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未来組

宝塚の舞台、DVD、SKYSTAGEを観た感想と、最近はカメラに凝ってます。

エリザベートは深い

2007年06月09日 | エリザベート関連プチネタ
 宝塚でベルパラの次に人気の高い演目、エリザベート。歴代6人目のトートが生まれた。雪組が東京に来るのは6-7月なので、とても楽しみにしている。多くのファンが、御ひいきのスターや組の舞台を最高と絶賛していると思う。ベストなんて、決められませんよね。
 宝塚を見始めたのが最近なので、まだ一度も生の舞台を見ていない。全部DVD。だが、だからこそ先入観なく客観的に見比べられるのかもしれない。
 面白い題材である。誰が演じるか、どう解釈するかによって登場人物の肉付けは大きく異なり、その振幅は大きい。
 まずルキーニ。実在の人物ではあるが、この話は最初から最後までルキーニの妄想が生み出した世界だということを考えると、テロリストとしての実像に近付けるよりも、狂信者に近付けた方が正解だとわたしは思う。
 エリザベートは鳥のように、ジプシーのように、自由に生きたい、何からも誰からも束縛されず、魂ごと解放されたいという。人から理解されることを拒んだ孤独な魂。(現実の人物も、子供の教育と言いながら、結局は放ったらかしだった)これは常人には理解しがたい奇人変人のレベル。
 数奇な運命に翻弄された悲劇の人と好意的に解釈しなければ主人公足りえない。実像に近付けるか、丁寧に自分たち一般女性がたどりうる感情に近付けて造形するか・・・
 フランツ・ヨーゼフも、マザコン皇帝、名君、エリザベートの崇拝者の間で、どのあたりのスタンスで行くか、また、狙ったものが表現できているかどうかでも、印象が大きく異なる。
 そしてもちろんトート。黄泉の帝王なのに人間的感情がある。あまり人間的だと「人の命を奪って冷たく弄ぶ」死神になりえない。

わたしは宙組が、総合的に一番レベルが高かったと思う。 要は、役者がすべて、立っているだけでその人物に見える、はまっている、説得力があるのである。  
 姿月あさとのトート。歌唱力、華やかさ、所作の美しさ、人を黄泉の世界に引きづり込む死神でありながら、皇后への愛に苦しみ、「最後に踊るのはこの俺さ」と自信たっぷり、傲慢なまでに強引にエリザベートに迫るトートが完璧に表現できていた。
 好みの問題だが、ずっと手袋をはめていてくれたのも、人間とは違う、異界のものである感じが出てよかった。革命家たちとカフェで手を合わせるときに、その効果がよく出ていた。
 花總まりのエリザベートも、歌唱力は今一つだが、若いころのおてんばぶりから、気位の高さや氷のような冷たさも含めて、エリザベートになりきっていたと思う。
 和央ようかのフランツ・ヨーゼフも、本人にそのつもりはなかったかもしれないが、情けなさがよかった。
 この二人は、聞き分けのよさそうな娘役、知的で包容力のありそうな男役の組み合わせだと、お姑さんともうまくやりそうで、悲劇にならない。
 湖月わたるのルキーニ。長髪やあごひげ、だぶだぶで薄汚れた上着、いっちゃってる目、押さえつけておかないと危ない感じが最高。
 朝海ひかるのルドルフも、母親の愛に飢えている感じがよく出ていたと思う。「闇が広がる」「ハンガリー独立戦争」「死の舞」まで、ダンス、所作の美しさがいかんなく発揮されていた。
 陵あきののヴィンディッシュ嬢もよかった。彼女が狂気の真っただ中にいないと、エリザベートの「もし代われるなら代わってもいいのよ。わたしの孤独に耐えられるなら」というセリフが生きてこない。
 鈴奈沙也のマダム・ヴォルフも、♪マダム・ヴォルフのコレクシ~オ~ン♪という、ねちっこい歌い方が好き。
 出雲綾のゾフィーは、言うまでもなくすばらしい。ゾフィーがおっかなくないと、エリザベートがいじめられてかわいそうにみえない。
 唯一、?は夏河ゆらのマデレーヌかな?

もっとも、私の判断の根拠はDVDなので、DVDの出来も多少影響があるかもしれない。宙組版は、寄りと引きを使い分け、役者の演技が引き立っている。アングルも絶妙で無駄がない。舞台変換時のネタばれもない。つまり、隠れて移動しているのに見えてしまうというお粗末さがない。
 何度見ても飽きない、不思議な世界だ。2時間半で、40年くらいの人生をエリザベートをはじめとした高貴にして不器用な人々と一緒に駆け抜けたような気分になる。フィナーレでは、お疲れ様でした、がんばったね、と、歴史上の人物にも、役者にもエールを送りたくなる。

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