厚労省が「パワハラ」の定義を発表

パワハラやセクハラ、マタハラなど、ハラスメントにまつわる紛争が増加傾向にあります。いずれも共通しているものは「いじめ」、「いやがらせ」が存在し、人権侵害につながるという点です。都道府県の労働局に寄せられるいじめや嫌がらせの相談件数の割合は、平成17年度には8.9%だったものが、平成26年度は21.4%と2倍以上に増加しています。実際、相談されていないケースを含めるとそれ以上に多くなるでしょう。

この度、パワハラという法律上の定義はありませんが、厚生労働省から職場における「パワーハラスメント」の定義が発表され、報告書が公開されました。そこでは、大きく分けて次の行為がパワーハラスメントであると提示されています。

■身体的な攻撃
■精神的な攻撃
■人間関係からの切り離し
■過大な要求
■過小な要求
■個の侵害
※この対象は部下から上司、同僚間に対する行為も含まれています。

パワハラの発生に関連する3つの社内背景とは

このようなパワハラが存在するには、次のような背景が存在することが考えられます。

1.成果主義のために早期に結果を求められる
即戦力を求める職場においては早期の結果を求めるため、結果が出せなければ厳しく対応することになってしまいます。通常は計画に沿って教育訓練を行い一人前にしていくべきところを、生産性向上ために要求も過大なものになってしまいます。

2.厳しい叱責で業績が上がるとの誤解
ミスがあった時には叱るなど必要な指導をしなければならないのは当然のことですが、その叱り方の厳しさに比例して業績が上がるわけではありません。人の受け止め方によってはかえって萎縮したり、モチベーションを下げることにもなります。特に若い人ほど叱られることに慣れていないため、その行為と人に合った指導が必要です。

3.就業規則等社内規定の順守意識がない
管理職に限らず一般職の社員が就業規則や服務規律を守る意識がない会社では、ハラスメントに対する認識も薄いようです。守るべきという認識がなければ、就業規則にハラスメント防止規程があっても守られることはないでしょう。

会社、加害者、被害者ともに大きな不利益がある

パワハラと認定されれば、会社にとっては民事の損害賠償や人材流出だけでなく、ブラック企業のレッテルが張られ、加害者にとっては民事・刑事責任、懲戒処分が、被害者にとっては精神的・肉体的苦痛、退職せざるを得ないというように、三者ともに大きな不利益があります。

そうさせないためには、企業のトップがハラスメント防止のメッセージを出すことや、日頃からのハラスメント防止研修を行うことが必要です。このように快適な職場環境を目指していくことが、生産性の向上にもつながっていきます。

(松本 明親/社会保険労務士)


実際のところ、自分も退職願を出すほどに追い詰められているのに、会社は何らの対策もとってくれませんからね。