記念すべき100ページ目です(`・∀・´)

本文詳細↓
(白い皮手袋をはめた燕尾服の仮面の店員が一礼する)
「いらっしゃいませ。当店にご来店いただき、誠にありがとうございます。人間の男性一名様ご案内です」
(無貌の店員、濃紺地に金字で何本かの線が引かれたカードを渡す)
「本日は興が乗らないということですが、こちらとしましても入店された以上は、少なくとも一度の相席をお願いしております。
……はい、それではこちらのお席へどうぞ」
(一番奥の角の席へ案内される)
(顔の半分を銀の仮面で隠した男が座っていた)
「やあ、こんばんは。まるで星がなくなった夜のような顔をしているね、君は。
……ああ、何も言わなくてもいい。僕は魔術師だ。グラスの中の氷を数えるより簡単に、知りたいことは知ることができる。だからこそ僕は君にこう言おう。
『おめでとう。君はまたひとつ、英雄の高みへ登った』
と。
……何のことか分からないという顔だが、べつに難しいことじゃない。君は特別な人を失くしたんだろう? 敬愛する父母や師、親愛なる友、愛する女性……昔から英雄譚に死はつきものだ。死は怒りと疑いを呼び、やがて大いなる反逆の意志を招く。だから欠けてはならない重要なファクターなんだよ。彼女の死も、君の物語に必要なエピソードだった。言うなれば、様式美さ」
ふざけるな! そんなもので人が死んでたまるかっ!
あの子は物語なんかじゃない、生きていたんだ!!
なのにどうして、あんな風に消えてしまったんだ!?
「なぜ『世界』から消されたのか? それは、人だけが知ってはならない世界の名と生まれを語ろうとしたからだよ。
……うん、これ以上は止めておこう。僕も我が身が可愛いからね。代わりといってはなんだけど、ひとつ面白い賭けをしよう。
ここに、2枚のコンドルの爪がある。これを一斉に弾いて落ちて来たとき、二人ともの爪が上か下を向いていたら引き分けだ、何も起こらない。ところが、そうだな。たとえば君の爪が上を向いていて、僕の爪が下を向いていたとする。そしたら君の勝ちだ。僕に降るはずだった幸運が君へ飛んでいくだろう。逆もまたしかり、君の爪が裏返しになっていて僕の爪が天を向いていたなら、君に与えられるはずだった幸運は僕のところへ飛ばされてくる。
……さあ、用意はいいかい?」
(ピンッ)
―――――「おはようございます。どうかよい夢を」