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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 ナショナリズム高揚の下で

2012-09-07 14:56:12 | ウエーブニュース
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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 ナショナリズム高揚の下で
   2012年9月7日(金)9時55分配信 週刊実話

 史上最多の38個のメダルを獲得したロンドン五輪で大いにナショナリズムを高揚させた日本は、今度は領土問題でナショナリズムを沸き立たせている。
 8月10日の李大統領の竹島上陸やそれに続く天皇陛下の謝罪を求める発言で、日本政府は、竹島の領有権をめぐって国際司法裁判所への提訴を表明し、日韓通貨スワップ協定の縮小方針も打ち出した。
 一方、尖閣諸島に関しても、香港を中心とする反日団体が15日に魚釣島に上陸したことを受けて、19日には戦没者の慰霊を目的に魚釣島周辺に集まった参加者のうち10人が島に上陸して日章旗をかかげるなど、日中間でも緊張感が高まっている。

 韓国や中国が、領土問題で日本への圧力を強めたのは、政治的な理由だとする説がある。あと半年で任期が切れる李明博大統領、そして今年、習近平体制へと政権交代を計る中国にとって、政権の安定を図るためには、ナショナリズムを高めることが一番手っ取り早い手段だからだ。
 おそらくその理解は正しいが、重要なことは、領土問題で高まるナショナリズムで、メリットを受ける点は、日本政府も同じということだ。
 民主党政権が政権末期を迎え、8月10日に国民の過半が適切でないと考える消費税増税法案が参議院で成立した。しかし、報道は領土問題にかかわる紛争一色になった。終盤国会も領土問題が最重要テーマになっている。

 その裏側で、消費税引き上げの前に「自ら身を削る」として公言してきた国会議員の大幅な定数削減は、どこかに吹き飛び、1票の格差是正のための5議席削減だけが議論されている。最近まで民主党がこだわってきた歳入庁の設置はうやむやになり、天下りの禁止や国家公務員人件費の2割カットは、話題にもならなくなった。
 それどころか、来年度の予算編成では大判振る舞いが復活する。政府が17日に閣議決定した来年度予算の概算要求基準には、(1)環境・エネルギー、(2)医療・健康、(3)農林漁業の3分野に重点配分する方針が盛り込まれた。具体的には、各省庁に10%程度の予算の一律カットを求めたうえで、重点3分野の予算に関しては、予算カットをした金額の2倍から4倍の経常経費の予算を要求できるというルールを盛り込んだのだ。
 こんなルールを盛り込んだら、各省庁は看板の掛け替えをやってくるに決まっている。たとえば、道路予算を要求するときには、(1)LED照明を使い、渋滞を解消して環境に優しい道路、(2)高齢者にやさしいバリアフリーの道路、(3)農林水産物の出荷を円滑化させる道路というラベルを貼れば、重点分野に変えることが簡単にできてしまうのだ。
 それだけではない。この予算の他に別枠で復興予算が加わり、さらに自民や公明が政権に戻れば、国土強靱化のための年間10兆円の公共事業が、新たに加わってくる。

 このままの状態で解散総選挙に突入すれば、自民・公明・野田民主の3党連立の安定政権ができるのがほぼ確実だ。それは、2009年の民主党政権誕生のときに国民が否定した利権と癒着と腐敗の官僚主導政治の完全復活にほかならない。
 領土問題はもちろん大切だが、国民は同時に日本の政治家と官僚をきちんと監視することを忘れてはならないのだ。

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