土手猫の手

《Plala Broach からお引っ越し》

No.84「W」

2009-12-09 16:06:12 | 夢日記/感興小説(創作)
暗い暗い暗い中、かすかエンジに浮かんでる。
「見える? あそこ、ほらあそこ」
「ほんとだ見えるね、赤い舟」
「あそこにも! 見て見てむこう、向こうがわ」
「弓なりブランコ、白い舟」
白い白い白い影、ぼうっとひんやり浮かんでる。

見つけてくれて、教えてくれて。
「うれしいね」
「楽しいね」
「寒くないよ」
「あったかい」
どうして気づかなかったんだろう。
「見えているのかな」
「見えているよね」
「ずっと見てるね」
「ずっと見ていたい」
同じ宇宙(そら)見る、同じ舟。

二人乗りの僕らカシオペア。
銀河に浮かんだシーソーの舟。

銀河をわたるシーソーの舟。

2009.12.7起 12.9脱 ?(猫目寝子) 12.11加筆


No.79「やり残したものたち」

2009-08-31 20:41:30 | 夢日記/感興小説(創作)
音は。そこに介在したか、余りにも昔の事で…今となっては、もう思い出せない。

もう数十年前の事だ。私は一人列車に乗っていた。
山肌の斜面を走るレールの上で、何を思う訳でも無く最初から…私はここに居た。
何の気無しに辺りを見回してみても、私以外の者の姿は見えない。ボックス席の向かいには客は居らず、南に面した窓からは、少しばかりの後ろと前(まえ)が見て取れるだけで、この車両の外(ほか)は解らない。
見えるのは、この中と、左に見えて来る前(さき)ばかりで、代わり映えの無い景色を、いつからか、私はずっと眺めている気がした。
列車は緑の中を抜けていた。山肌と木々の間に挟まれて、いったい今は…どこだろう。いつになったら、着くのだろう。ぼんやりと、そんな事を考えていた。
そうして、どれ位そこに居たのだろう。緑の稜線が切れる時が遂に来た。
溢れん力が突如として現れた。それは永く穏やかに慣らされた目には、余りに濃密な色だった。水平線も地平線も空の境さえも、色が全てを圧倒した。

底が覗けない程の黄色、どこまでも不透明な黄色が遥か広がる。前の前まで埋め尽くす鮮やかな、黄色い水を湛えた、それは河だった。
光は黄金(こがね)だけを跳ね返し、外(そと)の景色を消し去った。どこまでも全てが黄色に覆われて。
私は窓に全てを奪われた。時間も距離も消え去った世界の中で、私は二つの目になっていた。
そうして、果てしなく続く光の中で。やがて一つの色が浮かび上がった。
染まる事の無い光、白、それは真っ白な水瓶だった。
彼方の白は、やがて水瓶には不釣り合いな大きさと、それを解らせる。
そこでは女達が洗濯をしていた。瓶の三分の一の程の身丈か。袖を、長い裾を膝の上までたくし上げ、笑い合い互いに、自らの持ち物を黄色に濯いでいた。
黄色は洗う足も着物も、濃いその中に見え隠れさせるだけで何も、白も、染め様とはしていない。
何故だろう、何もかも圧倒する程なのに。染めようとしない色。
何故だろう、何もかも圧倒する程なのに。それに染まらない色。
私は、そんな思いに捕われた。
いつしか女達は消えていた。
力は増々大きくなって、近づく私は再び二つの色に奪われて行く。
そうして、白い瓶は、既に輪郭を失って、ただの円い光の様に、河の中に浮かんで、
黄色と白の境界線だけに溶けて…
「この色、この色はっ!」
いつの間にか向かいの席にいた私は、思わず列車を止めていた。
胸が騒ぐ。手を当てる。鼓動が聞こえる。
あの色は?
あの色は、温かいのだろうか、冷たいのだろうか。
あの色は?
オレンジの鮮やかな香りが、味がするのだろうか。
それとも?
それとも?
開けた扉から斜面を見下ろして。深く息を吸い込んで。
「確かめるのよ」
列車を止めた私は、そしてその黄色い河の中へ降りて行った。
列車も線路も消えていた。
「わたしはどんなにおいだろう」

そして今、私は泳いでいる。東の空を泳いでいる。


2009.8.31 ?(猫目寝子)


No.78「大人の情景・子供の領分」

2009-08-26 07:39:31 | 夢日記/感興小説(創作)
今日(8/20)見た夢は楽しかった。

走り方がスチャラカだった。
足だけ跳ねるホップする様に、まるで子供の、って子供でも、
「おいっ可笑しな格好だぞ」と自分でも、とまどう感じで…見ていたのだけど、
大人の私は「声」を無視してそのまま、平然と交差点をスチャラカ渡ってビルの中に入って行った。
ここが自宅…なのだ?
私は。家に帰ろうとしてたのに、在り処が解らなくて戸惑っていたのに、
勢い何故か気圧されて、プラスでは無く【ー4】の方のボタンを誤って焦って、
したら真っ逆さまに、エレベーターは半端無いスピードで急降下して、
「おいおいっ尋常じゃ無いって!」なんて思っているんだけど、それも実は口だけで、
でも、そこは高々、-4。「あっ」と言う間にチンッ。
開いたそこは、いきなり直接フロアで、
輪転機が似合いそうな広い古い編集室で、昔の佇まいで、
そう地下ってのが。ちょっと好い。
だから、ほんとはここに居たかったのだけど、
同乗者と「間違えちゃいましたね」なんて感じだったから、戻らずを得なくて内心ガッカリで、
そして、仕方無い、の私は。
今度は普通に上がって行った。

そこから先は覚えていない。変な夢だった。


夢の中だと、いつも解らない。実は自宅が解らない。
とにかく『帰らなきゃいけない』で、向かってる訳だけど。
でも。ここだと思ってみても、なにか懐かしくても、微妙に…
おまけに。通り抜けるには、めちゃめちゃ狭い入り口が、天井近くに付いていたり…
あるいは。建物が異様にデカくて、よじ上るしかない高い階段だったり…
いつも。かなり厄介だけど…
けど。むしろ…

って、これって、つまり、いや、どっち?
家家、家?

帰りたくないから帰れないのか。
それとも、
帰れないから帰りたいのか。

帰らないのか、帰れないのか。
まてよ、
私って、帰りたかったっけ?

帰りたいのか、帰りたくないのか。
いや、そもそも。

なんで、
『帰らなきゃ』、なんだろう?


2009.8.26 ?(猫目寝子)


No.77「秘密」

2009-08-10 19:00:26 | 夢日記/感興小説(創作)
夢だった。
そこは家(うち)の庭の上の、パカッと空いた空間で。普通に暗い夜だった。
何故だか北を見ていたら、いきなり白い月が上がって来た。それは見る間に頭の上を通り抜け南の空へ沈んで行った。
いかにも速いヤツなので、ソイツは一晩中ぐるぐるぐるぐる目の前に現れたが。
余りの珍しさに見とれてて。私は朝が来たのも、忘れてた。

或る時は。
日も暮れたのに明るいままの空だった。そして白い円い月が居た。ソイツは夜の月だった。
昼の月、夜の月、どこが違うと言われても。明るい夜の、と言うだけだ。
コイツは朝が明けても、歩く私の上でずっと浮かんでた。
いつまでも。だからおかげで、いつから朝だったか私は気づかずじまいだ。

またしても。
それは明るい夜だった。車の時計は朝の四時、たぶん冬の暗い朝。なのに明るい空だった。
それもその筈だ、まだ朝も明けてもないのに日が出てた。
走る車に、いつまでも。ヤツは並走するもんで、おかげで、先行く自分はいつまで経っても夜だと思ってた。

いつだったか、それはまともな夜だった。まともな夜空に月が四つ集まって。そのままずっと止まってた。
多くの人が……
なので。私はそこを、後にした。

夢だった。
そこは家(うち)の庭の上の、パカッと空いた空間で。
明け方とも夕方とも見えない明るい、なのに星がはっきり解る青い青い夜だった。
高い高い空に、肉眼で解る大きい大きい星が二つ並んで動いてく。見える、見て取れる位のスピードで。
笑う太陽と、笑う月の、マーク。あの(笑)とかの仲間で括られる様な、中世のタロットカードに出て来る図案の様な、アイツらだ!
あの怪し気な顔が二つ並んで動いてく。怖い様な、可笑しい様な、あの何とも言えない<あの顔>が東の空へ進んでく。
笑ってる!笑ってる!
今度は。いかにもすぐ行ってしまいそうなヤツラだったので。

当然。私は、追いかけた。


2009.8.8起・8.10脱 ?(猫目寝子)




※下記、コメント欄より転載。

Comments: (2)

2009.8.11 21:59:01 夕螺 : 昨日も読ませていただき、今日も読ませていただきました。
「それはまともな夜だった」という言葉にぐっと来ました。夢に出る「まともな夜」は、現実の夜とは違う、でも夢の夜はまともな夜なのだ?



2009.8.12 04:10:27 猫目 : いつも有難うございます。

月が四つも有るのに、前提が「まとも」…という。
「夜の月だった」の断定と同じく、直感?で、そう捉えれられる…ならば、いい(そうなのだ)と。
四つ目の夢に限って言えば。
(何が「まとも」の定義は置いといて)
「まとも」に「(目を見張る)まともでない」ものが有っても、動かなければ慣れる・褪せる、又は当たり前(常識?既存の定説?)になる?…等々。

漠然と始めた「夢日記」ですが。
何となく自分は何を書きたいのかが(掌編も)、書き重ねる事で解って来た様な;気が;します。
(「重ねる」って程、書いてませんが;)

昨日になって(PC明けたのは23時過ぎでしたが;)Broach、調子が良くなった気がします。
そちらは、どうですか?
今の所、スムーズにアクセス出来てるので、なので安心して;
更新は、
「夜が明けてから(何時?;)」に、したいと思います。 ^^;

No.76「虹」

2009-08-02 23:55:21 | 夢日記/感興小説(創作)
霧になる手前の空気が辺りを包んでいる。
瞼に伝わるひんやりとした感触に耳をそばだてて。
足先に清流の音、高みから流れの先をゆっくりと追いかける。
やって来る露をはらんだ風が、やがて深い茂みのそれを一層濃いものへと変えて行く。
深い深い眠りから、
明けて行く空に立ったまま手を回して、私は一本の木と浮遊していた。

深く切立った渓谷に添うせせらぎの音。
岩肌から枝を伸ばす青々とした匂い。
きらきらと影を撒きながら降り注ぐ木洩れ日。
過ぎて行く景色を、
案内されるそのままに、果て無い先を私は見つめていた。
まだ見ぬもの、
いつか架かる海と空を辿って。

ひと時、木に止まり休む鳥の様に。
ひと息、風を掴んで飛ぶ鳥の様に。

手を離し、
やがて飛んで行く鳥の様に。


2009.8.2 ー飛ぶ夢2ー  ?(猫目寝子)