・・・・「あの時の杉山さんのパッシングライトがもう少し遅れてたら、ヤバかったですねー」
「ほんと」
「そうそう」
ここは、ホテルにチェックインして部屋に荷物を置き、ひと汗流そうとやってきた男湯の湯舟のなかである。
展望大浴場というだけあって、遠方に下界の街を見下ろせる眺望が素晴らしい。旅の疲れも癒されるというものである。
杉山は、あの時は一瞬しまったと思ったが、みんなからそう言われると気分がいい。
杉山はいい気分ついでに、ホテルを予約した隆一に尋ねた。
「このホテルには混浴風呂とか露天風呂はないのかい?」
隆一「アブさんがこの企画に参加すると決まった時から、混浴風呂のないホテルをあたったのさ。露天風呂ならあるらしいよ、ただし、おばさんばかりらしいけどね」
一同は、ドッと笑った。
杉山は、さっきのいい気分はどこかへ消え失せてしまった。
それに、今ごろ展望大浴場の女湯に入っている彼女たちのことを考えると頭が痛い。
(これじゃあ大幅な予算オーバーだ。あとで親父に電話して、予算追加の交渉をしなくちゃいけない・・・)
ケチで頑固な父親にどう説明しようかと、頭を悩ませる杉山だった。