エバ夫婦の山紀行ログ

道産子60代、四季を通じて主に夫婦で登った北海道の山を中心に紀行文を載せています。アウトドア大好き夫婦。

5年ぶりのリベンジ果たす・・・大麓山(1459.5m)~トウヤウスベ山(1400m)

2012年03月10日 | 山紀行 (十勝・大雪)
5年ぶりのリベンジ果たす・・・
 だい ろく さん
大麓山(1459.5m)トウヤウスベ山(1400m)

■ 山 行 日   2012年03月08日(木)~09日(金)   1泊2日
■ ル ー ト    中白鳥川林道~大麓山南西斜面~トウヤウスベ山
■ メ ン バ ー  
  夫婦登山 №6
■ 登 山 形 態    山スキー
■ 地 形 図    1/25000地形図  
           「十勝岳」「本幸」「麓郷」「シーソラプチ川上流」

■ コースタイム  登り 6時間20分  下り 2時間45分  (休憩含む)
<登り>
登山口6:00---ゲート6:10---林道分岐6:18----林道630m付近7:28---大麓山南西コル10:15
---大麓山頂上11:20
 (登り 5時間20分)
大麓山11:43---トウヤウスベ山頂上12:20  (大麓山から37分、登山口から6時間20分)

<下り>
トウヤウスベ山12:35---大麓山稜線13:17---大麓山南西コル13:45---林道出合14:40
---ゲート15:06---登山口15:20
 (下り 2時間45分)

★ 思い出・・・

 この山を語るときどうしても記して置きたい思い出があります・・・。

下の写真は、2007年2月18日に大麓山に初登頂した時のもので一緒に登った大江さん(左)と斉藤
さん(中)です。大江さんとの出会いと再会劇は、語らなくては気が済みません・・・。

当時東京から北海道に単身赴任中の二人で翌2008年には二人とも東京に戻ってしまいこの山のリベ
ンジは実現しませんでした。

二人(特に大江さん)との出会いは、更に遡った2005年9月「1839峰」登行中での出会いでした。
非常に軽装備で走るように登行を急いでいる様が印象的でこの時は軽い挨拶のみで別れました。
私たちは登頂を終えてテン場で休憩しているところへ大江さんが声を掛けて来ました。話を聞くと日帰
りで1839峰を登っていると言うのです。仲間(斉藤さん)は、途中バテて下山したらしいとの事でし
たが私たちはただただびっくりして「こんな凄い人が居るんだ」と声を失っていました。

普通ならこのやり取りで山の出会いエピソードは終了です。名前すら聞いていませんでしたし・・。

しかし、翌年5月エバが単独で北日高の縦走をするべく下山口の芽室山荘に車を止めに来て、翌日
「日勝峠」から「芽室岳」まで1泊の計画で出掛けた時の事でした。芽室山荘には先客がいるらしく
荷物だけ置いてありました。エバとサポートの妻は邪魔にならないようスペースを確保し泊まる準備を
していると先客の方が帰って来ました。挨拶を交わし、早々お近づきの一杯、二杯となって山談義で盛
り上がりました。

話をしている内に1839峰の話題になるとどうも登った日にちが一致し互いにエピソードを話すと
あの時「日帰り1839」の人だと分かりびっくりしました。偶然にしてもすごい再会劇と感激しま
した。

当然の如く尽きない話は続きましたが、エバの計画に同行したいと申し出があり単独から2人山行に
変わりました。これもまた凄い事です。

以下、大江さんとのお付き合いの始まりでした・・・。

一緒に山に登ったのは、北日高の縦走と大麓山だけでしたがメールのやり取りや一緒に酒を飲んだ事
も忘れられない楽しい思い出です。

お二人には、トウヤウスベ山までのリベンジをここで報告し、伝えたいと思いました。



2007年2月18日 吹雪でホワイトアウトの大麓山に初登頂・・・

★ リベンジ・・・

GPSトラックは 「ゆっくり歩きで低山を楽しむ」 山さんのHPからお借りしました。
黒の実線が私たちの下り予想ルートです。登りも多少異なりますが・・・



西斜面を登り始めるエバ・・・たまには被写体になります。

<3/8>   前日・・・
16:00頃、現地登山口に着き早々駐車場所を決めようと思ったが、ルートとなる中白鳥川沿いの林道
入口に「工事中」の看板と除雪された林道、工事車両と思われる通行の痕跡があったので取りあえず偵察
をしてみる事にした。「立入禁止」の看板もあったがゲートは開いたままだったので自己責任で「東京大
学北海道演習林」の中に入って見た。相当大規模な工事らしき林道の除雪はしっかりとされ、奥に重機や
関係者の車両が止まっていた。

これはダメかも・・・と思いながら深入りせずに引き返す。

泊まるにはまだ早い時間なのでいったん富良野市街に戻って「温泉」に入り再び登山口に戻って来た。

このルートで登る場合どうしても「演習林」内の通過は避けられず入林許可を得る必要がある。
「演習林山部事務所」電話0167-42-2111らしいが、急きょの計画で入林許可は取っていな
かった。

翌日は、工事関係者の邪魔にならないよう早朝の出発と決め、自己責任で入林する事にした。

駐車場所は林道出合の空き家の前に停め、一抹の不安も残して就寝する・・。


<3/9>  当日・・・
6:00出発。ゲートの網をくぐり入林。中白鳥川沿いのきれいに除雪された林道を歩く。昨夜降った
新雪が丁度良く快適な歩行となる。5年前は、除雪は無かったが前日の登行者のトレースがあり助けら
れた。

7:28 中白鳥川の渡渉点を探しながら歩いている内に川沿いの林道は終点となってしまった。
林道は左右二方向に別れ、一方は川に橋が掛かり西斜面へ、一方は東斜面に向かって延びていた。
東斜面側林道に工事関係者のスノーモービル痕が延びていた。標高は約630m付近。橋を渡って対岸
へ進み斜面への取付きを探す。


★ 読図・・・
GPSを持たないエバ夫婦にとって「読図」は欠かせない必須作業。
夫婦の腕時計の高度計とコンパス、地形図と組で読図して現在地を特定し進路を決める。
高度計はあくまでも目安・・正確ではない。(二人の高度計はいつも誤差が生じる)
仮にここが標高630mでなくとも現地ではその付近として判断する。
見通せる周囲の地形や特徴のある支流沢があれば現在地はより正確になるが、V字形の特徴の少ない
地形の中に於いては高度計が唯一の資料となり得る。

とにかくここから進路を東へ取り急登の西斜面を400m以上登らなくてはならない。
取付きから急斜面で雪質もサラサラの状態だったので林道から僅か3m登るにも苦労させられた。
しかし、登ると急斜度も軽いラッセルで順調に高度は稼げそうだった。ただ見渡す限り樹林帯の中でまっ
たく展望は無い。コンパスと高度計だけが頼りの世界へ突入する。仮に方向が1度違えば400m上の稜
線では500mの誤差があるだろう。

過去に「読図」の間違いは何度となくありその度に余計なロスタイムをして来た。
最悪迷い子となり背丈以上の笹薮を何時間も漕いだ経験もあった。しかし、逆に読図がしっかり出来て思
った通りのルートを辿って登頂した時の達成感と満足感は半端ではない。
そんなこんなが楽しくて雪山も藪山も止められないかも知れない・・・。

今回の読図は想像以上出来栄え・・と自己評価しているが・・・・。


★ 廃道化?した夏道・・・
西斜面を1000~1100mまで登り広い南尾根に出ると大麓山の登山道に出合うはずだった。高度計は
1100mを超えていて地形図と照らし合わせると尾根から少し東側に登山道が位置する。確かに東側には
それらしきラインがあるが若い白樺の木々が点在し不明瞭だった。
進路は尾根上に変更し一端は1250mピークを目指して歩き始めた。しかし、途中から天候が回復し始め
進路上に「大麓山」の全容が見えて来たので1150付近から尾根から外れ東斜面をトラバースするように
降りて地形図上の1178コルを目指した。



大麓山の南西1250mピーク付近からようやく大麓山を望めるようになった・・


大麓山の南西コル(1178m)から南西斜面に取付く・・・

★ 再訪・・・
「また来たよ・・」とつい挨拶をしたくなるほど天気が良くなっていく。
5年前はほとんどホワイトアウト状態で手探りの登行だったからこの天気は嬉しかった。

コルからスキー場のコースのように木々の無い雪面が頂上に向けて標高差で100mほど続き、その後急
斜面のモンスター群が現れて200mほど登ると頂上稜線に出る。スキーを履いたままでもジグを切りなが
ら登れる好条件は下りのスキーも楽しみな場所だった。



南西斜面の中腹から振り返り、コルと1250mピークを確認する


南西斜面。この先に名物のモンスター群が現れる・・・


北海道では珍しいモンスター群がここでは見られる・・・


色々な形のモンスターに飽きることなく登る事が出来る・・

★ 春爛漫・・・
登り 5時間20分。 「大麓山」頂上。
気が付けば・・・ではないが、結構な時間を要しての登頂だったなぁ~とついここまでを振り返る。

それにしても暖かい・・・そして無風、大展望・・・自分たちのトレースだけ山に変化をあたえてしまったが、
静かな眺望は私たち夫婦だけの貸切だった。まさに「春爛漫」の気分は良く景色を見入っていた。
いつものようにコーラで乾杯し登頂写真を撮る。

しかし、まだ登行途中・・・

リベンジの「トウヤウスベ山」をすぐ北隣に見下ろし、
チーヤンは「えっ!あれがトウヤウスベ?すぐ近くジャン・・」と素人ポイ発言が飛び出す。
確かに直線距離で約1.3キロ、中間地点1308コルまで下りとなり雪の状態から一気に滑り降りる。
登りは傾斜も緩く距離も短い。

「早く行こう!!」の号令で出発。



5年ぶりの再訪。チーヤンは初登頂そして快晴・絶景です・・・。


大麓山頂上から手前トウヤウスベ山と奥左に富良野岳をはじめ十勝岳連峰を望む


大麓山頂上の可愛いエビの尻尾・・・


リベンジ開始、トウヤウスベ山へGOO!!


絶景です・・・

★ 異変・・・
快適な大麓山からトウヤウスベ山への下りをシールを付けたままでも楽しむ事が出来た。

しかし、登りに転じて歩き始めるとエバのスキーに異変が生じる。

「雪団子」だった・・。

春爛漫と喜んだのもつかの間、暖気で雪が腐れ水分の多い状態だったのだ。

シールにも水分が浸透し「雪団子」製造機に転身する。

一歩一歩雪を蹴り飛ばしながら重い歩きに耐えて何とか「トウヤウスベ山」の頂上に着く。

スキー対策は何も用意せずに来たのでワックス類は持っていなかった。取りあえずコンパスで雪団子を掻
き落としシール面を太陽に当てて乾かした。その間、互いの初登頂の祝い再びコーラで乾杯。富良野岳を
目の前に白銀の山々を楽しんだ。ここはすばらしい展望台である。視界がもっと良ければ芦別岳や夕張岳、
ニペソツ山にウぺぺサンケ山なども眺望できるようだが、今見えている景色で充分だった。



大麓山から僅か37分でしたが、暖気でシールが雪団子になって苦労しました・・・


大麓山頂上から前富良野岳(1625m)を望む・・・2002.4 登頂





★ 判断・・・
全ての目的を達しいよいよ下山となる。

エバの雪団子対策は成功で下りでは団子にならずに上手く滑る事が出来た。

大麓山の頂上稜線も最短のルートを取り、1178コルへの滑降を楽しもうと思った時再び異変が生じた。
そしてチーヤンにも同じ異変があり丁度シールは外そうと思った時でもあったので外す。

エバは思い通りのシュプールを描き南西斜面を滑降する・・・

しかし、チーヤンがスキーに雪団子を作ってしまいアウト。それでもごまかしながらコルまで降りて来た。

帰路、トレースを辿れば1250ピーク付近まで長い登り返しとなり太陽の当たる南面でまた雪団子状態が
想定できる。更に尾根からの下りも午後の西面は太陽が当たる・・・。

地形図と睨めっこして・・・コルから1250ピーク北側の斜面をトラバース気味に回り込み、徐々に下りなが
ら西面もスキーを滑らせれば登り返しは全くせずに林道に下りれる・・・と判断した。

チーヤンは途中で団子を作ってしまうもルート取りは成功で林道に出合う位置に目掛けて降りて来た。

コルからの下りはなんと55分である。

林道では工事関係者の新しいモービル痕や雪上車の痕がありほとんど登り返しが無いまま滑り下りて来
れた。工事中の関係者にも会わずにゲートを抜け、罪深き夫婦登山をゲートに向かって一礼し許しを乞うて
下山となる。

どうぞ、こうした行為は決して真似ぬようお願いして紀行を終えたい。



下山して登山口近くから振り返った風景(西側)・・・


下山して登山口近くから振り返った風景(東側)・・・



登山口に無事下山しました。右の家は5年前も「空家」でした・・・。