夕方、宴会場には全員が浴衣姿で顔を揃えていた。
カラオケもできる広い舞台を背にして正面左から、この旅行の幹事役の高原隆一、今回のスポンサー”アブさん”こと杉山二郎、その右には川島有紀の3人が座っている。
中央をあける形で、左右に10人づつ、10組のカップルが隣りあって座っている。これで23人全員が揃ったわけだ。
昼間、カップルで、あるいはカップルがグループになって出かけた連中は、自分たちが出かけた観光スポットについて情報交換しているのか、ワイワイガヤガヤと騒がしい。
隆一のバイク仲間は、関東大の学生とは限らない。他校の大学生もいれば、すでに社会人という者もいる。
カップルも十人十色で、女性のほうが年上という者もいる。
幹事役の隆一が、立ち上がった。
・・・宴会の寸前に杉山から、実質上のスポンサーである彼の父親に、女性分の費用は聴いておらず断られたという話を聞かされた。隆一は、自分の店にも電話して頼んでみたが、急な話で快諾は得られなかった。
困り果てたすえ、杉山と話し合って≪日程を短縮するしかない≫という結論になった。
騒いでいた連中もようやく静かになり、隆一に注目した。
隆一「えー、皆さん、今日から4日間の予定のツーリングに参加いただきましてありがとうございます」
パラパラと拍手がわいた。杉山は、みんなに合わす顔がないのか下を向いたままだ。
隆一は、「う、うん」と咳払いをして、
「えー、皆さん」と、もう一度言った。
「それはもう訊いたわ」
近くに座っていた女性のひとりが、からかい半分に言った。
この合いの手に、一部からクスクスと笑い声がおきた。