営業部長です。
『空間除菌製品は無意味で危険?』
空気中に浮遊するウイルスや細菌などを除去できるとうたう製品が、テレビCMなどで盛んに宣伝されています。
CMを見ていると、リビングや玄関、寝室、キッチンなどの閉鎖された空間にこれらの除菌製品を置くだけで、ウイルスや細菌が原因となっている病気からあたかも自分や家族を守れるかのような印象を受けますが、それは大きな間違いです。それどころか、かえって病気にかかりやすくなってしまう危険すらあるのです。しかも、これらの製品は一つ1000~2000円と高額で、お金を無駄にするばかりでなく、健康にとってマイナスになる可能性さえあるというのは、なんとも理不尽な話です。
一般家庭の室内には、ウイルスや細菌、カビなどの微生物が常に浮遊していますが、それらは病気を起こすものではありません。もし病気を起こすものであれば、そこで生活する人すべてが病気になってしまうはずですが、実際にはそんなことはありません。ところが、CMではそれらを「バイ菌」という言葉で表現し、人間にとって害になる悪者であるかのように描いています。視聴者の恐怖心を煽ることで、除菌製品を売りつけようとしているのです。しかし、細菌やウイルスは、実際には悪者ではないのです。
「細菌やウイルスは病気を起こす」というイメージがありますが、それは一部であって、多くは無害なのです。そもそも人間の体自体が、細菌だらけといえる状態なのです。例えば、皮膚には表皮ブドウ球菌などの常在菌(日常的に存在している細菌)が1平方センチメートル当たり約10万個も存在し、口内にも数百種類もの細菌がいます。また、腸には乳酸菌や大腸菌などの腸内細菌が100種類以上、100兆個以上も存在しています。
人間の体は約60兆個の細胞で構成されているので、それよりもはるかに多い細菌が体にすみついているのです。しかし、これらは害になるものではありません。いわば共生関係にあって、細菌によっては栄養素を供給してくれたり、病原菌の感染を防いでくれたりもしています。家庭内の空気中を浮遊する細菌やウイルス、カビも同様で、それらは人間にとっては無害で、やたらと駆除する必要はないのです。むしろ、除菌製品から放出される化学物質のほうが有害なこともあります。
現在市販されている空間除菌製品は、二酸化塩素という化学物質を放散することによって、ウイルスや細菌、カビを減らすものが主流です。しかし、菌を駆除するということは、毒性があるということです。実際、二酸化塩素には、かなり強い毒性があるのです。
第一次世界大戦で毒ガス兵器として使われた塩素ガスは猛毒として知られていますが、二酸化塩素はそれ以上の毒性があるのです。国連の勧告であるGHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)によると、二酸化塩素について、ラットに対する半数致死濃度は32ppmで、「吸入すると生命に危険」とあります。一方、塩素ガスの半数致死濃度は146ppmですから、二酸化塩素は塩素の4倍以上も毒性が強いといえます。
空間除菌製品を販売している会社のホームページによると、室内の二酸化塩素の濃度を0.01~0.02ppmに保ち2~8時間経過すると、浮遊するウイルスや細菌を99%除去できるとあります。それらの製品を家庭内で使用した場合も、二酸化塩素の濃度は同程度になるのでしょう。ラットが半数死亡する濃度に比べれば低濃度といえますが、見方を変えれば「薄いガス室状態」の中で生活することになるといえるでしょう。特に化学物質に敏感な人は要注意です。
二酸化塩素を利用した製品には、首から下げるタイプもありますが、これらについては2014年3月に消費者庁が、効果を裏付ける証拠がないとして販売元17社に表示変更などを求める措置命令を出しました。いずれも合理的な根拠があるとは認められなかったため、景品表示法で禁止している優良誤認(実際のものよりも著しく優良であると示すもの)に該当するとして、措置命令を行ったのです。排除する必要のない菌を駆除する除菌製品は、首から下げるタイプだけではなく、リビングや寝室などに置くタイプについても、そもそも必要ないものです。
しかも、これらの製品を使っていると、かえって病気にかかりやすくなる危険があります。私たちの体は、周辺のウイルスや細菌、カビなどの刺激を受けることによって免疫力が維持されています。ところが、それらを駆除してしまうと、刺激がなくなって免疫力が低下してしまうと考えられるのです。
家の外、特に人がたくさん集まる駅やデパート、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、映画館などには、病原性のウイルスや細菌などが潜んでいることがあります。そのような場所に免疫力が低下した状態の人が出入りすれば、当然ながら病気に感染しやすくなります。除菌する必要のない家の中を除菌することで、外に出ると病気にかかりやすくなるのです。
結局、これらの除菌製品を購入して使っても、何もプラスになることはないのです。CMに惑わされて買い込まないようにしてください。
※<ビジネスジャーナル引用>
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