環境色彩デザインを考える人へ

長年の経験と実践の中から、色彩デザインに役立つ情報やアイデアを紹介して行きます。

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

色相対比によるアクセントカラーの見え方

2010-12-28 17:00:06 | 色彩指定のポイント
会社の近く、代官山にル・コルドンブルーというフランスの料理学校の日本校があります。煉瓦の外壁と、深いブルーのエントランス・サッシ、ブルーと白のストライプのオーニング。この外観だけ見ると、パリの街角と見間違いそうな(パリに行ったことはありませんが…)雰囲気です。



ホームページを見るとよくわかるのですが、ロゴに使用されているブルーは深みがありつつもしっかりと色味を感じる色です。白との対比が明快で、文字や紋章がロゴ・マークとして一体的に認識できる、洗練されたデザインだと思います。

基調である煉瓦は、2.5R(レッド)前後です。それに対してアクセントのB(ブルー)系は寒色系であり、対比の強い色相です。調和の基本的な考え方として挙げている『色相調和型の配色』とは異なる組み合わせです。

ですがこのブルーは外装色から突出しすぎることなく、馴染んでいます。明度・彩度をかなり低く抑えており、アクセントして機能しつつもあくまで建物の一部、としてデザインされているからだと考えます。

ブルー系のアクセントの明度・彩度のバリエーションを検証してみました。



例えば、左側の配色の場合。『明るい色は暗い色よりも手前に進出して見える』ことが良くわかります。アクセント性を強調しすぎると基調色よりも“目立ちすぎる”ことが一目瞭然ではないでしょうか。一方、右のように彩度をかなり下げても(彩度1程度以下)、基調色のR系との対比により“単色の時よりも青味を感じる状況に”なります。

イメージカラー・シンボルカラーを建築外装に展開する際は、このように外装色との対比によって、見せ方の度合いを慎重に検証する必要があります。色そのものを選定するのではなく、必ず影響される周囲との関係性の中での“見え方”を詰めて行く。
色彩設計とは、常にそのような作業の繰り返し、であると考えています。
コメント

建築の色彩設計

2010-12-24 19:00:49 | 書籍紹介
少し古い書籍になりますが、『建築の色彩設計(乾正雄著・鹿島出版会刊)』について。
『本書は建築色彩学の教科書、また建築の色彩設計のための参考書を意図するものである』と、前書きにあります。1976年に発行されており、私は入社して間もない頃、確か1993年くらいに読んだ記憶があります。

前書きには更に、『若い建築学生はしばしば色彩という分野に興味を持つ。しかし現在その興味に答える建築の建築学科に専門家がほとんどいないし、その結果として建築色彩の本がほとんどない。』とあります。

それから30年以上が経過した現在でも、建築やアーバンデザインの分野に比べると建築における色彩関連の出版物は圧倒的に少なく、状況はさほど変わっていないようにも思います。



このような書籍を参考書と考えるとき、時代背景というのも大きな意味を持つと思います。細かなデータを用いた内容は、当時随分と理論的であると感じたものですが、その後の30年における建築やインテリアの空間そのものや建材の変化と照らし合わせると、やはりある種の相違は感じずにはいられません。

そうした要素を差し引いても、この書籍に書かれている内容は現在でも大変参考になると思っています。
項目を挙げてみます。

・色彩の体系
・色彩の効果
・色彩調和
・光源の色と演色性
・色彩調節
・建築の色彩
・色彩設計法

何より、始めに色彩の数量化の必要性を説き、色彩の効果や調和のことについて記述されている点に大変興味を持ちました。後半では特に色彩設計法の部分で、『色彩設計の手順』が大変具体的に紹介されています。整ったカラーシステムの中から色を選び、整理していくといったまさに方法論がとても具体的に明記されています。
このプロセスの項については、後に自分なりのアレンジを加えながら現在の方法論を確立してきた、とも言えます。

漠然とですが、もし私が書籍を発行するとしたら、この内容にデザインの視点やここ30年間のまちなみや建材の変化なども加え、より実践的な実用書のようなものにしたい、と考えています。
このblogはそのためのたたき台のつもりで、書き溜めています。

この書籍、ここ半年ほど読み返したいなと思い探していたのですが中々発見できずにいたところ。先日の事務所内の大掃除により、見事発掘(?)に至りました。どうも大事にしまい込み過ぎていたようです。
年末年始、久しぶりに読み返してみようと思います。
コメント

カラーイメージの扱い方

2010-12-24 16:05:22 | 色彩指定のポイント
色はイメージを持っています。実際、色彩設計の際もそのイメージを活用することが多くあります。概ね一つの色が持っているイメージは多くの人が共通の印象を持つことが出来るため、デザインのコンセプトをわかりやすく明確に表現するために役に立つ要素であると考えています。

ところが、色のイメージをそのまま、建築や工作物に展開すると様々な問題が発生します。まず、イメージとしての色は鮮やかな色彩であることが多く、再現する建材が限定されるという問題。次に、建築や工作物など、不動の大面積を持つ壁面等に展開された時に元の色そのものが持っているイメージ通りに再現できない可能性が高い、ということがあります。さらに、建築や工作物は三次元空間に出現する立体であり、形態を伴って色が立ち上がる際、“かたちに色が馴染んでいない”という印象を与えやすい、等の問題があると考えています。

具体的な例をあげてみましょう。海辺のまちだから、さわやかなイメージを持つブルー。あるいは、多くの人に親しまれるよう、やさしく暖かなイメージを持つピンク…。
(※ちなみに、ピンクというのは通称の色名では一般的ですが、マンセル表色系の色相表記にはありません。通称のピンクはマンセル値で表すとR(レッド)系かRP(レッドパープル)系になります)

【イメージカラーをダイレクトに展開した例】


この図を見て、“まさかこんな色は選ばない”と思う方は、以下はお読みにならなくても大丈夫です(笑。形態や規模、意匠にふさわしい色彩を選定することが一体どのようなことなのか、十分な経験がおありなのだと思います。

建築や工作物の設計において設計者は、もちろん意匠性だけでなく様々な条件や要素を総合的に検証し、それらを出来るだけ高いレベルで満足させることを目指すのではないか、と考えています。そのため、ある条件下では特定のイメージそのままの色は主張が強すぎ、全体の見え方のバランスを崩す要因となりかねません。逆に外観の色というのはそれくらい見え方を決定づける重要な要素だと言える、とも思います。

色彩選定のプロセスとしては、コンセプトを実現するための色彩について、キーワード等かふさわしいカラーイメージを抽出する、という作業があります。環境色彩計画で重要なのは、このイメージとしての色を“建築や工作物にふさわしい色調に読み替える”という作業だと思います。

それは設計における様々な条件、意匠性・美観性の他、機能性・安全性・親和性・融和性。さらに、永続性・耐久性・耐性候・施工性…。ざっと挙げるだけでもこれだけ出てきます。
ですから、イメージとしての色彩を展開した際、他の様々な条件の満足度がどのように変化するか、ということを総合的に検証する必要があります。

色彩基準の運用が広まりつつある現在でも、規模の小さな戸建住宅はその適用外になる場合が殆どです。果たして、これらが個人の好きな色、あるいは安易なイメージの押しつけで良いものなのだろうか、ということを考え続けています。

このblogの中でも度々書いていますが、色の見え方は関係性により決定づけられます。ですから、単体の色の善し悪しを評価するということは出来る限りしないよう心がけています。先に挙げたブルーやピンクの外装色は、様々な条件を満たすものであれば、もちろん出現の可能性はありますし、ふさわしいか否かという判断は、常に計画個々の状況の中で詳細な検証の基に進めて行くことが重要であると考えています。

その際、建築や工作物の慣用色という観点や形態にふさわしい配色、さらに全体の面積における色相・明度・彩度の適切なバランス。そして遠景・中景・近景という視点場の変化における色彩の見え方等にも、十分な配慮が必要です。
安易に色のイメージに頼り、立体や空間の特性を表現すること自体が目的であってはならない、と思います。
コメント

色彩決定のプロセス その2

2010-12-19 16:07:28 | 色彩指定のポイント
先日、白い住宅の着彩図をつくってみて、まあこれはこれで可能性はあるなあ、等と考えています。
通常の業務ではある部分はセオリー通りに、計画を考えている節もあるように感じる場合もあり、そのような時は再度、その場にあるべき姿というのを様々な条件から再検証していきます。

但し、建築や工作物の色彩をデザイン的な要素だけで決定づける事は、まず行いません。それがこの仕事を“環境色彩デザイン”と称しているもっとも根源の部分です。
例えば、外観の白(特に塗装における)を避ける理由は、以下のような点が挙げられます。

●汚れが目立ちやすく、長い時間の経過の中で粗雑な印象を与えやすい。
●高明度の白は進出色であり、環境の中で目立ちやすい(=対比が強調されやすい)色調である。

汚れについては、建築設計上の様々な工夫や配慮により、ある程度は軽減出来ることは理解しています。また、塗料でも自浄性のある製品や、フッ素樹脂などを用いた耐久性の良い塗料なども次々に開発されていますから、仕上材の選定において十分な配慮が必要であることは言うまでもありません。

それでも屋外環境の色彩選定の際、『汚れにくい、あるいは汚れの目立ちにくい色を選定する』という視点が、まずあってしかるべきなのではないか、と考えています。
もちろん、私も形態の特性に合わせ、高明度の白を用いる場合はあります。その際に留意しているのが、“平滑で面積の大きな部分での使用はなるべく避ける”ということです。長く、竣工当時の見え方を維持するための工夫は、色彩においても必要だと思います。

また、機能上の理由から、高明度色がそぐわないという場合もあります。例えば屋根材。特に傾斜屋根の場合、高明度色は反射により周囲にまぶしさを与えてしまいますし、雨風をまともに受け止めますから、汚れや退色も目立ちやすくなります。



ごく一般的に、外装に白を用いる理由として、意匠的にはモダンな印象に見せるためという理由が大きいでしょうか。ならば、その目的を叶えるためのモダンな印象を与える色使い(配色)を考えてみようと思います。

上図は基調となる面積の大きな部分に、明度6程度のグレイを用いました。屋根は一般的な住宅に用いられるコロニアルの中から、既製色のグレイを選定しています。屋根・壁が白~グレイの濃淡で構成されますので、汚れにくさにも対応しつつ、全体の意匠性にも十分な配慮を行うことが出来るのではないでしょうか。

次に、完全な彩度0のニュートラルが、周辺との関係性において適切か、という問題があります。例えばよく『コンクリート色=グレイ』と言われますが、実際に打ち放しのコンクリート等を測色してみると、ほんのわずかに黄味を帯びていることがほとんどです。自然石のグレイ等も一見ニュートラルに見えますが、実際には彩度0.2程度のごくわずかではあっても、色味を持っているのです。



特に、建物の周辺に自然の緑がある場合、このわずかな彩度を持つ色というのが周辺環境との馴染みを良くする『隠し味』のような役割を持っている、と考えています。色彩は様々にカテゴライズすることが出来ます。例えば、暖色系、寒色系、ニュートラル系というくくり。ですが、建築や工作物に展開する色彩は、そのような大雑把なくくりでは解くことはできません。自然景観が持つ多様な色彩世界のように、微妙で繊細であり、様々な他の要素に影響を受けながら見え方が決定づけられます。

外装色はこのように、様々な条件というフィルターを何層にもかけながら、採用色(=実際に使用する材料に置き換えたもの)の決定に至ります。その状況化での色の見え方をどれだけ丁寧に検証し、機能性・耐久性・意匠性・美観性…。それぞれの条件を総合的に満足させるために、色彩計画は設計の初期段階から組み込まれることが重要だと考えています。公共の場に出現する建築・工作物の外観については、『様々な条件に十分な配慮が行われいること』を強く意識しています。

カタチだけでも、色だけでも、もちろん用途の特性を満足させればいい、というわけではなく。バランスをとりながら、強化すべき点や引き算する点を見極めることに、力を注いでいます。
コメント

まずは同一色相で

2010-12-16 22:17:23 | 色彩指定のポイント
環境色彩デザインにおける色相調和型の配色。これは1棟の配色を検討する際の基本中の基本だと考えています。複数色を一つの色相(色合い)でまとめると、明度彩度の変化(=濃淡)になりますから、“全体の調和感が得られやすく”なります。

【10YR系の色相でまとめた配色】


ところが、いざ色を選ぶ段階になると、複数色を選ぶ=色々な色を『選ばなくてはいけない』と思う方が本当に多くいらっしゃいます。間違っているとかいないとか、或いは好ましいか好ましくないか…等の判断を超えて、“色彩的に不調和な印象”になってしまっている例は実際にも多く見受けられます。

【基調色と補助色の色相がずれている例】


上図の基調色、補助色はいずれも暖色系の低彩度色ですし、明度差も適度に取れていますから、問題ないといえば無いのかも知れません。ところが、色彩は周辺或いは背景にある色彩と相対的な関係にあり、影響を受けるという特性を持っているため、隣あう色彩の色み(色相)に影響され、単色で見た時よりも対比が強調されて見える場合があります。

この場合はY系の基調色の黄みと、YR系の補助色の赤みがそれぞれ強調され、微妙に不調和な印象を与えてしまうのです。

配色とは2色以上を用いた構成を示しますが、“調和ある配色”を考えるとき、そこには何らかの秩序(ルール)が必要になります。色相が揃っている、トーン(色の強さ)が揃っている、等々。

単体で、例えば色見本帳やカラーカードで見た際に美しいと感じる色を、適当に組み合わせて色彩調和が完成するかというと、それは誤りだと思います。例え美しいと感じてもそれは単なる偶然であり、配色調和の何らかの型(タイプ)に必ず当てはめることが出来るはずです。

色を選ぶとき、色票だけ眺めているとつい“色々な色”に手が伸びがちです。色々な色を使わなくてはならない、というちょっとした強迫観念のようなものがあるのかも知れません。色を選定する際は、例えば住宅の場合は部位毎の面積や素材、更に形態との関係等を考慮しながら、『カラーシステムを構築する』という意識が必要だと考えています。都市や建築・工作物の色彩を選定する際にはまずに色彩的な調和感、という観点が不可欠である、とも思います。

そしておまけ。
…全部白、だとこんな感じ。いかがですか?もちろん、ありえなくは無いです。

コメント