ファミリー メンタル クリニック

児童精神医学,サッカー,時にテレビや映画、Macのネタ。
要するにひとりごと・・・

診断が子どもの自尊心を低下させては意味がないなあ・・・

2015年09月04日 | 児童精神医学
発達障害の診断治療が日々の臨床で行われる。
ADHDと診断することは、ある意味でたやすい診断行為かも知れない.
精神科医にとっては。
かつての精神分裂病を初期に、分裂病くささ を診断基準にしていた診断行為に比べると,数段。

多動性は,目立つ子は診察室の動きをみているだけで分かるし、授業中に離席があるとかで分かる。
不注意も忘れものや片付け,授業中教師の云う事を最後まで聞いていられるか、
宿題をぱっと出来るか、時間がかかるか、やり始めても途中で横道にそれないか、
女子だと空想癖みたいなことを中心に問診すると,難しい事ではない。
衝動性も,話すと止まらない黒柳徹子的な側面を聞く、診察室で机上のモノをぱっと手に取る。

迷子になり易いとか、色々聞いていけば 症状のコレクションはできあがり、診断は出来るだろう。

ところで、ちょっと立ち止まって考えてみる。

忘れ物→教師から親から怒られる.
宿題→教師から親から怒られる
離席→教師から怒られる
トラブル→教師から親から怒られる

要は,ADHDの症状を問診で聞き出すと,子どもは自分が怒られる状況を再確認するだけの辛い診察となる。
教師や親の欲望に沿って,悪い子を懲らしめるための問診になりかねない。

ADHDと診断が出来上がる前には,子どもの自尊心ガタガタ状態一丁上がり!
そんなブラックジョークにもならない事態になってしまいかねない。

問診に親も,こんな事もある、あんな事もある,とまるで悪事の数々をちくるような弾劾裁判になってしまう。

親が自分の正当性を主張するための場所に、陥ってしまいかねない。

ま、スタンダードな精神科医局で教育を受けた精神科医なら,そんなことにはならないのだろう。
統合失調症の患者さんにも問診をしながら、一方で受容しつつ,問診自体がすでに治療的な行為になるようにトレーニングされるはずだ。
(される筈だった。最低でも)

子どもの自尊心が低下しない様に、症状を説明し,自分でも違和感のある行動を意味づけしていく。
自分で困っている「症状」が改善するかも知れない。

この医者は敵じゃない.教師とは違う。
ボクのことを理解している・・・・

そんな風に受容しつつ診断していくということを、精神科医は研修医の頃からトレーニングされてきた。
発達障害の診断をめぐり、質問していくと、子どもの自尊心が低下するようなやり方を繰り返しているような「専門家」がどうもいるようだ。

これもDSM的なチェックリスト式問診ばかりで、育った研修医がいたとしたら、子どもが被害に遭わないかと、
そろそろ引退を視野に入れている俺は,本気で懸念している。


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