環境色彩デザインを考える人へ

長年の経験と実践の中から、色彩デザインに役立つ情報やアイデアを紹介して行きます。

条件からの色彩デザイン

2011-01-07 13:20:54 | 色彩デザインのアイデア
前回に続き、デジタルカメラを整理していて発見した写真から。こうしてたまに日付と共に振り返ると、その時気になっていること(検討物件との関連性)を考えながら、日々を過ごしている様子がわかります。

これは銀座のマロニエゲートのエスカレーター脇通路で見かけたものです。特徴あるカーペットタイルの図柄を生かしたデザインが印象的でした。落ち着いた低彩度のブラウンを基調としながらも、商業空間にふさわしい華やかさのある雰囲気です。500角というピースを組み合わせて使用する製品、という特徴を上手く生かしていると思いました。



こうした展開を見ると、空間における色彩設計というのは実に様々な要素を満足させなくてはいけないものなのだなと感じます。色彩設計の条件とも言える要素をバランスよく整えることを意識するために、またその思考のプロセスをクライアントに説明するために、かつては以下のような図を頻繁に使っていました。

【例:デザイン検討のバランスシート】



要素は対象毎により強調すべき要素が異なりますし、より多様になる場合もあります。例えば、複合施設と一業種の店舗なのでは自ずと目指す方向性が異なりますし、キーワードについても例えば企業性や環境性といった要素が加わったり、強化すべき点の比重が異なってきたりします。

私は建築や都市の色彩を考える時と同じく、インテリアについても基本的には“理屈で詰められるところまでは理屈で詰める”ことを考えて良いのでは、と思っています。ここで言う理屈とは条件、と置き換えても良いでしょう。理屈ぬきでいいものはいい、ということも無くはありませんが、それは例えば個人邸など、設計者とクライアントの関係が直に意思疎通を交わすことが可能な場合などに限られるのではないでしょうか。

もちろん、全ての条件を最高の状態で満足させることは困難です。しかし、どこかのバランスを強化するために劣ってしまう部分があれば、他の工夫で補うことを検証する。或いは、材料を見直して見る。そうした検討の行き来によって、バランスの具合を調整して行く作業はとても重要だと考えます。

このマロニエゲートの通路部分を見たとき、商業空間としての華やかさを保持しつつ、個々の店舗の個性や賑わいを阻害していない、という印象を持ちました。更に、歩行量の多い共用空間における防汚性(汚れの目立ちにくさ)といった観点で見ても、とてもバランスが良いなと感じました。

これは撮影当時、CLIMATの別スタッフが係わっていたとあるメーカーの“カーペットタイルの新柄・色デザイン”に協力するために撮った写真でした。
新しい製品を開発する際、どのような空間向けの製品か、そしてどのような使われ方が求められているのか。そのためのリサーチとして、カーペットタイルが使用されている様々な空間を散策していたことを思い出しました。