わけ分からないタイトルの意味を説明すると、偶然にも、映画「バブルへGO」の封切りと時を同じくして、自分の持ち物で、最後のバブルの遺恨となった腕時計が世代交代した、と言うことなんですが、余計分からん???
構わず進めさせて頂きますが(笑)、写真左の時計は、1987年に発表された、タグホイヤーのS/el(スポーツ/エレガント)シリーズで、当時、タグホイヤーの日本市場でのイメージ確立に貢献したヒットモデルです。
その頃の日本は、バブル経済に向かって突っ走っていた真っ最中、また、故アイルトン・セナに象徴されるF-1ブームも絶頂に達しようとしていた時期で、この両方の流れにうまく乗った、この時計のデザイン、価格、戦略(+メーカーの歴史)がまんまと当たり、それまで、ブランド時計なんか興味が無かったような人間(自分も)までもが、こぞってお買い上げされたのでした。
真面目な話、自分の周りは会社の役員から同僚、そして女性も含め、かな~りな方々が愛用されていました。
時は流れ、本格的に時計の世界に興味を持った方々は、オメガやロレックスに移って行き、カジュアル派はGショックなどをコレクションされていましたが、自分だけは、いつまでもこの時計をしていて、早20年近く。
全く故障もせず、電池交換だけで黙々と正確な時を刻み続けてくれるし、各パーツが丸みを帯びた独特のデザインは、肌に吸い付くような滑らかな着け心地で気持ち良いし、200m防水で取り扱いにも気を使わなくて良いし、ON/OFF共使えるデキるヤツでした。
え~と、時計を新調した話なんで、そろそろ新しい方の話に移りますが、LAに駐在してから、時差のある移動がやたらと増え、ビジネス向けにGMT機能の付いた時計が欲しいとず~っと思っていたのですが、予算やタイミングの問題でなかなか買えずに、5年以上悶々とした末にとうとう買っちゃった、と言うのが購買動機です。
で、買ったのは、写真右の『タグホイヤー、カレラ、ツインタイム』と言うモデルです。 またホイヤーかよ?と言う感じですが、結局、そうなってしまいました。
GMT機能付き腕時計で1番人気と思われるは、ロレックスのエクスプローラーⅡ。確かに魅力的なんだけど、これは全く予算オーバー。
で、手頃な価格と、ビジネスライクでクラシックなデザイン(出来れば革ベルト)の機械式時計、と言う条件で最後まで候補に残ったのが、オリスのXXLワールドタイマー(既に生産終了モデルですがまだ売ってます)と、コレ。
最後の決め手は、文字盤のシンプルさ。
両者のデザインは非常に似ていて、違いは文字盤。オリスのワールドタイマーシリーズの特徴は、簡単に言うと、時計の中に小さい時計がもう1つある感じで、これはこれで魅力があるのですが、メカっぽさだったらクロノグラフを買えば良いのだし、一見、GMTに見えない、ホイヤーのシンプルな盤面に惹かれたのでした。(強いて言えば、ややクオリティ不足ですが…)
ところで、2都市(以上)の時間帯を表示できる時計をGMT(グリニッジ標準時のこと)と呼ぶことが慣例のようになっていますが、ホイヤーのこのモデル「カレラ」では、TWIN TIMEと命名されています。でも、同じキャリバー(メカニズム)を使っている「リンク」と言うモデルではGMTと呼んでいるのですが、何か違うのでしょうかね?
ここからは戯言として読んで頂きたいのですが^^;
実は、本当に欲しかったのは、グランドセイコーGMT。価格は、先の予算オーバーで諦めたロレックスと同じくらいします。
数年前から個人的に“Buy Japanese”を密かにに展開したいと思っていて、事ある毎に、意識的に日本製品を候補に上げているのですが、結局、選べない。
今回買った腕時計も、3年以内に買った、眼鏡も、携帯電話も、携帯オーディオも、ホームシアターも、クルマも、海外ブランドの製品になってしまった…涙。
何故か?
1つに日本製でも良いものは高い!
コレ、当たり前と思われるかもしれませんが、ちょっと大袈裟に言い方を変えると、同じ機能・性能の製品だとしたら、実は、海外ブランド製品より、日本メーカー製品の方が高い、と言う現実が進行しています。
日本製は安くて性能も良い、と言うのは昔の話。
分かりやすい例としては、アジア製品が台頭している家電製品。この対抗策として、日本メーカーは、製品に技術とアイデアの付加価値を付けて、「高くても良いもの」で勝負することにシフトしているのです。斜めドラム洗濯機とか、薄型TVなんかは良い例です。
これとて実は危うい戦略で、とある製品の話では、技術がとりたてアジアメーカーと比較して高い訳ではなく、高性能な製品を作るため、徹底的に設計精度・製造精度を高くしても、結局、生産歩留まり率は下がっているとか。これを直訳すると、生産バラつきの上だけ出荷して、下は捨ててでも、高性能を保っていると言うこと?!
日本の基幹産業であるクルマも安心はできません。
欧州プレミアムブランドのクルマは高価ですが、同じ性能の製品を、同じ作り方で日本のメーカーが製造した場合、欧州メーカーと同じ価格ではやってけないから、いつまでも、下や横(?)の土俵で勝負せざるを得ないのかもしれません。
さて、話を時計に戻しますが、数あるスイスの有名ブランド時計。実は、極少数のブランドを除いて、中身はみんな一緒です。(今回買ったメーカーも、最後まで候補に残ったもう1つのメーカーも、オ○ガも、○ライトリン○も、あれもこれも…)
まあ、正確には、汎用キャリバー(メカ)メーカーがあり、そこのラインナップから自社の製品に合うものを選び、多少モデファイして搭載している、ということなんですが、これにより開発費の大幅な削減が可能になり、競争力のある価格で製品が提供できる要素の1つになっています。
グランドセイコーは確かに世界TOPレベルの製品ですが、そこまでじゃなくても、ETA(汎用メーカーの1つ)製キャリバー並みの性能で、手頃な機械式GMT時計を、日本のメーカーが作って欲しいのですが、これといったものがありません。
恐らく、ブランドイメージまでも考慮すると、日本のメーカーでは競争力のある製品が作れない、と言うのが本音だと思います。それで、電波だのソーラーだのと、先進メカで勝負せざるを得ないのかと。(それはそれで、日本製品としての正しいソリューションかもしれませんが…)
歴史や伝統がもたらす、欧州メーカーのような強いブランドイメージも無く、アジア製品のような価格競争力も持てない日本のメーカーは、今、価格競争力で欧州ブランドにも、技術力でアジアンブランドにも迫られようとしています。
スイス時計産業の歴史に見る光と影から、この先、もし、我々の生きるべき道(方法)も、改めて見直さなければならない時期が来たときに、デザイナーの果たさなければならない役割は、非常に大きいのだろうと感じます。
いやいや、時計1個で少々話を広げ過ぎたので、この辺で終わりにします。