もう1つの感性の本棚

書くことを仕事にしている者として、日常をどのような感性で掬い取るか。

街の縁取り2~東京のヘリ

2006-03-28 08:06:17 | 街の縁取り
あなたは、どちらの方角を向いて生活しているだろうか。

奇をてらった言い方かも知れないが、これは感覚的事実である。
以前、東北の知人が言っていた。
「日本は南にずっと下りて行くと、九州まで行ける気がする」
そう、東北で生まれ育った人は、日本列島は南北に延びている感覚の中で暮らしている。
一方、西日本で生まれ育った人は、日本列島は東西に延びているという感覚でいる。

今、東京23区の北に位置する街に住んでいる。
一番見晴らしがいい窓は、北東の方角を向いている。自分は西日本の出身だから、この方角への視線は、異国を覗く感じなのだ。

地方出身者が東京で暮らす時、東北の人は東京の北あるいは北東あたり、西日本の人は出来るだけ西の方を志向する傾向があるようだ。身近でよく耳にする。
それが入れ替わると、何かしら落ち着かず不安な気がするようだ。

すでに東京で暮らし始めて長い年月が流れたが、自分の場合、いまだにこの「異国情緒」にとても興味がある。
蝦夷(えみし)や何とかといった類の偏見とは一切関係ない。
東京の北に視線を向けた時の広大な関東平野から北に連なっていく方向感覚の存在は、東京での生活において決して小さなものではない。
すでに東京はどっぷりとした生活空間であるが、「異郷人」としての感覚は失われていない。

ぼんやりと窓から北を眺めながら、この感覚についてとりとめなく思い巡らす。
言葉はこの感覚を捉え切れない。

だからと言っていいのか、だけどと言っていいのか、近日中にまずは関東平野(北関東)を舞台にした風変わりな短編小説という虚構言語空間により、東京という街を、自分の感覚を縁取ってみたい。