解剖学者養老孟司ようろう・たけし/1937年、神奈川県生まれ。62年、東京大学医学部卒業。81年、東京大学医学部教授に就任。95年、退官し、同大学名誉教授に。心や社会の問題を、脳科学や解剖学の知識をもとに解説し、多くの読者を得る。89年、『からだの見方』でサントリー学芸賞受賞。『ヒトの見方』『解剖学教室へようこそ』『唯脳論』など、著書多数。近著に『文系の壁』『「身体」を忘れた日本人』。昆虫研究でも知られ、福島県須賀川市の科学館「ムシテックワールド」の館長を務める(撮影/写真部・大嶋千尋)
(dot.)
禁煙、分煙が進み喫煙者にとっては風当りの強くなってきた日本。しかし、解剖学者である養老孟司さんは喫煙者。作家・林真理子さんとの対談でもダンディーにたばこをくゆらせていたそうだが……。
* * *
林:ところで先生、さっきからたばこをスパスパお吸いですけど、それはこれまでたくさんのご遺体を解剖された結果、たばこを吸っても吸わなくても人間の肺には関係ないことがわかったからですか。
養老:僕が解剖した人、みんな真っ黒だったもん。じいさんもばあさんも。肺が黒くなるのは、消化できないゴミが入って、細胞が食ってためてるからなんです。
林:たばこを吸おうと吸うまいと……。
養老:大差ない。
林:先生が言うと説得力がありますよ。
養老:というか、肺がんに関してはそういう話になってるんです。ここ10年間、喫煙率はきれいに下がってるのに、肺がんの患者数はきれいに上がってる。そのグラフを二つ並べて、「肺がんの原因は禁煙だ」と言ってるんです(笑)。
林:検診や早期発見が大事だといわれる一方で、検診も人間ドックも無駄だという人もいるし、何が正しいのかまったくわからないです。
養老:でしょ。みんなそういうことに正しい答えがあるんだと思ってるけど、そんなものありゃしませんよ。
林:先生、頭のいい人と悪い人というのも、解剖して脳を見たときにわかりますか? 頭のいい人は脳のヒダもきれいだとか(笑)。
養老:そんなものわかりませんよ(笑)。コンピューターの写真撮っても、性能がわからないのと同じです。
林:それにしても先生、なんだか、若返られたみたい。箱根の空気のせいですかね。
養老:鬱陶しいことがあると老け込みますからね。
林:東大の教授をされていたころはつらかったですか。
養老:大変だった。さっきの話じゃありませんが、毎日やることが同じだと、具合が悪くなっちゃいますね。僕の場合は現場だったから、ずっとましでしたけど。
※週刊朝日 2015年11月20日号より抜粋
先日、ある講演会で某有名医大の先生が、「1日に1箱ぐらいなら問題ない」って言ってましたけどね。
自分的には金がもったいないからやめようとは思っていますが…。