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本はスベテをカタル

何気なく手にとった本を読んで、人生についてほんの少しだけ考えてみる。

重松清/リビング

2005-11-29 22:01:04 | 重松清

重松清/リビング (中公文庫)
おすすめ度:★★★★☆

ぼくたち夫婦は引っ越し運が悪い。今回の新居は完璧、だったはずなのに…
ディンクスの夫婦は互いにぶつかりながら、隣家とまじわりながら、
共に生きることを確かめあっていく。
四季折々に紡がれた連作短篇『となりの花園』を縦糸に、
いとおしい毎日のくらしを横糸に、カラフルに織りあげた12の物語集。

この作品は家族、夫婦をテーマにした12の物語です。
重松清の作品は、いつ読んでも考えさせられますね。

文庫の解説で吉田伸子さんは次のようなことを書いています。

子供叱るな、来た道だ
年寄りいびるな、行く道だ
重松さんの小説を読むたびに、この言葉を思い出す。
・・・
子供はかつての自分。
年寄りは、これからの自分、そんな当たり前のことが、当たり前であるからこそ、
ずしりとした手応えをもつようになった辺りから、
私にとって重松さんの作品が、とても大きな意味を持つようになったように思う。

とても納得です。

さてさて、この作品は12の物語があるんだけど、
個人的には、「一泊ふつつか」「息子白書」が良かったですね。

みなさんはどうでしょう??

重松清/日曜日の夕刊

2005-11-27 18:36:22 | 重松清

重松清/日曜日の夕刊 (新潮文庫)
おすすめ度:★★★★☆

日曜日、お父さんがいてお母さんがいて「僕」がいて、
お兄ちゃんとお姉ちゃんは恋人がいて―。
ある町の春夏秋冬、日常の些細な出来事を12の短編小説でラッピング。
忘れかけていた感情が鮮やかに蘇る。
夜空のもとで父と息子は顔を見合わせて微笑み、桜の花の下、
若い男女はそっと腕を組み…。
昨日と同じ今日なのに、何故だか少し違って見える。
そんな気になる、小さな小さなおとぎ話。

毎日、悲しい事件や考えられない事件が新聞の紙面を埋め尽くしています。
もし、日曜日の夕刊があったら、
明るくて楽しい話題だけで埋め尽くしてほしいですね。

って、そんな感じの小説です。

この「日曜日の夕刊」という作品は、
日常な些細な出来事を、やさしく包んだ12のお話しです。

いくつかのお話しを読み終えたぐらいで、
あまりにハッピーエンドのオンパレードって感じで、
「ん?、これ本当に重松清の作品なのか??」
って思ってしまいました。

まあ、重松清だから話しが重いっていうのは、変な思い込みだけどね(笑)。

個人的には、4つめの「サマーキャンプへようこそ」が良かったですね。
アウトドアには不向きで失敗ばかりの父親と、
都会育ちで、すこし冷めてる息子。
父親の惨めな姿が恥ずかしい・・・。
それでも、父親は父親で、息子は息子なんですね。
いや~、家族って素晴らしいですよ。

さて、あなたはどのお話しが気に入りましたか??

重松清/かっぽん屋

2005-11-20 23:25:04 | 重松清

重松清/かっぽん屋 (角川文庫)
おすすめ度:★★★☆☆

15歳。頭のなかにあることといったらただ一つ、かっぽん―。
憧れと妄想に身を持て余す思春期の少年たちの、ひたすらな性への関心を
ユーモラスに描いて、もどかしい青春の痛みを鮮やかに蘇らせた表題作のほか、
デビュー間もない時期に書き下ろされた奇想天外な物語など、全8編を収録。
これ1冊で作家・重松清のバラエティと軌跡が存分に味わえる著者初、
待望の文庫オリジナル短編集。巻末には貴重なロングインタビュー2本も併録。

重松清は、短編集がけっこう多く発表してるけど、
あるひとつのテーマ(家族とかイジメとか)についての作品集が多いんだけど、
この作品は、テーマもバラバラで、重松清の短編集っていうのかな。
発表時期も、一番古いのが1991年で、一番新しいのが2000年と、
バラバラなんですね。

重松清ならではの、思春期の少年のお話しもあれば、
ミステリーもあれば、ホラーもあればと
かなりバラエティーに富んでて、面白いし、新鮮ですね。

この作品集は8つのお話しがあるんだけど、
その中で、個人的に面白かったのは「失われた文字を求めて」かな。
ミステリーのようなホラーのような、
重松清っぽくないのも新鮮だったし、話しの発想とかも俺好みでした。

みなさんは、どのお話しが好きですか??

あと、巻末のロングインタビューもなかなか興味深いですよ。

重松清/ニッポンの単身赴任

2005-11-15 22:25:20 | 重松清

重松清/ニッポンの単身赴任 (講談社文庫)
おすすめ度:★★★☆☆

転勤族の息子だったシゲマツが、北海道から上海、南極まで、
単身赴任の仲間20人をルポルタージュ。
「単身赴任について考えることは、そのひとにとっての幸せのかたちを探ること」
と言う著者が、彼らを訪ね歩いた結果、見えてきた
「仕事」と「家族」と「自分」の新しい関係とは?

この作品は、実際に単身赴任している人とのインタビューを通じて作り上げた
仕事をする父親を応援するルポルタージュですね。

「家族のために単身赴任をしない」というひとがいる一方で、
「家族のために単身赴任を選んだ」というひともいる。
たいせつにしているものは同じなのに、選んだ道はあまりにも対照的なのである。
……「まえがき」より

今の時代のお父さんたちは辛い。
家では家族に煙たがれ、一家の大黒柱と呼ばれてたのはいつの時代やら。。。

でも、今も昔も変わらないことはあります。
それは、お父さんはいつでも家族のためにがんばってるってこと!!

お父さんはエライ!!
お父さんはがんばってるんだよ!!

重松清/定年ゴジラ

2005-11-10 23:17:09 | 重松清

重松清/定年ゴジラ (講談社文庫)
おすすめ度:★★★★★

開発から30年、年老いたニュータウンで迎えた定年。
途方に暮れる山崎さんに散歩仲間ができた。
「ジャージーは禁物ですぞ。腰を痛めます。腹も出ます」
先輩の町内会長、単身赴任で浦島太郎状態のノムさん。
新天地に旅立つフーさん。
自分の居場所を捜す4人組の日々の哀歓を温かく描く連作。
「帰ってきた定年ゴジラ」収録の完成版。

定年を向かえた山崎さんの日常を綴った8つのお話しです。

長年勤めた銀行を定年退職して、さあこれから第2の人生のはじまり。
でも、面白いことが何も見つからない。
山崎さんの住むニュータウンには飲み屋もパチンコ屋も映画館も何もない。
この街に引っ越してきた20数年前は、
「こういう静かなところが一番安らぐ」
「子どものためにもいい」
「人間の暮らす街ってってのはこうでなくっちゃ」
って思っていたのに、いざ定年を向かえて改めて思う。
「こんなの人間の住む街じゃないぞ」

そんな山崎さんも散歩仲間ができる。
みんなも定年を向かえたときに山崎さんと同じような思いをしたらしい。
でもいいじゃないか。
俺たちは希望を持ってこの街に引っ越してきたんだから。

この本を読み終えると、
「お父さん、長い間お疲れ様でした」って、心から思えます。
去年、俺んとこの父親も定年定職したから、
なんか人事ではないような気がしましたね。

著者の重松清さんは、この作品についてこう語っています。

・・・"父"の話しを書きたかった。お手本となったか反面教師だったかはともかく、
戦後の日本を支えてきた"父"の世代は、
「これが俺たちの考える幸せというものだ」と確かに子供たちに伝えてくれた。
僕たちは、はたして子供に伝えるべき幸せのかたちを持っているだろうか・・・。

この小説は定年を向かえた父親のお話しだけど、
そんな父親を持つ俺らの世代の人たちが読むべき小説ですね。

重松清/ビタミンF

2005-11-05 13:32:51 | 重松清

重松清/ビタミンF (新潮文庫)
おすすめ度:★★★☆☆

38歳、いつの間にか「昔」や「若い頃」といった言葉に抵抗感がなくなった。
40歳、中学一年生の息子としっくりいかない。
妻の入院中、どう過ごせばいいのやら。
36歳、「離婚してもいいけど」、妻が最近そう呟いた……。
一時の輝きを失い、人生の“中途半端”な時期に差し掛かった人たちに
贈るエール。「また、がんばってみるか」、
心の内で、こっそり呟きたくなる短編七編。

青春も終わり、何かやり直すには遅く、諦めるには早い30代後半の人生。
ふっと「このままでいいのか?」と思ってしまう中途半端な年齢。

この小説はそんな男性の7つのお話しで、直木賞を受賞した作品です。

だんだん子供の考えていることがわからなくなってきた。
そして、子供だけじゃなくって妻の考えていることも・・・。
仕事を終えて家に着いたとき、家の電気が消えていることに
寂しさを覚える反面、少しほっとしてしまう。
自分の居場所はほんとうにここでいいのか?と自分に問いかける。

俺はまだそんな年齢ではないから、
ほんとうのところはわからないけど、でも何か心に響くものはありましたね。

俺もそんな年齢になって、同じように
「このままでいいのか?」って悩むようなときがもしあったら、
もう一度、この本を読んでみようかなって思います。

「大丈夫だよ」って勇気を貰える気がします。

重松清/半パン・デイズ

2005-11-01 22:06:43 | 重松清

重松清/半パン・デイズ (講談社文庫)
おすすめ度:★★★★☆

東京から、父のふるさと、瀬戸内の小さな町に引越してきたヒロシ。
アポロと万博に沸く時代、ヒロシは少しずつ成長していく。
慣れない方言、小学校のヤな奴、気になる女の子、
たいせつな人との別れ、そして世の中…。
「青春」の扉を開ける前の「みどりの日々」をいきいきと描く、
ぼくたちみんなの自叙伝。

東京から瀬戸内の小さな町に引っ越したヒロシの
小学生の入学から卒業までのほのぼのとした9つのお話しです。

子供はのん気で良いなぁ~って思っているのは大人だけなんだね。
子供は子供なりにいろんなことを考えてて、悩んでて、
大人が思っている以上に子供は大人で、
子供が子供だと思っているのは大人だけなんだね。

文庫の解説で「岸和田少年愚連隊」の著者・中場利一がこんなことを言ってます。

「ヒロシはまだ子供だ」
そんなことを考えているのはいつの時代も親だけだ。
子供をなめてはいけない。あいつらすべてわかっている。
自分がカワイイことも、ウソが大人にバレていることも、みんなわかっている。
わかっていて、わかっていないフリをする名人である。

うん、きっとそうなんだろうな。
俺もそうだったんだと思う。みんなそうだったんだと思う。

とても懐かしい気分にさせてくれる小説です!!

重松清/四十回のまばたき

2005-10-27 22:02:30 | 重松清

重松清/四十回のまばたき (幻冬舎文庫)
おすすめ度:★★★☆☆

結婚七年目の売れない翻訳家圭司は、事故で妻を亡くし、
寒くなると「冬眠」する奇病を持つ義妹耀子と冬を越すことになる。
多数の男と関係してきた彼女は妊娠していて、圭司を父親に指名する。
妻の不貞も知り彼は混乱するが粗野なアメリカ人作家と出会い、
その乱暴だが温かい言動に解き放たれてゆく。
欠落感を抱えて生きる全ての人へ贈る感動長編。

重松清といえば、「家族」「青春」をテーマにした作品が多くて、
読んでる最中も、読み終わったあとも、
家族とは?青春とは?を常に問いかけてくるかんじなんだけど、
そういう意味では、この作品は少し異色ですね。

テーマはやはり「家族」なんだけど、
読んでいても、家族とは?って、あんまり問いかけてはこないんです。
ちょっと変な言い方だけど、小説っていうかんじです。

話しも面白いし、テンポも良いし、
飽きることなく最後まで読めて、ラストも申し分ないんだけど、
なぜか、ちょっと物足りなさを感じてしまいました。

重松清の作品はちょっとテーマが重いから、
読むには、それなりの心構えが必要なんだよなぁ~
っていう姿勢で読み始めたから、そんな感じを受けたんだろうね。

まあ、なんだかんだ言っても、話しの内容は面白いです。
なので、重松清の作品だからって気負いしないで読むことをオススメします。

重松清/疾走

2005-10-25 23:53:09 | 重松清

重松清/疾走 (角川文庫)
おすすめ度:★★☆☆☆

<疾走(上)>
広大な干拓地と水平線が広がる町に暮す中学生のシュウジは、
寡黙な父と気弱な母、地元有数の進学校に通う兄の四人家族だった。
教会に顔を出しながら陸上に励むシュウジ。
が、町に一大リゾートの開発計画が持ち上がり、
優秀だったはずの兄が犯したある犯罪をきっかけに、
シュウジ一家はたちまち苦難の道へと追い込まれる…。

<疾走(下)>
"誰か一緒に生きてください―。犯罪者の弟してクラスで孤立を深め、
やがて一家離散の憂き目に遭ったシュウジは、故郷を出て、
ひとり東京へ向かうことを決意。
途中に立ち寄った大阪で地獄のような時を過ごす。
孤独、祈り、暴力、セックス、聖書、殺人―。人とつながりたい…。
ただそれだけを胸に煉獄の道のりを懸命に走りつづけた少年の軌跡。

なかなか読み応えのある小説です。

重松清といえば「少年」「青春」「家族」などの作品が多くて、
テーマは重いんだけど、読み終わったあとは、
「いい小説だったぁ~」って、シミジミとかみ締めるような内容なんだけど、
この作品はまるで別物ってかんじですね。

あまりにも救いが無さ過ぎて、読んでてちょっと辛いです。
俺にはあまり好きになれない内容でした。
でも、その分、余計に考えさせられる内容だったのは確かです。
そういう意味では、結果的に「読んでよかった」ってことになるんだけど・・・
やっぱり、もう少し救いがほしかったです。

この作品は、中谷美紀、豊川悦司出演で映画化されます。
どんな作品になるのかちょっと楽しみではありますね。
あまり好きな内容じゃないって言っておきながら、見てみたいなって思うのは、
やっぱり俺は重松清の作品が好きなんだってことなんだろうね。

重松清/ビフォア・ラン

2005-10-24 22:50:53 | 重松清

重松清/ビフォア・ラン (幻冬舎文庫)
おすすめ度:★★★☆☆

授業で知った「トラウマ」という言葉に心を奪われ、
「今の自分に足りないものはこれだ」と思い込んだ平凡な高校生・優は、
「トラウマづくり」のために、まだ死んでもいない同級生の墓をつくった。
ある日、その同級生まゆみは彼の前に現れ、
あらぬ記憶を口走ったばかりか恋人宣言してしまう―。
「かっこ悪い青春」を描ききった筆者のデビュー長編小説。

ぼくたちの高校には、奇妙な伝統がある。
自殺者の出た学生の卒業式には、必ず雪が降る。
でも、平凡過ぎる僕らの学年の卒業式では雪が降ることはないだろう。

何もない平凡な彼らは、「トラウマ」という言葉に惹かれ、
精神病で退学した、まだ死んでもいない女の子・まゆみの墓をつくる。
「俺たちは自殺したまゆみを助けてあげられなかった。
まゆみを殺したのは俺たちのようなものだ」
それが彼らの「自殺した女の子を助けられなかった」というウソのトラウマ・・・。

ある日、まるで別人のように明るくなったまゆみが彼らの前に現れる。
そして、学校を辞める前は、主人公・優の恋人だったと宣言する。
まゆみは、彼らと同じように、ウソの記憶を持っていた。
でも、彼らと違うところは、まゆみはウソの記憶を本当だと思っていること・・・。
まだ病気が治っていないと知った彼らは、
まゆみへの後ろめたさもあって、ウソに付き合ってしまう。
ウソにウソを重ねれば、いつか、本当になるのだろうか?

この作品は「家族」「青春」をリアルに描き続ける重松清のデビュー作です。
デビュー作だけあって、彼の作品を何冊も読んだあとに、この作品を読むと、
多少の物足りなさを感じてしまうかのしれないね。
俺はちょっと感じてしまいました。。。
でも、重松清の原点ここにあり!!って感じです。

この作品の中で、主人公の優が自分がいかに平凡な高校生であるかを
説明してることろがあります。そこが、実に重松清って感じです。


貧乏な家に生まれたわけでもないし、子供のころに辛酸をなめたわけでもない。
出生の秘密もなければ病気で生死をさまよいもせず、両親は健在で、
秀才とは思わないが要領のよさには自信があり、
思い出したくない過去など持たず、思い描く将来の夢もなく、
コーヒーには砂糖とミルクをたっぷり入れるし、
その気になれば学食の大盛りカレーを三杯は食べることもできる。
同じ学校の気にくわない奴らには露骨にガンをとばすが、
名前さえ書ければ入学できるという噂の農業高校の連中と街ですれ違うときは
あわてて目を伏せる。白く細いエナメルベルトは学校の中でしか使わないが、
学生服の裏地には花札の猪鹿蝶が赤い糸で刺繍されている。
教師にはよく怒鳴られるが、退学を勧められたことはまだ一度もない。
新聞はテレビ欄とスポーツ欄だけを読み、
毎朝鏡の前で数分間は自分の顔を見つめ、
性欲は自分でなんとかして、エロ本の隠し場所には苦労を続ける。
万引きは嫌いだが、仲間が万引きした品を安く買うことには心は痛まない。
一人でバスに乗っているときには老人に席を譲り、
仲間と一緒のときは乗客のヒンシュクを買いつづける。
RCサクセッションと矢沢永吉と吉田拓郎が好きで、
数学が苦手で、体育が得意で、
煙草はこっそり吸い、無免許で原付バイクに乗るときは裏道を選び、
授業中には居眠りばかりするが試験の前には徹夜をする…。
つまり、自分で認めるには少し悔しいけれど、
みごとなくらい平凡な高校生というわけだ。
そういう自分をなんとなく恥かしいと思うこと。これも、平凡な高校生の特徴だ。



思わず「あるある」って、うなずいてしまいます。。。