これはある生物との死闘の歴史を書き綴ったものである。
やつらは人類が誕生するそのはるか昔からこの地球上に存在していた。
その生命力は凄まじく、たとえ体が半分にちぎれてもまだ動くことができる。
そしてそれほどまでに高い生命力を持っているのにもかかわらず、繁殖力も驚異的である。
獰猛な食性で、なんにでも喰らいつく。
風のごとく動き、暗闇でも行動でき、さらには飛行能力さえ持つ。
外見も醜悪であり、やつらの姿を見た瞬間、「敵」と感じずにはいられないだろう。
その生物とは…
そう、「G」こと「ゴキブリ」だ…
私はGの侵略に晒されていないこの平和な土地に移り住む前まで、東京というやつらのテリトリーに住んでいた。
しかも当時住んでいた住居は古い社宅であったため、家の冷蔵庫の裏や流し台などはGのプレイスポットであった。
まだ幼かった私はGと遭遇してしまってもなす術がなかった。
ママンか望(弟)に駆除してもらうか、泣きながらその場から逃げることしかできなかった。
よく武器(新聞紙を丸めたもの)が届く距離まで接近できるなあと感心したものだ。
そんなある日、転機が訪れる。
中学生になった私は、自分の部屋を与えられることになった。
3畳ほどの狭い部屋であったが、自分だけの部屋を手に入れた私は有頂天になっていた。
毎晩勉強(と見せかけてゲームボーイ)を心ゆくまで楽しんだ。
ある日、いつものように深夜GB(ゲームボーイね)を楽しんでいると奇妙な音が聞こえる。
瞬間、いやな汗が噴き出した。
焦っていたのでセーブもせずにGBの電源を落としてしまう。
そのことを悔やむよりまず、耳を澄まし音の発信源を素早く目で探す。
下手に動くとやつを刺激しかねないため体はいっさい動かせない。
…いた
天井だ…
なんでこんな水も食べ物もない部屋に出てくるんだと心の中で悪態をつきながら、どうやってこの状況を打破するか考えた。
しかしGは入り口側の天井に張り付いており、この部屋を脱出しようにもできない。
やつの下を通るなどもっての他だし(落下・飛行される危険がある)かといって他に逃げ場と言ったら窓を開けて2階から飛び降りる他はない。
このとき初めて、この「狭い空間」というものが孕んでいる危険性に気がついた。
しかし今更悔やんでも後の祭りである。
なるべくなら穏便に済ませたい。
話し合いによる平和的解決が理想だが、残念ながら話の通じる相手じゃない。
…先制攻撃しかないのか?
下手な刺激はGを興奮させるだけだ。こちらに飛んでこられたらたまらない。
もしもGに触れられたら私はショック死するだろう。
長考の末に出した作戦は、相手が天井にいる間は一撃で殺す手段がこちらにないため、まずは床に落としてから鈍器で撲殺しようというものであった。
そこでいまだじっとしているGに向かって、もう捨ててもいい消しゴムを投げつけることにした。
左手にはすでに鈍器を握っている。
飛ぶなよ飛ぶなよと念じながら、
投げる…
直撃はしなかった。
だがそれに反応し、Gは…
こっちに向かって飛び降りてきやがった!!
悲鳴をあげながら鈍器を振り回す若き日の私。
コンポやタンスをボコボコに殴りながら命からがら部屋を飛び出すのが精一杯だった。
…完全なる敗北だ。
悔しさに唇をキュッと噛む。
その後部屋から出てきた親父に「何時だと思ってるんだ!」みたいなことを言われて殴られた。
翌日、私は学校で少し悪目の友達に話を聞きにいった。
奴らに対抗するための武器を手に入れるためだ。
このままでは安心して深夜にGBを遊べなくなる。というか部屋に入るのも怖い。
彼らは武器について非常に詳しく教えてくれたばかりか、家に招き自慢の武器を触らせてくれもした。
当時自他共に認めるバリバリの優等生だった私が、エアガンなどという物騒なものを購入したのには、こんないきさつがあったからなのである。
エアガンは威力よりも命中精度を重視したものを購入した。
うろ覚えだが「グロック18L」とかいう名前の銃だったはずだ。
弾も2000発買った。弾だけで1000円位したが、店のおじさんにゴキブリ退治のためだと言ったら800円にしてくれた。
その日から、射撃訓練が始まった。
まずは家のベランダから遠くの街灯をめがけて撃ちまくった。
命中すると「カン」と乾いた音がするので分かりやすい。
落ち着いて狙えば当たるが、いかに素早く狙いをつけるかも重要な要素だ。敵がいつも止まっているとは限らない。
街灯当てが完璧になったら次は公園に行って風に揺れる草木を撃ちまくった。
友達とも撃ち合った。
その頃には大分射撃の腕も上がっており、悪友たちなどとっくに追い抜いてしまっていた(彼らとは訓練に対する心構えが違うのだ)私は、かなり遠くから「狙ってみろよ」と言われて普通に眉間あたりを撃ち抜いた。
「目に当たったらどぉすんだ!」と超怒られた。
そんなわけで、Gに対する強力な攻撃手段を手に入れた私は精神的にもかなり余裕を持つことができた。
今まで防戦一方であった私が、Gに対しこんなにも好戦的になるとは思いもよらなかった。
しかしなかなか部屋にGが現れない。
出現して欲しいような、して欲しくないような、そんなジリジリとした気持ちで日々を過ごした。
GBにも身が入らなかった。
・・・しかしついに、Gが私の前に姿を現す日がやってくる・・・
<つづく>
やつらは人類が誕生するそのはるか昔からこの地球上に存在していた。
その生命力は凄まじく、たとえ体が半分にちぎれてもまだ動くことができる。
そしてそれほどまでに高い生命力を持っているのにもかかわらず、繁殖力も驚異的である。
獰猛な食性で、なんにでも喰らいつく。
風のごとく動き、暗闇でも行動でき、さらには飛行能力さえ持つ。
外見も醜悪であり、やつらの姿を見た瞬間、「敵」と感じずにはいられないだろう。
その生物とは…
そう、「G」こと「ゴキブリ」だ…
私はGの侵略に晒されていないこの平和な土地に移り住む前まで、東京というやつらのテリトリーに住んでいた。
しかも当時住んでいた住居は古い社宅であったため、家の冷蔵庫の裏や流し台などはGのプレイスポットであった。
まだ幼かった私はGと遭遇してしまってもなす術がなかった。
ママンか望(弟)に駆除してもらうか、泣きながらその場から逃げることしかできなかった。
よく武器(新聞紙を丸めたもの)が届く距離まで接近できるなあと感心したものだ。
そんなある日、転機が訪れる。
中学生になった私は、自分の部屋を与えられることになった。
3畳ほどの狭い部屋であったが、自分だけの部屋を手に入れた私は有頂天になっていた。
毎晩勉強(と見せかけてゲームボーイ)を心ゆくまで楽しんだ。
ある日、いつものように深夜GB(ゲームボーイね)を楽しんでいると奇妙な音が聞こえる。
瞬間、いやな汗が噴き出した。
焦っていたのでセーブもせずにGBの電源を落としてしまう。
そのことを悔やむよりまず、耳を澄まし音の発信源を素早く目で探す。
下手に動くとやつを刺激しかねないため体はいっさい動かせない。
…いた
天井だ…
なんでこんな水も食べ物もない部屋に出てくるんだと心の中で悪態をつきながら、どうやってこの状況を打破するか考えた。
しかしGは入り口側の天井に張り付いており、この部屋を脱出しようにもできない。
やつの下を通るなどもっての他だし(落下・飛行される危険がある)かといって他に逃げ場と言ったら窓を開けて2階から飛び降りる他はない。
このとき初めて、この「狭い空間」というものが孕んでいる危険性に気がついた。
しかし今更悔やんでも後の祭りである。
なるべくなら穏便に済ませたい。
話し合いによる平和的解決が理想だが、残念ながら話の通じる相手じゃない。
…先制攻撃しかないのか?
下手な刺激はGを興奮させるだけだ。こちらに飛んでこられたらたまらない。
もしもGに触れられたら私はショック死するだろう。
長考の末に出した作戦は、相手が天井にいる間は一撃で殺す手段がこちらにないため、まずは床に落としてから鈍器で撲殺しようというものであった。
そこでいまだじっとしているGに向かって、もう捨ててもいい消しゴムを投げつけることにした。
左手にはすでに鈍器を握っている。
飛ぶなよ飛ぶなよと念じながら、
投げる…
直撃はしなかった。
だがそれに反応し、Gは…
こっちに向かって飛び降りてきやがった!!
悲鳴をあげながら鈍器を振り回す若き日の私。
コンポやタンスをボコボコに殴りながら命からがら部屋を飛び出すのが精一杯だった。
…完全なる敗北だ。
悔しさに唇をキュッと噛む。
その後部屋から出てきた親父に「何時だと思ってるんだ!」みたいなことを言われて殴られた。
翌日、私は学校で少し悪目の友達に話を聞きにいった。
奴らに対抗するための武器を手に入れるためだ。
このままでは安心して深夜にGBを遊べなくなる。というか部屋に入るのも怖い。
彼らは武器について非常に詳しく教えてくれたばかりか、家に招き自慢の武器を触らせてくれもした。
当時自他共に認めるバリバリの優等生だった私が、エアガンなどという物騒なものを購入したのには、こんないきさつがあったからなのである。
エアガンは威力よりも命中精度を重視したものを購入した。
うろ覚えだが「グロック18L」とかいう名前の銃だったはずだ。
弾も2000発買った。弾だけで1000円位したが、店のおじさんにゴキブリ退治のためだと言ったら800円にしてくれた。
その日から、射撃訓練が始まった。
まずは家のベランダから遠くの街灯をめがけて撃ちまくった。
命中すると「カン」と乾いた音がするので分かりやすい。
落ち着いて狙えば当たるが、いかに素早く狙いをつけるかも重要な要素だ。敵がいつも止まっているとは限らない。
街灯当てが完璧になったら次は公園に行って風に揺れる草木を撃ちまくった。
友達とも撃ち合った。
その頃には大分射撃の腕も上がっており、悪友たちなどとっくに追い抜いてしまっていた(彼らとは訓練に対する心構えが違うのだ)私は、かなり遠くから「狙ってみろよ」と言われて普通に眉間あたりを撃ち抜いた。
「目に当たったらどぉすんだ!」と超怒られた。
そんなわけで、Gに対する強力な攻撃手段を手に入れた私は精神的にもかなり余裕を持つことができた。
今まで防戦一方であった私が、Gに対しこんなにも好戦的になるとは思いもよらなかった。
しかしなかなか部屋にGが現れない。
出現して欲しいような、して欲しくないような、そんなジリジリとした気持ちで日々を過ごした。
GBにも身が入らなかった。
・・・しかしついに、Gが私の前に姿を現す日がやってくる・・・
<つづく>
もう少しお待ちください(笑)
そんなに気持ち悪いんだね~。
ふむふむ。
そのときに失神しないように、いまからネットで画像とか見て耐性つけておいた方がいいのでは…笑
気をつけて!