環境色彩デザインを考える人へ

長年の経験と実践の中から、色彩デザインに役立つ情報やアイデアを紹介して行きます。

インプットとアウトプットの行き来を通して

2011-08-30 17:35:18 | 対談・レクチャー
8月27日(土)、JLF(日本ランドスケープフォーラム)主催のランドスケープを語る会にご参加下さった皆様、暑い中お越し頂きありがとうございました。ランドスケープを学ぶ大学生から既に長く専門分野に携わられている方まで大変巾広い年齢層の方々にご参加頂き、後半はそれぞれのお立場から多様な質問が飛び交いました。色を測ることの意味から色が馴染む・映えるための仕掛けについて、更には行政の景観コントロールの状況や今後の展望に至るまで、大変多様な議論が展開できたと思います。本当にありがとうございました。

私の中では7月23日に浜松で行われた建築家と白について以降、GSDyサロンの素材と色彩、ランドスケープを語る、の3つの対談・レクチャーはシリーズとして捉えていたというか、全くの偶然ではあるものの、建築・土木デザイン・ランドスケープデザインと順序・タイミング良くそれぞれの専門の方と色彩の繋がりについてお話をさせて頂いた感があります。

著名な建築家の方等は毎週のように全国各地でレクチャーやワークショップを行っており、たかが3回程度で…と大げさに思われるかも知れません。ですがこのうちの2回のきっかけがTwitterであったことからもわかるように、社会的な認知度が未だ低い環境色彩デザインが他の分野と如何に係わりが深いものであるかを多くの方にお伝えすることが出来、本当に良い機会に恵まれたと思っています。

いずれの分野においても、環境色彩デザインが長い間“色でまちをつなぐ”というテーマを掲げてきたことから、専門の話をしながらも常にそれぞれの取り合いの部分や対峙する環境・空間を意識しながら話題を提供してきたつもりです。また、自身の性格もある程度影響していると思いますが、係わった仕事を“作品”として紹介することにいささか抵抗を感じており、自作を語るという形式ではなく、あくまで色の見方や見え方、在り方について等をご紹介することで、どの分野にも係わりのある色を“意識的に”捉えて頂きたいと考えて来ました。

私達(CLIMAT)はまた、色は現象であるという考え方を持っています。見るという行為の中に背景との関係性など、相対的な相互の作用の中で“色がそのように見えている状態”をつくり出すことがある部分まではコントロールが可能である、とも考えています。その判断には観察と経験が最も重要な資質であり、個人の嗜好や何となくといった感覚的な要素は(とりあえず)必要としないことを前提としています。
私達はまた、客観的な観測のために色のものさし(=マンセル表色系)を用い、色の数値化に拘りますが、マンセル値が絶対値でないことも十分に承知しています。数値を把握することによって色と色の関係を把握したりバランスを整えたりすることをし易くしているに過ぎません。

目の前にある色が“どのような状態で見えているか”を徹底的に分析し周辺との関係性を把握すること、こうした作業の後に具体的な計画をどのように進めて行くのか…。この点はまだどの対談・レクチャーでも掘り下げ切れていません。後のアンケート等で“結局、建築や土木における色が何なのかよくわからない”等のご意見を頂くこともあり、今後はより具体の方法論を提示して行くことが求められているのだと(勝手に)感じています。

正直、この夏の3つの対談・レクチャーにはこれまで溜めてきた全ての力と少しの勢いを必要としました。無事に終えた今、僅かな達成感の先には『環境色彩への理解を深めたり興味を持ったりした方に対し、次にどのようなボールを投げれば各人の具体の計画に生かしてもらえるか』という新たな課題があります。自身もその立場(対談やレクチャーに参加する)を考えるとき、特に会費を払う会であれば尚更、“今日インプットしたこの知識や思考をどうやってアウトプットに繋げようか、繋げられる点はどこか”ということを考えます。
話を聞いて面白かった・ためになったという感想だけでは単に色の知識を得た、に過ぎません。その知識を様々な場面で生かしよりより良い計画の実現に繋げて頂くことを心から願っています。

願ってはいるものの、きちんと活動として継続していくことも考えています。見聞きした情報は自身の言葉で話す(あるいは書く、描く)ことによって、自身の専門性を他者に伝わり易い表現で語ることができる、と感じますし、話したりアイデアを具体的な形にする段階で煮詰まったり思考が滞ってしまったりする時は、違う観点から色彩や素材にまつわる話を聞いたり、一見まったく関係の無いような事柄に触れたりすることなどから、自身の専門性に結び付けられる部分を探していくと、すっと風通しがよくなる場合が多くあります。

見聞きした情報や知識をどう生かすか、職能という清らかな水脈をいつも濁らせることのないよう、インプットしたものを色彩というフィルターを通してアウトプットし続けて行きたいと思っています。
その一つがこの『環境色彩デザインを考える人へ』です。

今回のレクチャーはJLFの運営委員をなさっている焔光景デザインの原田武敏さんにお誘い頂きました。Twitterで何度か会話を交わしたことがあるという顔見知り(?)程度から、Facebookに移行したことにより一気に相互の仕事に関する情報量が増え、色彩が何やら面白そうだという結論に至ったそうです。これもこうしたアウトプットのおかげ、と言えるでしょうか。
照明と色彩の関係についても、何度か会話を重ねる中で様々な発見があります。これを機に互いの仕事を色の観点から、照明の演出性等の観点から考えられるようになることも、自身にとっては大きな収穫です。

ちょっと申し訳ないなと思うのは知名度の低いスピーカーに目を付けてしまったばかりに、集客力にやや問題があったようで(苦笑)、実は直前まで定員の半分にも満たない状態だったとのこと。正直どうなる事かと思いましたが、運営委員の皆さんが色々な方にお声掛け下さったおかげで最終的には学生10名を含む26名もの方にご参加頂き、心からほっとしたことを記念に(?)記しておきます。
原田さん、本当に色々ありがとうございました!

【お知らせ】ランドスケープを語る会

2011-08-25 22:07:01 | 対談・レクチャー
8月27日(土)15:00~、JLF(日本ランドスケープフォーラム)主催のランドスケープを語る会にて、『自然が映える色・自然に馴染む色』というテーマでお話をさせて頂きます。

一応締め切りは本日ですが、まだ定員には少し余裕があるようですので(非会員でも参加可能です)ぜひご参加下さい。

ランドスケープの専門の方とは、普段の業務では住宅のお仕事でご一緒する機会が多くあります。特に建築との取り合いの部分について、多くの人の目に直接触れることを意識し、基本計画から実施・施工に至るまで、相互の関係性(=繋がり)を慎重に検証し調整を行っています。

先月の建築家と白についての対談、GSDyサロンでの素材と色彩から考える風景という対談に続き、今回はランドスケープをご専門とする方々と対話する機会に恵まれたわけですが、ランドスケープは植物も含め一段と素材(物質)そのものを扱う職能だと感じています。近年、材料の多様化や新しい建材や仕上げ材の出現により、何を・どのように使うかという点に関しては相当なコーディネートの力を必要とするのでは、と思っています。

建材等の多様化という意味では建築も同様ですが、例えば風景という日本語にも置き換えられるランドスケープの抽象化を考えた時、建築家の解の様に全てを白く透明に・存在を消してゆく…という可能性はあり得るのだろうか、ということがふと気になり出しました。

環境色彩デザインの方法論で考えれば、その地のもの・現状・場が持つ要素を読み解き、再構築するということはごくスムーズに自然素材・素材色という思考に移行することが出来ると考えています。あるところまでは全く疑う余地はないと言える一方で、何を持って自然か、ということを考え出すと擬木等のいわゆるフェイクを善しとするか否か、更に新しい素材を用いた新しい表現の可能性は如何にして追求されるべきかということに還って来ます。どの分野においても“あるところからのその先”についての可能性は常に検証し続ける必要があるのだと思うのです。

今になり専門の方、或いはランドスケープを学ぶ学生の方にとっては、少し甘いテーマを挙げてしまったかなと後悔し始めているのですが(そんなの穏やかな色がイイに決まってるじゃん、と受け取られるかと…)、私がまだ知らないランドスケープの世界の可能性についても、何か色彩という切り口が展開のヒントとなるような話題をお伝え出来ればと考えています。

…さて、どうなりますことやら。

カラーシステムを構築するということ

2011-08-23 20:44:58 | 色彩指定のポイント
色彩計画を進める際、単体で1色のみを決めるということはあまりありません。戸建住宅であれば屋根・壁・サッシ・軒天・玄関扉等が主要な要素で、その他に雨樋・吸排気口等の各種設備や外構の床・フェンス・照明…。これが複合施設や集合住宅群になるとあっという間にA3の仕上表が5~6頁に増えて行きます。

建材の中には色の指定・調合が可能なものと、既成色の範囲の中からしか選択の余地がない場合など様々です。ここにインテリアが加わるとマテリアルの数が一気に増大します。ですから始めにおおよその部材の仕様や種類、色の調整の可否を把握しておかないと、どうしても後で“色が合わない”といった事態になりがちです。

私たちは具体的な部位毎の色選定に入る前に、基調色だけでも良いのですが、明度・彩度の上限・下限を『大体』決めて、配色検討作業をシステム化する、ということを行っています。例えば複数の住棟に複数の色相(色合い)を展開する場合、形態の陰影等も加味しながら部分毎に色を選定することはちょっとした色のずれを引き起こしやすくあります。端から色を一つずつ決めて行くのではなく、全体の使用色を先にリストアップしておくのです。

【多色相を使用したカラーシステムの一例】


この一覧のように、縦列は色相を揃えた濃淡のグラデーション、横列は使用する部位を想定した(外壁のベースカラー、メインの部分等)トーン(色の強さ)調和が整った状態をつくり、そこから各部位へ色を“割り振って”行きます。

このカラーシステムは初めから完璧なシステムである必要はありません。色相や濃淡のバランスが部位毎にずれてしまわないための目安であり、色相の間隔や濃淡の対比の程度にまず当たりをつけ、空間に配したり実際の建材見本に置き換えたりしながら、マテリアルボードや着彩立面図を作成して行きます。実施の段階ではこのようなカラーシステムが現場でも役に立ちますから、最終版が報告書や指示書として実物見本と共に納品します。

塗装は最も融通が効く仕上げ材であり(発注・納品等の日数を加味しなければなりませんが)、日本塗料工業会の色番号等で指定をすると1週間前後で塗り板見本(A4サイズ程度)を入手することができます。メーカーのサンプル帳も実際の塗装見本が添付されている場合も多くありますが、台紙に貼られた見本帳で使用色を選定することは他の部材との比較もしにくく、また色彩の面積効果の影響もあり、空間に展開された際のイメージを掴むのはとても困難です。

未だに、カラーシステムと実際の計画案がほぼ一致し完成、と思っても、そこから見本を手配する時には必ず『ズバリと前後』の色を作成してもらいます。ズバリ、は色見本(指定色)そのまま、の意味です。テクスチャーや艶感により色の見え方は色票とは異なりますが、マンセル表色系は“色のものさし”ですから、基準・中心となる色を明確にする(設定する)必要があります。

ズバリ色をゼロとした場合、前というのはやや明度上げた(明るく)状態、後というのはやや明度を下げた(暗くした)状態です。近年ではどの塗料メーカーに指示をしても、この『ズバリと前後』と言えば良い感じに幅のある濃・中・淡3色の見本が出来上がってきます。状況に応じ、明度と共に彩度のプラス・マイナスが必要な場合もあり、都度一定の色幅の見本を用意し、最終決定色の選定を行います。

【ズバリと前後の例】


外装の色を決めるのに(慣れたとは言え)これだけの手間がかかりますから、インテリアでフロア毎に色相を変える・部位毎にトーンを揃える、というのはとても体力のいる作業です。1つの色相だけの場合は濃淡の変化のみですから、多少強弱に過不足があっても不調和な印象を与えることはあまりありませんが、複数の色相を用いる場合はトーン(色の強さ・調子)や僅かな色相のズレが不調和でバランスの悪い印象を与えやすくなります。

最終的には実際に使用する建材をある程度の大きさで用意し、室内なら計画と同様の照明下で、外観なら自然光で確認を行い、部材同士の関係性において判定をすることが重要です。その検証にもカラーシステム(使用色・検討中の色の一覧表)は大いに役に立ちます。特に近年、着彩立面図はインクジェットプリンターで出力をしていますので、建材の見本を手配するまでの作業中には全体の構成や濃淡の対比を一目で確認できるツールが以前にも増して役立っています。

穏やかな色のビニールシート改め、YR(ポリエチレン)シートのこと

2011-08-18 19:01:10 | 日々のこと
これまで何の疑いもなく、『ビニールシート』という呼び方を連呼してきましたが、色々相談をさせて頂いているメーカーの方から、『ビニールではなくPE(ポリエチレン)なのですよ』というメールを頂きました。化学オンチな私は何が違うのかさっぱりでしたので、詳しく伺ってみると、本当にこれまでビニールと言っていて申し訳ありません…という気持ちでいっぱいになってしまいました。

これまでの誤りを訂正させて頂くと共に、伺った詳しい説明や製品の特徴を以下に抜粋させて頂きます。

まずポリエチレンという素材について。ビニールシートでよくある素材は塩ビです。これは燃やすと有害ガスが出ます。対してポリエチレンは燃やしても二酸化炭素と水になるだけで無害です。ここが大きいと思います。
また、一般的なブルーシートの構造ですが、よく見ると平織りのクロスの両面にラミネートをしているのが分かると思います。

只の雨よけであればビニール袋やフィルムの様な仕様で良いのですが、これだと引っ張り強度や引裂き強度が出ません。また、平織りだけだと水が止まりません。つまり強度と防水という両方の機能を満たしているという構造です。

加えて、平織りの糸を作るときに一定の温度をかけて伸ばします。この工程を延伸と言いますが、これによって分子の構造が一定の方向を向いて、糸の引っ張り強度がさらに強くなります。その糸で平織りをするので、タテ・ヨコ方向の引っ張りに強くなるという訳です。

実際、ここが製造上の肝心な部分で、実は糸を引いて織機でギッタンバッタンと平織りをするのにもの凄く時間がかかります(2か月単位)。
これは溶かした樹脂を押し出してフィルムを作るのとは大違いのスピードの遅さで、非常に生産効率としては悪いのですが、そこは上記の通り、要求される品質を考えたときには譲れない部分なのです。

また、糸の太さ、織りの密度、ラミネートの厚さという3つの要素でシートの性格が変わります。例えば太い糸でザックリ編んだ布と、細い糸で密に編んだ布とは風合いが全然違いますよね。あのイメージです。

YRシートは#3000という規格です。この#3000というのは、3.6x5.4mの大きさのシートを作った時に3000gという厚さの基準です。一般的に販売されているシートは#1000台のものも少なくなく、これだけでもしっかり感のある製品だという事が分かって頂けると思います。

また、このYRシートのベースになるクロスの打込みは10x10。これは1インチ四方辺り、タテ・ヨコ共に10本の糸を編みこんでいるという事です。これに両面40ミクロンのラミネートをしてYRシートは仕上げられています。

…というご説明でした。一般的なブルーシートよりもやや割高である理由なども大変よくわかり、優れた強度や耐久性など、改めて色々な展開の可能性がある製品だと思いました。色のことばかりに捉われて、製品そのものの物質的な特性の情報が疎かになってしまっていたこと、本当に反省することしきりです。

ですがこうして今回、機能が優れていて耐久性があり、なお且つ使い勝手の良い色であるということがわかり、より自信を持って色々な方に紹介できること、素直に嬉しく思います。

YR(わいあーる)シートは現在、一般的な流通に向けメーカーの方々の努力が続けられています。ユーザーである私たち(CLIMATスタッフをはじめ、景観配慮への意識をお持ちで、穏やかな風景を育みたいと思っている市民や専門家の方々)はいくつかの使用事例をご紹介し、多くのニーズがあることをお伝えしています。近い将来、広く詳細をご紹介できる日が来ることを心から願っています。

測色011-成城・交差点の家

2011-08-11 21:50:02 | 建築・工作物・都市の色
大学二年の時に引っ越した都合から、通学の際小田急線の成城学園前駅を利用するようになりました。駅まではバス利用、終点のひとつ前の交差点に樹木の緑と外壁の関係がとても印象的に見える住宅がありました。

【早川邦彦氏設計・成城交差点の家】


1983年に竣工した住宅は、並びにバス停前の家があり、交差点の家との間にはBETWEEN(まさに二つの間)という名の住宅があります。3軒の連なりがまちなみとしての連続性を構築しており、当時はまだ建築に深く興味を持っていませんでしたが、雰囲気のあるまとまりに惹かれた記憶があります。

建築家が建てた住宅である、と知ることになるのは大学を卒業しこの仕事を始めて数年が経ってからのことでした。通勤には別の路線の方が便利だったため、成城学園前駅を滅多に利用しなくなり、この住宅のこともしばらく忘れていました。

その後1991年に熊本アートポリスを訪問した際、早川氏が設計した熊本県営団地Aの色使いがとても印象的で、氏について色々調べたところ成城の家の他、ラビリンスやステップスといった一連の豊かな色使いの集合住宅と繋がり、色の選び方等にとても興味を持ちました。

INAX出版発行の“色彩建築-モダニズムとフォークロア”という著書の中で、早川氏は『風景としての色彩』というテーマで自作について語っていますが、その中でいくつか印象的な言葉があります。

『ぼくは建築を志す前、もともと画家になろうと思っていたんです。小学校、中学校と絵をかくが好きだった。大学の卒業設計のときには、ロットリングが出始めていたころですが、そのロットリングは当時色数が限られていたのと、もうカラス口で描くことはないだろうという理由から、インクの入れ替えがらくなカラス口でかなりの色数を図面に入れていましたね。考えてみると、そのころから色彩に興味があったといえるわけです。』

駐車場のシャッター部分に配されたアクセントカラーは4.0BG 3.8/2.0程度。ベースのコンクリート打ち放しは5.0Y 7.0/0.3程度でした。明度3.8・彩度2.0程度の寒色系の色彩は、ごく低彩度の明るいベースカラーと組み合わせると微妙にくすんだような印象を与えつつも存在感のある見え方をしています。

ベースとアクセントの明度対比は明確ですが、彩度は2.0程度ですから、ともすると充分に基調色の範囲です。濃淡と僅かな色みのコントロールにより、基調であるコンクリートの素材感や色の雰囲気を損なうことなく、それでいて印象的なファサードがつくり出されていると感じます。早川氏が画家を目指したこともあるほど、色彩の扱いを不得手とせず、微細なコントロールを苦にはせず、むしろ楽しんでいたのではないか、と推測してしまいます。

アクセントを選ぶ、というと殆どの方が“気負って”目立つ色を選定しがちであり、こうした深みのある渋い色は紙の色票で見るととても暗く濃い色に見えてしまうため、用いるのに勇気がいる、と考えられている節があるように思います。早川氏はまた同著の中でメインテナンスに対する認識を問われた時、

『ブルー系統は外部に使うと褪色が早いですね。そういうことを考慮しないといけない。ただ私たち設計側としては、微妙な色を選んだらそれが絶対に変わってほしくないということではなくて、時間とともに周りも風化していくわけですから、壁面の色も退化していくのはやむを得ないと思うわけです。』

確か1998年頃にこの著書に出会っていますが、このメインテナンスの部分には特に共感した記憶があります。建築や工作物の色彩も周辺環境と同じように歳を取る。最近ようやく自身の言葉で語ることが出来るようになってきた事項は、実はこの十数年ずっと考え続けて来たことなのです。