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僕たちがまず入ったのは、宿の二人部屋と同じぐらいの広さの部屋だった。藍色のカーペットの上には紙くずの山と、本棚らしき立派な木の棚が倒れていた。
「そういえば不思議だったんですけど、竜(ドラゴン)って山ぐらい大きいんですよね? それにしてはここ、狭すぎませんか?」
「たしかにそうですが、おそらく魔法で体のサイズを変えていたのではないかと。この世のほとんどのものは竜より小さいですから、見るにしても触るにしても、竜が体を合わせなくては何もできません」
そしておじさんは、本棚の横で手招きした。
「私たちは基本的に、床に乗っているものの上から順番に見ていきます。ということで、この本棚を起こすのを手伝ってもらえますか?」
僕は頷いて反対側に回り、けっこう重かった本棚をまっすぐに立てた。その最中、ボロボロの本が落ちていく音の間に、固い金属音を聞いた。
「ずいぶん錆びておるな。昔は本に錠をつけていたこともあるというし、それ用であろう」
音の正体は、僕の掌の半分ぐらいの長さの太い鍵だった。物珍しくてくるくる回して眺めていると、中ほどに「xha ed lein」という文字が彫られているのに気づいた。
「もしかして旧き時代の文字ってこれですか?」
「ああ、そうです、これです。さっそく見つけるなんて運がいいですね。ちなみにこの文字は読めますか?」