コール・ウェルカム

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続き:ぞうさん

2024年07月29日 | 曲目解説
●ぞうさん 作詞:まど・みちお 作曲:團伊玖磨 昭和27年
みなさんが大好きな、誰でも知っているこの曲は、研究しているかたも多いので、番外編をお送りします。

もともとこの詞は、まどが音感教育者で作曲も手掛ける酒田冨治から「保育用曲集」向けの作詞を依頼された(昭和26)ことでつくられたものでした。詞を受け取った酒田はすぐに作曲、二拍子、ニ長調、10小説のマーチ風の作品に仕上げました。この曲を見たまどの先輩詩人、佐藤義美(いぬのおまわりさんの作者)が「曲とあっていない」と感じ、一部を修正して(おはながながいね→おはながながいのね)NHKに持ち込みました。受け取ったNHKは作曲を團伊玖磨に依頼、現在広く親しまれている3拍子の作品が生まれました。(おかげおかげのぞうさん まど・みちお)團伊玖磨版が完成して放送されたのが昭和27年です。

最初のぞうさんはこんな曲でした。


この楽譜が掲載されている本がこちらです。(編集佐藤義美 あかね書房)


修正前の詞が載っています。


團伊玖磨はこの当時大きな賞を受賞し、その賞金で鎌倉に引っ越します。その新居でぞうさん、おつかいありさんなどを作曲したのだそうです。
これらの曲の、希望に満ちたしあわせそうな雰囲気は、そのまま作曲者の新たなことに挑戦していこうという若々しさとリンクしていますね。佐藤がNHKに持ち込んでくれて、ほんとうによかったです。(酒田版も、行進に適していそうな元気な曲ですが!)

この記事は、「別冊太陽」1993年7月号、国会図書館デジタル、その他を参考に作成しました。

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続き:証城寺の狸囃子(講談社絵本)

2024年07月28日 | 曲目解説
●証誠寺の狸囃子 作詞:野口雨情 作曲:中山晋平 大正13年
こちらの楽曲は2016年5月3日にすでにご紹介しておりますので、野口雨情が巻頭言を記している「童謡画集」講談社の絵本25(大日本雄弁会講談社 1937年 川上四郎画 定価35銭)という本をご紹介します(大日本雄弁会講談社は現講談社の旧社名です)。


以下巻頭言引用
心を正しく美しくする「童謡画集」 野口雨情
皆さん方が、学校でもお家でも同じことですが、一心に勉強ばかりしてゐると、頭がぼんやりすることがあるでせう、そのときに好きな童謡を歌ってみると、いつのか間に心もハレバレとして頭の疲も治って来るでせう。頭の疲れたといふことは、頭の中にくたびれの素が出来たからです。このくたびれの素がなくなれば、つかれもすぐになほってしまふのです。童謡はくたびれの素をなほすお薬だといふことも出来ます。これはほんの一例ですが、これとなじやうに理屈では解らないが、いろいろの場合に皆さん方の心のお薬にもなります。また、姉さん達やお母さん方が、皆さんのほんの赤ちゃんの頃面白い歌を歌って眠らせてくれたことを覚えてゐますか、そらく覚えてはゐないでせうが、その歌は子守唄であったか童謡でせう、その歌の力によってすやすやと眠ることも出来たでせう。これなぞも確かに歌の徳といふことが出来ます。その他にも、私の経験によれば沢山の実例もありますが、いつかまたお話しする時もありませう。
この「童謡画集」は、講談社の編集局で、皆さん方によく歌はれてゐる童謡の中から、学校でもお家でもためになって誰にも親しみのあるやうにこしらへたのでありますから、絵もよく描かれてゐるし、絵を見ただけでも童謡の感じがよく解るやうに出来てゐます。この絵本さへあればますます童謡のよいところが解って、歌ふにも作るにもこれほど調法な本はないのであります。そればかりでなく、皆さんの清い心もますます清く、どこまでも優しく美しく導いてくれる絵本です。正しい心も勇ましい心も、優美な心から生まれて来るのですから、今の日本にとって学校でもお家でも忘れてはならないよい本であります。
引用終わり




狸囃子のページはこちらです。

この本は講談社が発行した子供向けの読み物シリーズの25冊目で、シリーズの他の巻には「東郷元帥」「漫画と頓智」「花咲爺」「豊臣秀吉」「宮本武蔵」など伝記から偉人伝、滑稽もの、昔話など様々なバリエーションがあるようです。
当25巻は「色刷り・1見開きに童画と歌詞」で28曲が紹介されている体裁ですが、さらに読み進めると、後半ページに更紙にスミ1色で「軍歌唱歌集」が印刷され、合計15曲の歌詞が掲載されています。なんとも時代が反映されており、雨情の巻頭言との乖離ぶりに心がしんとする思いです。


オリジナルの画像は国会図書館デジタルで確認できますので、興味のある方は検索してみてください。


巻末には「絵本カード」が掲載されていました。

ちなみに、川上画伯の絵とともに掲載されている歌は、以下の通りです。知らない歌もいくつかありました。
クツガナル
七ツノ子
ヘイタイサン
証城寺ノ狸囃子
コモリウタ(ネンネン ネッコジマノ ヤグラヲトメ・・・)
スズメノガッコウ
オ月サマイクツ
ユフヤケコヤケ
アメフリ
ジャンケンポンヨ
アノマチコノマチ
マリトトノサマ
ニンギャウ(私の人形はよい人形・・・)

オヤマノサル(オヤマノサルハマリガスキ・・・)
イヌ(ソトヘデルトキトンデキテ・・・)
ウサギノデンパウ(エッサッサエッサッサ ピョンピョコウサギガエッサッサ)
ニラメッコ
カタタタキ
アヲイ目のニンギャウ
てるてる坊主
アワテトコヤ
トホリャンセ
ヤマビコ コゾウサン
キシャ
ヒライタヒライタ
イケノコヒ
ホタルコイ


ぞうさんはまた稿を改めて。



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母と子 陽だまりのうた

2024年07月25日 | 曲目解説
ひさしぶりに曲目解説です。

9月のウェルカム・コンサートで演奏する「母と子 陽だまりのうた」(編曲:太田彌生)には、「おつかいありさんの回想」という副題がつけられています。曲は、おつかいありさん→めだかの学校→こじかのバンビ→証成寺の狸囃子→ぞうさん→ありさん+ぞうさんという順に、それぞれがダイナミックな転調、カノン、ピアノに旋律を任せる母音唱などで構築され、作品全体に「おつかいありさん」の旋律イメージが通底するといった構成になっています。
太田先生の作品はとてもチャレンジングですが、本作品もその例にもれず複雑なリズム、高度なソルフェージュが盛り込まれ、たいへんに取り組み甲斐がありました。

この中の「おつかいありさん」「めだかの学校」「証成寺の狸囃子」「ぞうさん」について、順番に短く解説いたします。

●おつかいありさん 作詞:関根榮一 作曲:團伊玖磨 昭和25年
この曲は、子どものうたの作詞で名高い関根榮一が初めて書いた作品で、NHKラジオ「幼児の時間」からの委嘱によるものでした。当時関根は24歳、私鉄の駅に勤めるサラリーマンでした。ある日、前職である東邦産業研究所(現サンケン電気株式会社、セレン整流器研究で創業)の嘱託職員で知遇のあった森義八郎という作曲家と偶然再会し、子ども向けの作詞をすすめらたといいます。森は、NHKにも紹介してくれたそうです。関根は工業高校出身のエンジニアだったようですが、森の目にはその才能が見えていたのでしょうね。
関根が詞を書き上げ、NHKに原稿を持参するとその場で即決。「作曲家は森先生にしますか?」と聞かれました。関根は「促音(引用者註:小さい‘っ’)が多くてリズミカルな歌詞なので…(中略)…なるべく私と同じ歳くらいの人にしてください」と伝えたのだそうです。担当者が、芥川也寸志、團伊玖磨、中田喜直の名前を挙げる中、「どなたでも」と答え、結果的に團伊玖磨がえらばれたとのこと。関根は「童謡のことも、芸大を出たての新進作曲家のことも、何もわからなかった」そうです。團とは翌年「かえるのうた」も共作しています。


昭和50年、丸木 俊の画で、関根の詩集「おつかいありさん」が出版されました。(国土社)同書は日本童謡賞・赤い鳥文学賞特別賞を受賞しました。

●めだかの学校 作詞:茶木 滋 作曲:中田喜直 昭和26年
この作品は、NHKの「うたのおけいこ」という番組の中で放送されました。歌い手の安西愛子が親しみを込めて「うたのおばさん」と呼ばれ、子どもにも母親にもたいへん愛された番組でした。
作詞家の茶木 滋は横須賀市出身、第四中学校(横須賀中学校、現在の横須賀高校)から、明治薬学専門学校 (旧制)に進学、製薬会社に勤めるかたわら、幼年時から親しんだ詩作に励みました。
ある日、その当時住んでいた小田原の荻窪用水近くを散歩していると、メダカが群れをなして泳いでいた、それが学校のようだった、というイメージがのこっており、NHKに作詞の依頼を受けた際にその印象がこの作品に結実したとのことです。一説には、息子の義夫君3歳が、何かに驚いて蜘蛛の子を散らすように泳ぎ去ったメダカを見て「大丈夫、もどってくるよ、だってメダカの学校だもん」と言ったとも伝えられます。
作曲は中田喜直。中田によれば、『「そっとのぞいてみてごらん」は最初一行しかなかったが、当時親しくしていた女性が、「そこのところをもう一度繰り返したほうがいいわよ」と言ったのでそうした、そうしてよかった』と、きれいな女性を好まれた中田先生らしいコメントをのこしていらっしゃいます。

横須賀の三笠公園(戦艦三笠の顕彰公園)近くに、歌碑があります。


安西愛子さん。おばさんとお呼びするには若々しい印象ですね!

長くなりましたので、狸囃子とぞうさんは別の機会に。

当記事は、別冊太陽 1993年7月号、ウィキペディア、国会図書館蔵書などを参考に作成いたしました。


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ウェルカム・コンサートのお知らせ

2024年07月23日 | お知らせ


コール・ウェルカムは、今年も「ウェルカム・コンサート」に参加します。
太田彌生先生の編曲による大曲「母と子 陽だまりのうた」、華やかな映画音楽「踊りあかそう」の2曲を演奏する予定です。

9月も末になれば、暑さもひと段落していることかと思います。お時間のある方はぜひお出かけください。

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