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広島の名も無き”田舎侍”が地元プロスポーツを中心に色々と書いて行く過激なスポーツコラムや、広島の市政や街づくりについても

ハードボイルド時代劇 『筆殺仕立人』 第七話:序

2008-06-19 22:22:22 | Weblog
面白き事も無き世を面白く

格差、格差の野球界

熱き戦い仕立て上げ

闇の世界の仕立人

今宵も広島を駆ける...

                 

 6月の半ば... 広島地域も梅雨入りしたが、皮肉な事に梅雨入り宣言後に雨はあまり降っていない。 しかし晴れの日も少なくて妙に蒸し暑い日が続いている。 私はイーグルスとの戦いに備えて再び広島入りした”エリカ様”を『縮景園』へ案内する。 広島市内もさすがにもう紹介する場所が無くなって来たな... ここは広島駅と市内中心部の間にあるのだが、あまり行く機会が無くて私も中学時代の遠足などで二度ほど来た程度だったと思う。 入口で入場券を買った後、近くに居たガードマンに挨拶されたのでせっかくだから園内のお勧めルートを聞くと詳しい案内をしてくれた。

 ここは江戸時代に広島城主だった浅野氏が造った大名庭園で、広島城が本丸と二の丸を残して取り壊された後も残されていたのだが、原子爆弾によって園内の建物はもちろん、木々までもみんな焼けてしまったのだとか。 それなので現在、園内にある茶室や展望室などは全て戦後の再建であり、木々も全国から譲られるなどして植え直されたものなのだとか。 私も地元の人間ながら知らなかった。 てっきり江戸時代そのままなのかと、今のこの庭園の姿から漠然とそう思っていたのだ。


「なかなかいい感じのお庭だね。 広島にもこんなところがあったんだ。」

「縮景園はあまり全国的には有名ではないですからね。」

「岡山の後楽園、金沢の兼六園、そして水戸の偕楽園が”日本三名園”として名が通っていて、他の大名庭園の名前はほとんど聞かないですよね、何故か。」

「お城と庭って”セット”みたいになっているんだね。」

「表向きは庭園ですけど実質的には”城”なのだと思いますよ。」

「???」

大阪冬の陣の時、家康は大阪城の北にある淀川の中洲にありったけの大砲を持って来てぶっ放した。 淀川の流れに守られて安全だったはずの本丸に大砲を撃ち込まれて恐怖心を植え付けられた大阪方は”外堀を埋めるだけ”と言う家康の罠にはめられて堀を全部埋められて丸裸にされ、結局豊臣家は滅ぼされてしまうんですよ。」

「それを見ていた大名達が城の中心部を大砲の射程距離から遠ざける為に城を拡張しようとしたけど、平和な時代になって城の強化を禁止されたから庭園と言う形にして表向きは”文化事業”にしたと思うんですよ。」

「ふーん、相変わらずそう言う話には詳しいんだね。」

                 

 園内に入ってから妙に違和感がある、昔と何かが違うのだなと思ったら園の外側にある樹がすごく伸びていてまるで園内が森の中にあるかの様な感覚になっていたからだ。 中心部の池に沿って歩きながら考えていてやっと気が付いた。 昔、地元紙に園の北側に高層マンションが建って景観が壊れてしまうと苦情を申し入れたがマンション業者は無視、この高い樹は周囲の高層ビルを園内の人の視界から隠す為のものだったのだ。 この事件の後、今度は原爆ドームの近くに高層マンションが建って全国ニュースにも取り上げられるなどした為、広島市もやっと景観保護に重い腰を上げたのだった。

 園内中心部の池に沿って歩いていると小さな建物が見える。 茶室が何箇所かあるのだが一般客は立ち入り禁止らしい。 もっとも私も”エリカ様”も茶人じゃ無いので入っても仕方が無いのだが... 池を見下ろす見晴らし台の様な小さな建物があってそこは入っても良いみたいだ。 ちょっと歩き疲れたし、そこに座って話をした...

「広島も梅雨入りしたって聞いたけど雨は降っていないんだね。」

「この間すごく降ったんですよ。 それで雨合羽ではずぶ濡れになる、スクーターでは行けないから今日は休みますって職場に電話したら、雨くらいで休むとは何事だ!って私の上司が大目玉を食らったらしくて、私も後になって失敗したなと気が付いたんですけどね。 病気なり忌引きなり適当な理由を考えれば良かったって。」

「駿ちゃんも頭がいいのか悪いのか分からない人だね。 大工さんじゃあるまいし、雨で仕事休むなんて聞いた事が無いよ。」

「私も大風呂敷な戦略をおっ広げるかと思ったら小さいところでは信じられないほど間抜けだったりするんですよね... やっぱり何か大きな事を成し遂げるには色々な才能を持った多くの人の力が必要ですよ。 一人の力だけでは何も出来ません。」

                 

「私の好きな『銀河英雄伝説』って言う物語の中に出て来る台詞で、有能な人がその才能を生かせる地位に就ける、それは今が乱世だと言う事だって、それがずっと私の頭の中に残ってまして。」

「才能があるのに認めてもらえない、才能も無いくせにコネで出世する奴は許せないと昔はそう思ってたし、そう思っている人は他にも居るかも知れないけど、今になって思うのは才能が無くたってみんなにそれなりの生活や人生が保障される世の中の方がいいんじゃないかって。 才能だけでバリバリのし上がれる世の中が本当に良いのか、私にも分からなくなりましたよ...」

 縮景園をを出た後、私は”エリカ様”の指示でタクシーを呼び、駅近くの宿泊先のホテル前まで送った後、自分はJRにに乗ってとりあえず家に引き上げた。

                  

「駿ちゃん、仕立だよ! いつもの場所に来てちょうだい。」

 携帯に”エリカ様”から連絡が入った。 私は早速広島市内の『横川胡子神社』へと向かった。 雨が降っていないのは良いけど蒸し暑いな。 ”エリカ様”はいつも通り神社の縁石にお金と今回の試合のチケットを並べた...

「これが頼み料です。」

「今回の頼み人は市民球場最後の年にプレーオフ進出を願う多くのカープファン。」

「やる相手はイーグルス、監督の野村、四番打者の山崎、外野手のリック、内野手のフェルナンデス、高須。」

「じゃあ、頼むよ。」

「はいっ! ”エリカ様”。」

                   

 私は『横川胡子神社』を出て市民球場に向かう。 ”ノムさん”は選手としても監督としても歴史に名を残している偉大な野球人で私はその足元にも及びませんけど、カープの勝利の為に私も知略の限りを尽くして戦います。 去年、一昨年と2年続けて負けていますけど、今年こそ”三度目の正直”で勝たせてもらいます。 心配なのは天気だけですね。

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 ...異常です。

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