今回は自治体の景観計画に定められている、色彩基準の考え方について、事例を交えて検証してみます。
専門用語続出で、やや難しい内容ですが…。
例えば都内のある区では、届出対象となる建築物の外壁各面の4/5(=基調色)に対し、
以下の範囲(一部抜粋)を使用可能範囲、としています。
●色相5.0YR~5.0Yの場合
●明度4以上8.5未満の場合 彩度6以下
●明度8.5以上の場合 彩度2以下
つまり、極端に暗い低明度色を大面積で展開しないよう、誘導を図っているのです。
実際に外装基調色の色彩調査を様々な都市で行っても、明度3以下の低明度色と言うのは
全体の1割あるかないか、という割合です。
自ずと、景観の中で『著しく目立ちやすい色彩』であることは想像がつくのではないでしょうか。
ちなみに、外壁各面の1/5(=2割程度)には制限はありませんから、
上記の範囲外の色彩は面積を限定して使用することが可能です。
基準は数値化しなければならないため、様々な規模や用途の対象物にきめ細かく
対応できるようなルールづくりは困難です。
ですから、自治体の基準はあくまでネガティブチェック(著しく景観を阻害する要因を避けるため)
であり、基準ギリギリの色彩や特異な形態・意匠を持つ者に対しては、
景観としての良し悪しを審議し検証する必要があると考えています。
ですが、それも一筋縄では行かないのが現状です。
例えば、この建物の外装色はN2.0。
このような建物の場合、開口部(ガラス面)は面積に含まれませんから、
基準範囲外の色彩、と判断されます。
(これも適用外の素材、など色々あってやや複雑です)
さて、ここで今一度考えたいのは。
『この建物の外観が景観を阻害する要因として問題視されるのであろうか?』
という点です。
少し引いて、街並みというレベルで見てみましょう。
この位置から見ると、建物高さ・壁面線が揃っているので、突出している、という感じはしません。
ところが、反対方向から見ると…。
隣にある飲食店が平屋であるため、妻面が大きく露出し、目立つ印象となっています。
低明度色はまた、背景となる明るい空の色と対比が強く、
歩行者にとっては圧迫感を与えやすい色彩でもあります。
これはあくまで事例ですので、この建物が景観の問題になっている、ということではありません。
念のため。
私自身も、『現行の基準に当てはめると確かに範囲外の色彩となるが、
景観の阻害要因とまでは言い切れない』と思っています。
これが、景観計画における色彩基準の運用の難しいところです。
基準内の色彩を使用していても、周辺から突出してしまっている例もあります。
その逆で、基準外の色彩だが、周辺との調和は(形態・意匠も含め)形成されている例も
もちろん存在します。
ルールがあるわけですから、まずはその基準に添っているか否か、は正しく判定しなくてはなりません。
ですが、景観は色彩だけで成り立っている訳ではなく、様々な要素を総合的に検証することが一番、
重要であると考えています。
届出を行う事業者・設計者に対し、指導を行う行政の担当者は、本当に大変な業務を担っています。
ですから、建築や都市計画・緑化、さらには色彩の専門家を召集し、
審議会やアドバイザー会議等の制度を活用することにより、そもそもの景観計画の意図や
まちの将来像等を読み解きながら、あるべき姿を模索し有効な策を提示する。
これが、様々な自治体で試みられている『景観計画の運用』の実情であると言えます。
この件はとてもひとつのコラムでは語りきれません…。
今後事例を交えながら、出来るだけ具体的な解決策や改善例、等を紹介していきたいと思います。
参考:東京都景観色彩ガイドライン
専門用語続出で、やや難しい内容ですが…。
例えば都内のある区では、届出対象となる建築物の外壁各面の4/5(=基調色)に対し、
以下の範囲(一部抜粋)を使用可能範囲、としています。
●色相5.0YR~5.0Yの場合
●明度4以上8.5未満の場合 彩度6以下
●明度8.5以上の場合 彩度2以下
つまり、極端に暗い低明度色を大面積で展開しないよう、誘導を図っているのです。
実際に外装基調色の色彩調査を様々な都市で行っても、明度3以下の低明度色と言うのは
全体の1割あるかないか、という割合です。
自ずと、景観の中で『著しく目立ちやすい色彩』であることは想像がつくのではないでしょうか。
ちなみに、外壁各面の1/5(=2割程度)には制限はありませんから、
上記の範囲外の色彩は面積を限定して使用することが可能です。
基準は数値化しなければならないため、様々な規模や用途の対象物にきめ細かく
対応できるようなルールづくりは困難です。
ですから、自治体の基準はあくまでネガティブチェック(著しく景観を阻害する要因を避けるため)
であり、基準ギリギリの色彩や特異な形態・意匠を持つ者に対しては、
景観としての良し悪しを審議し検証する必要があると考えています。
ですが、それも一筋縄では行かないのが現状です。
例えば、この建物の外装色はN2.0。
このような建物の場合、開口部(ガラス面)は面積に含まれませんから、
基準範囲外の色彩、と判断されます。
(これも適用外の素材、など色々あってやや複雑です)
さて、ここで今一度考えたいのは。
『この建物の外観が景観を阻害する要因として問題視されるのであろうか?』
という点です。
少し引いて、街並みというレベルで見てみましょう。
この位置から見ると、建物高さ・壁面線が揃っているので、突出している、という感じはしません。
ところが、反対方向から見ると…。
隣にある飲食店が平屋であるため、妻面が大きく露出し、目立つ印象となっています。
低明度色はまた、背景となる明るい空の色と対比が強く、
歩行者にとっては圧迫感を与えやすい色彩でもあります。
これはあくまで事例ですので、この建物が景観の問題になっている、ということではありません。
念のため。
私自身も、『現行の基準に当てはめると確かに範囲外の色彩となるが、
景観の阻害要因とまでは言い切れない』と思っています。
これが、景観計画における色彩基準の運用の難しいところです。
基準内の色彩を使用していても、周辺から突出してしまっている例もあります。
その逆で、基準外の色彩だが、周辺との調和は(形態・意匠も含め)形成されている例も
もちろん存在します。
ルールがあるわけですから、まずはその基準に添っているか否か、は正しく判定しなくてはなりません。
ですが、景観は色彩だけで成り立っている訳ではなく、様々な要素を総合的に検証することが一番、
重要であると考えています。
届出を行う事業者・設計者に対し、指導を行う行政の担当者は、本当に大変な業務を担っています。
ですから、建築や都市計画・緑化、さらには色彩の専門家を召集し、
審議会やアドバイザー会議等の制度を活用することにより、そもそもの景観計画の意図や
まちの将来像等を読み解きながら、あるべき姿を模索し有効な策を提示する。
これが、様々な自治体で試みられている『景観計画の運用』の実情であると言えます。
この件はとてもひとつのコラムでは語りきれません…。
今後事例を交えながら、出来るだけ具体的な解決策や改善例、等を紹介していきたいと思います。
参考:東京都景観色彩ガイドライン