年賀状のシーズンがやってきた。でも、忙しい年末に時間をかけて何百枚も書くのは正直、大変だ。年齢を重ねるごとにその思いは募るばかり。「年賀状を書くのをやめたい」と思いながらも毎年、筆を執り続けている読者の皆さん。安心してください、上手にやめる方法をお教えします。

 ある年の元日。ポストに届いた年賀状を見て、都内に住むトータル飲料コンサルタントの友田晶子さん(52)は愕然とした。古い友人からのはがきに載っていたのは、愛犬の写真とその名前だけだったからだ。

「これは、年賀状……なのかな?」

 パソコンを使わず、相手の顔を思い浮かべて100枚以上を自筆で書いていた友田さんにとっては「形式だけの年賀状」と受け取らざるを得なかった。ほかにも子どもの写真や、イラストだけのものなどが年々多くなっていった。

「相手の近況を知るツールだった年賀状が、ただの絵はがきに変わってしまったんです」(友田さん)

「意味のないやりとりはもうやめよう」と10年ほど前、年賀状を出すのをやめた。すると、慌ただしかった年末に余裕ができ、仕事や家事に集中できた。

「昔と違って今はメールなどがあり、会いたい友人や仕事相手とは常に連絡をとっています。やめたからといって縁が切れたり関係にひびが入ったりすることはありませんでした」(同)

 とは言え、年賀状をやめると決断しきれない人は多い。そもそも年賀状って、やめてもよいものなのか? 専門家に尋ねてみた。

『手紙の文例・マナー新事典』(朝日新聞出版)を監修した文筆家の中川越氏はこう話す。「今から50年ほど前、付き合いの手段として年賀状が非常に有効で、若者にとって数の多さは人気の象徴であり、異性に思いを伝えるラブレターの代わりでもありました。でも今はメールや携帯電話が発達し、一部の年賀状は『去年来たから今年も出す』という儀礼的なものに。それでは付き合いとして意味をなしませんので、その場合は出さなくてもよいでしょう。特に仕事の付き合いが不要になったシニアならなおさらです」

 日本マナー・プロトコール協会の明石伸子理事長もこう話す。

「年賀状をやめるのは、マナー違反には当たりません。出すも出さないもその方の自由です」

 ただ、何も伝えず急にやめると、具合でも悪いのだろうかと相手に心配させる懸念があると言う。

「今年書く年賀状の末尾に一言、次の年から出さないという旨を添えるのがよいでしょう。とはいえ『年賀状だけの付き合いなのでやめたい』『虚礼を廃止しましょう』と“本音”を書くのはNG。相手に不快な思いを抱かせない表現を心掛けましょう」(明石氏)

 ふむふむ。でも、うまい言い方を考えるのは意外に難しい。そこで、具体的な例文とポイントを前出の中川氏に教えてもらった。

 年賀状辞退のあいさつで大切なことは三つ。【1】すべての人に対しやめる旨を明記する【2】辞退する理由は、年齢など当たり障りのないものにする【3】これが絶交ではないことを伝える──ことだ。

「『あなた一人だけやめます』としては印象が悪い。事実とは違っても『みんなにそうしていますよ』と伝えましょう。また、本当は大病を患ったなど重大な理由があったとしても、正直に書くと相手が心配し、お見舞いをしなくてはと気を使わせてしまいます。年齢による体力の不足など、差し障りのないものがよいですね」(中川氏)

 つまり、「この数年頓(とみ)に視力が弱まり年賀状の準備が困難になって参りました」「体力の衰えを痛感し年末を悠々と過ごしたく決意いたしました」など、相手が状況を察せられるようなものがおすすめだ。親しい人なら顔写真を入れて健在を示し、安心させるのもよいだろう。

週刊朝日 2015年11月20日号より抜粋


そうかなぁ。

自分は年賀状だけの付き合いになったとしても、せめて1年に1回ぐらいは音信を通わせておきたいと思うんですけどね。