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『椎間板ヘルニアの4つの治療法とは!?手術は必要?』
椎間板ヘルニアの治療は、保存的療法と手術療法の2つに分かれます。治療は、症状がどの程度なのか、日常生活にどの程度の支障があるのかなどによって選択されますが、原則的には保存療法で様子をみることが優先されます。
椎間板ヘルニアは当然のことながら腫瘍とは異なりますので、見つかった段階で急いで手術しないともう症状が改善しない、ということは非常に稀です。保存療法で改善がみられない場合に、手術療法が選択されます。 ここでは椎間板ヘルニアの代表選手、腰椎椎間板ヘルニアを中心に、椎間板ヘルニアに対する保存療法3つと手術療法についてご紹介します。日本整形外科学会や日本脊椎脊髄病学会、日本脊髄外科学会の各該当ページも合わせてご参照ください。
保存的療法3つ
保存的療法とは、手術でヘルニアを摘出し根本治療を行うのではなく、症状に対する対症療法です。主に3つあります。
1.鎮痛消炎剤を始めとする内服薬
痛みに対してはNSAIDsと呼ばれる非ステロイド性抗炎症薬が広く使用されています。一般の方からはいわゆる「痛み止め」と見なされている薬剤ですが、鎮痛だけでなく「消炎」効果もあります。ですから軽症の部類であれば、結果としてこの非ステロイド性抗炎症薬と筋肉の緊張を緩める効果のある筋緊張弛緩薬とを併用することで効果を得ることができます。
有効成分量の多いNSAIDs座薬もさらに併用することで、身動きができないくらいの腰痛・下肢痛でも改善が図れる場合もあります。
NSAIDsで全く効果が得られない場合、最近ではリリカ®やトラムセット配合錠®を始めとする、新しい機序(しくみ)で疼痛のコントロールを図る薬剤を用いることで、著明に疼痛が軽減し、手術を回避できる事例も多くなってきています。これらの薬剤は従来の薬剤に比べ効果がやや強めの分、個人差はありますが眠気などをもたらす場合もあり、患者さんによって合う合わないもあるため、使用にあたっては量も含めて事前に医師と相談することが望ましいと思われます。
NSAIDsも含めたこれらの薬剤の効果により、椎間板ヘルニアによって生じた炎症が一度消退してしまえば、たとえ薬剤の使用を中止しても症状の再燃がみられなくなることが多いです。これが、椎間板ヘルニアだからといって手術が必ず必要ということにならずにまず保存療法が選択される最大の理由です。
2.神経ブロック
保存療法の一つとして、神経やその周辺に局所麻酔薬を注入し、神経の炎症をおさえて痛みをなくす神経ブロックという方法があります。
前者であれば、椎間板ヘルニアから直接圧せられている「被害者側」の神経そのものに薬液を注入するもので、神経根ブロックと呼ばれます。「被害者側」の神経が複数の可能性がある場合でも、薬液注入の際に症状の範囲の再現性が確認できることが多いです(ただしその分痛みも大きくなります)。万が一その後のブロック効果がいまひとつでも、症状の再現性さえ確認できていれば、その「被害者側」の神経を圧しているヘルニアこそを手術で取り除けばよいという確信が医師側にも持てることとなります。
後者であれば、腰椎椎間板ヘルニアの場合は、仙骨と呼ばれる骨盤尾てい骨に近い部分や腰のあたりに注射し、硬膜外腔(脊髄からその末梢の馬尾と呼ばれる部分までを覆う硬膜と、その外側を囲む脊柱管の間にある空間)へと局所麻酔薬を注入します。それぞれ、仙骨硬膜外ブロック、腰部硬膜外ブロックと呼ばれます。
これらの治療法は、先に記した1の内服薬や座薬でも痛みが抑えられないようなひどい痛みに対して行われます。
3.理学療法(牽引や温熱療法)
リハビリ室で器具を使って腰をひっぱる牽引や、腰部マッサージや温熱療法などといった物理療法や、理学療法士の指導の下で体幹強化を行う運動器リハビリテーションなどがあります。いずれも、炎症が強いようなひどく痛む時期が過ぎてからの施行が望ましいといえます。
これらも、椎間板ヘルニアにともなう腰痛やしびれなどの症状に対する保存療法の一つです。残念ながら世界的にみて確実な治療効果が得られるというエビデンスはない治療法ですが、臨床の現場では症状の改善や寛解が認められるケースも多々あります。逆にかえって悪化するケースもあり、その場合には医師と良く相談し、いたずらに漫然と行わないことも重要です。
手術療法
まずは保存療法で治療を開始しますが、数ヶ月行っても効果がない場合や下肢の力が入りにくいなどの運動麻痺が進む場合、(臀部会陰部から両下肢への違和感が先行していることが多いですが)排尿排便に関係する括約筋の機能低下が認められる場合(膀胱直腸障害といいます)などは手術療法が行われます。下肢の運動麻痺や括約筋の機能低下は、重症になってからの手術では改善が乏しい傾向にあるため、腰椎椎間板ヘルニアの諸症状の中では早急な手術が望ましい、注意すべき所見です。
手術は原則として全身麻酔で行われ、患部である腰椎を中心に4~5cmの皮膚を切開します。圧迫している神経を保護しながら、原因となっているヘルニア塊を直視下または顕微鏡下で摘出します。手術は、60~90分前後で終わります。
手術後はおよそ3ヶ月程度腰椎コルセットを装着することとなりますが、翌日から少しずつリハビリを始めます。順調な経過であれば数日後からは立位訓練、歩行訓練が開始となり、傷口の状態をみて退院のタイミングが決まることが多いです。簡単なデスクワーク仕事であれば、1ヶ月もすれば再開することができます。
最近では内視鏡下でのヘルニア摘出手術例も多くなってきており、低侵襲化(身体への負担を減らすこと)が進んでいます。これにより入院期間や就労再開までの期間が短縮できるなど、メリットも大きいです。ただし、すべての腰椎椎間板ヘルニアに適応があるわけではないため、事前に手術医との相談が必要です。
また、いずれの手術とも神経を圧迫しているヘルニア塊を切除・摘出するのみで、すでにヘルニアを起こしてしまったような傷んだ椎間板を若返らせるものではありません。ですから、手術後早期に急激な負荷をかけてしまったり、正しい方法での体幹強化をある程度継続して行っていかなかったりすると、一定の 割合で再発してしまうこと(Mindsによれば5年後の再発率は4~15%)も知られています。
腰椎椎間板ヘルニアと診断されたら手術をしなければならないの?
腰椎椎間板ヘルニアは、椎間板から髄核(ずいかく:椎間板の中心部にあるゼラチン状の構造物)が突出したヘルニア塊が神経を圧迫することで症状が起こります。
このヘルニア塊はタイプにもよりますが数ヶ月で小さくなることが多く、それにつれて症状が改善するケースも少なくありません。どれくらいの割合のヘルニアが自然改善するのかはまだ明らかではありませんが、日本脊髄外科学会によれば80~85%は自然に軽快するとの報告もあります。
つまり、腰椎椎間板ヘルニアと診断されたとしても多くは自然に軽快するため、手術をしなければならないのは一部の患者さんです。保存療法を数ヶ月以上行っても顕著な改善が見られない場合や、痛み、しびれや麻痺で歩行困難となるなど生活に支障が出る場合が続いてしまっているケースで手術となります。
まとめ
椎間板ヘルニアと診断された場合は、基本的には保存療法を行います。鎮痛消炎薬や理学療法で様子をみて、それでも効果が薄い場合には手術の可能性も踏まえながら各種神経ブロックなどの治療が行われます。
これらの保存療法で多くは軽快しますが、改善がみられない場合に手術を行います。自身の症状に応じて適切な治療が受けられるよう、医師とよく相談することをおすすめします。
※<いしゃまち 引用>
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