自分の考えや価値観とは違う人たちと、どうすればうまく付き合うことができるのかを考える短期集中連載。1回目のテーマは「苦手意識の克服」です。

誰にでも苦手な人はいるものです。できれば話をしたくないし、関わりを持ちたくない。しかし、ビジネスの世界ではそんなことは許されるはずもありません。では、どうすればよいのでしょうか?

そこで、『特定の人としかうまく付き合えないのは、結局、あなたの心が冷めているからだ』の共著者で心理カウンセラーの五百田達成(いおたたつなり)さんに、苦手な人、できれば避けたい人と、うまく付き合うための対処法について聞いてみました。

五百田達成(いおた たつなり)/作家・心理カウンセラー
コミュニケーション心理」「社会変化と男女関係」を主なテーマに、「情報の翻訳家」として執筆・講演。最新刊は「アラン先生と不幸な8人」(ワニブックス)。30万部を超える「察しない男 説明しない女」シリーズほか、著書多数。日本テレビ「スッキリ!!」レギュラーコメンテーターを務めている。公式サイト


苦手意識は、嫌悪感から憎悪へと発展する恐れがあるので要注意


── まず、基本的なことですが、人が抱く苦手意識は、どのようなことから芽生えてくるのでしょうか?

五百田氏:皆さんも心当たりがあると思いますが、自分とは違うタイプの人と出会い「理解できない」と感じたときに苦手意識が芽生えてきます。これは、「ネオフォビア(新奇恐怖症)」と言いますが、初対面の人や初めて行く場所、初めて見るものに不安感や嫌悪感、恐怖を覚え、自分には理解できないと感じたときに拒否しようとするわけです。

また、日本人は協調性が高いとされていますが、逆に言えば同調圧力がかなり幅を利かせています。本来、苦手意識は主観的なものですが、自分たちと合わないという空気が充満すると苦手になる傾向があります。

そして、芽生えた苦手意識をそのまま放置してしまうと、単なる苦手意識から嫌悪感へ、さらに憎悪に発展していきます。人類の歴史を見ても、人種や宗教、文化や言語など、自分たちとは違う人たちをパージ(追放)してきました。しかし、人間は社会的な動物なので、この感情が移行するうねりをどのような場であっても抑制する必要があります。


あなたとあなたの意見は別の話。人格と発言を混同しないで相手に合わす


── 会社や組織のなかでも苦手意識や同調圧力は存在しています。では、身近な人間関係でこうした課題を克服するために私たちはどうすればよいのでしょうか?

五百田氏:ビジネスの場合、できる管理者は、あえて考えが違う人、同調者にとってはノイズのような発言をする人をチームに入れておきます。そうしないと新しい発想が生まれてこないし、方向性が間違っているときに指摘する人がいなくなるからです。こうすることでチーム内を刺激して、全体のクリエイティビティが高まっていきます。

つまり、異物のように感じても相手を認めることが個人や組織の力を高めていくわけです。当たり前のように感じますが、理解すること、認めることはかなり難しいことです。

そこでもうひとつ気にすべきことは、「You and your opinion are different」と言って「あなたとあなたの意見は別の話」という意識を持つことです。「◯◯さんとはいつも意見が対立する。考え方も合わないし、きっと嫌いなんだ」ではビジネスは前に進まず、人間関係もギクシャクするだけです。人格と発言を混ぜこぜにとらえないのは、大人のルールですね。

ただし、ここで紹介した2つのポイントを常に意識していれば、苦手な人とわかり合えるかというと、それはまた別問題です。認めること、理解することはできても、人としてわかり合うのは難しいでしょう。

そんなときは、適度に距離をおきながら苦手な人に合わすことです。「合わせてばかりでは本当の自分ではない」と思うかもしれませんが、仕事上の人間関係はプレイ(演技)でも構わないんです。

本当の自分や根幹にある自分、核となる自分をむやみに出さないことです。なぜなら、会社を辞めたくなるほど自分の深い部分が傷つくからです。上司に「おはようございます」と誰もが言います。敬語のように相手に合わせればいいわけです。

ソウルフルに自分をぶつけないで、相手に違和感を感じたら、単に自分とは違うということを理解して、できれば相手を認めて受け入れ、理想を言えばそれを面白がる。それが最善の策だと思っています。


心の中を見せられる人がいれば、それだけで充分


── 確かに、自分の根幹にある部分を揺さぶられるとカチンとなりますが、そうではない許容範囲内であれば、仕方がないと思えます。では最後に、苦手な人、そうではない人との人間関係を構築するためのコツがあれば教えてください。

五百田氏:たとえば、円の中心に本当の自分があったとします。そこで苦手な人たちと関わるとぶつかってしまうので、その外側の同心円上で関わり、相手を認めて理解することだけに務めます。できれば、さらにその外側の同心円上で仕事とは直接関係のない人たち、自分とは違う人たちと仲よくしてみることをおすすめします。多様性のある人付き合いの練習にもなりますからね。

そしてもうひとつの大きなポイントは、家族や親友、恋人などに、円の中心にある本来の自分を認めてもらうことです。「職場でこんなことがあった。あの人とは合わない気がする」とこぼしても、「そんなことは、放っておけばいいんだよ」と「ちゃんとあなたのことはとわかっているよ」と思ってくれる人がいるだけで、苦手な人を認めたり・理解したり・合わせたりすることができます。

逆に、自分を認めてくれる人がいないからといって「誰も自分をわかってくれない」と言ってしまっては、単なる駄々をこねている子どもなので、そんなときは心を許せる存在を探して、3つの同心円を描いてみてください。

 


五百田さんによれば、苦手意識は主観的で、多くの場合、自分を肯定する理屈をつけて、理解できる・理解できない、だから苦手なんだと結論付けているそうです。

しかし、苦手意識の「意識」の部分をポジティブにとらえて相手の意見や発言を認めるようにすれば、どれだけストレスがなくなるか、人間関係が改善されるかがわかったような気がしました。

さて、次回は「違うタイプの人との会話術」をテーマに、考え方や価値観の違う人たちとの会話を円滑にする方法を作家で心理カウンセラーの五百田さんにお話を聞きます。お楽しみに。


(香川博人)
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なるほど、なるほど。

今回の件で、敵が多いことも分かりましたけど、逆に自分のことを分かってくれる人も多いことが判明し、少し自分の意識が変わってきましたよ。

敵側だと思っていた人が案外と自分寄りだったり、その逆だったり…。

これからは開き直っていきたいと思いますよ、退職する日までは。