気ままに…

思い出のいとぐちにと

杜子春(とししゅん)

2006-02-12 | 読書




小学3年生のときに、初めて男の先生に教えていただく事になりました。その先生は大きな体でしたがとても優しい先生で、いつも約束を守ると、体操の時間が雨の時や時間の空いているときに、たくさんの本を読んで下さいました。でもとても興味がわいた所でおしまいになり、続きはまた約束を守ったら読んで下さるのです。早く続きを聞きたくて、その時が待ち遠しくてたまりませんでした。
その中に「杜子春」という題の本がありました。ところどころをおぼろげに覚えているだけで何となく気になっていましたが、最近になってその本が芥川龍之介の書いた本とわかりました。大正九年に「赤い鳥」という雑誌に発表された童話で、中国の唐時代の小説「杜子春伝」を基にして書いたものだそうです。

唐の都洛陽のの西の門の下に、ぼんやり空をあおいでいる、一人のわか者がありました。 と始まり、もと金持ちの息子で今はその日の暮らしにも困るほど哀れな身の上になってしまった「杜子春」が、仙人に出会い大金持ちにしてもらうが、すぐに財産を使い果たして、2回ほど助けてもらいます。3回目の時に、世間の人々は大金持ちになると皆優しくしてくれるけど貧乏になると相手にもしてくれないので、お金はいらないから仙人の弟子にしてくれと頼みこみます。それには凄く高い峨眉山の岩の上にじっとすわり、何が起きても口をきいてはならない、ひと言でも口をきくと仙人にはなれないと念をおされました。それで仙人になるためにあらゆる試練にたえますが、最後に母親への愛情から口をきいてしまい、仙人になることができませんでした。そしてそれからは人間として真面目に生きることにしました。 というお話です。 

芥川龍之介の本は後になって、「くもの糸」や「鼻」を自分で読みました。
たくさんの本を読んでもらったので、その頃から本が好きになったのだと思います。もう忘れてしまっていることが多いので、「火の鳥」の話も先生にお会いした時にお聞きしようと思いながら、残念な事にお亡くなりになってしまって、お聞きする事も出来なくなってしまいました。今でも先生には感謝の気持ちでいっぱいです。