日本の水産資源管理の方法は、自主的管理と公的管理だ。
自主的管理とは休漁期間や体長制限、操業期間や操業区域の制限などに漁業者自らが取り組む。
しかし利害が一致する当事者の管理では限界がある。
そもそも魚はじっとしていてはくれない。
ある地域の漁業組合が資源管理を厳しくしたとしても、隣の県の漁業者が獲ってしまえばそれまで、である。
広い海を泳ぎ回る魚を相手に、地域単位、漁業組合単位での管理にはやはり限界があるだろう。

では、国が主導する公的管理はどうかといえば、これが大問題なのだという。
日本の水産資源管理の方法は「その年に漁獲してもよい総量を決める」という制度だ。
TAC制度(Total Allowable Catch)と呼ばれる。

たとえばサンマだったら、今年はこれだけ捕ってよいですよぉと発表される。
もしあなたが漁業者だったら、このときにどう考えるだろう?
少なくともオレだったら、「なるほど!TAC数量に達したら終漁になっちゃうんだな。
だったらその数量に達する前に、他船より早く、より多く捕ってやろう」って気になる。
漁業者みんながこう考えて先を競ってやたらと捕る、イコール乱獲が起きてしまう。

とにかく早い者勝ちなのだから、魚が大きかろうが小さかろうがその魚種を捕りまくらざるをえない、ということになるのだ。
だが、まだ卵を産んでいない小さい魚を獲ってしまえば、資源量に影響が出るのは明らかだ。

ある魚種の漁が解禁になると一斉にたくさんの船が全速力で出漁し、大漁旗をかかげて揚々と寄港する風景を、ニュース映像でよく目にする。
そのときに報じられるのは「○○トンの水揚げ!」という“量”である。
しかしその内実をみたときに、小さいがために商業価値の低く値段がつかない魚が多くの割合を占めているとしたら。
量が“収入”に結びつかないとしたら。それは豊漁と言えるだろうか。

網の目を大きくしたり禁漁区や禁漁期間をさだめたりといった規制が行われているとはよく聞くが、必ずしも効を奏していないようなのである。
(以下略)
---- 引用以上 ----

かつての商業捕鯨もビックリの漁獲量勝負である。
そもそも、TAC制度には大きな落とし穴があるらしいのだが・・・。

で、この後、『あんなに~』の書評では、日本以外の「漁業先進国」における資源管理に関する取組みを述べていた。
以下、2015年1月24日分honz.jp『あんなに~』からさっきの続きを(略)

---- 以下引用 ----
(中略)
ではどうすればいいのか。
じつは日本以外の「漁業先進国」がみな取り入れて成果をあげている制度があるという。
魚獲枠個別割当制度である。
あらかじめ個々の漁業者や漁船に、それぞれが捕ってよい量を割り当ててしまうのである。

解禁期間中であればいつ漁場に行ったってよいってことだ。
逆に漁獲量が保障されているのだから、相場のよいときに捕りに行きゃあよいんだ。
仲間と相談し、日をずらして漁に出かけ、水揚げを分散するもできるようになる。
これで相場は安定し、品質は保たれ、さらに価値の高い魚になる。

この方法でノルウェーやアイスランド、ニュージーランド、アメリカといった漁業国は資源量を増やすと同時に漁業生産金額も上がった。
ノルウェーの漁師の手取りは2000万円にもおよぶというのだから驚きだ。
最近スーパーで見かけるサバは軒並みノルウェー産だが、じつはノルウェーではあまりサバを食べないそうだ。
が、大きくて脂ののったサバなら日本人が高く買うというので、日本をターゲットに資源を育てている。
当の日本のサバは早獲り競争で小さくやせたものが多くなり、それらは養殖のエサなどとして途上国などへ投げ売りされているという。

日本の消費者が払ったサバの代金でノルウェーの漁師は潤い、日本の漁師が一生懸命に働いて獲ったものが安い値段でエサになるというのか。
こんなことがあってよいのだろうか。
わたしは日本の漁師が獲ったまるまるとしたサバが食べたい!

こうした日本の水産資源の現状に関する水産庁の見解は、本書に書かれているのでぜひ読んでみてほしい。
これをみなさんはどう思うだろうか。
(以下略)
---- 引用以上 ----

悲しいかな、水産庁の見解は、honz.jpにおける書評の期待を裏切るものっぺぇ。
・日本は、なぜ乱獲を放置し続けるのか?水産庁の言い分を検証(2014年3月20日 katukawa.com)

実は、水産庁は、2010年12月に『TAC制度等の検討に係る有識者懇談会』なんてのを開いていた。
その際の結論について、勝川 俊雄(Toshio KATSUKATA)准教授は以下のようにまとめていた。
以下、2014年3月20日分 katukawa.com『日本は~』からその部分を(略

---- 以下引用 ----
1. 日本と海外では漁業の事情が違う
2. 海外は漁獲能力の規制に失敗したので、公的機関による漁獲枠規制が必要になった
3. 日本の水産資源は自主管理で適切に利用されている
---- 引用以上 ----

だが、勝川准教授に言わせると、こうした水産庁の見解は、現実を無視したものだとか。
参考までに、2014年3月20日分 katukawa.com『日本は~』から「日本と海外では漁業の事情が違う」に対する勝川准教授のコメントを(略)

---- 以下引用 ----
(中略)
日本と海外は事情が違う

水産庁は「日本は状況が違う」、「日本には問題が無い」と言い張って、漁業先進国では30年前に解決積みの問題を放置したまま、今日に至っている。
日本と海外の漁業の違いは、産業構造よりも、むしろ、公的機関の姿勢の差に起因する。
問題を明らかにして、その解決に取り組んだ諸外国と、「問題は無い」と言い張って何もしていない日本の差が広がるのは当然である。


「都合が悪い事実は無いことにして、出来ていることにすればそれで良い」という態度は、漁業に限ったはなしでは無い。
今も、この国の至る所で、同じことが繰り返されている。
華々しい報道とは裏腹に、破滅的な敗戦へと突き進んだ太平洋戦争の大本営発表と同じ構図である。
この構図を打破していかない限り、閉塞状況は打ち破れないだろう。

戦わなきゃ、現実と
---- 引用以上 ----

これが本当の「いつか来た道」ってか?(不謹慎)


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