当ブログで以前お伝えした「桃華楽堂」の記事をご覧くださっている方が多いようですので、竣工当時の様子を少しお伝えします。
こちらが、「新建築」1966年4月号に掲載された竣工間もない「桃華楽堂」(当時の名称は「楽部音楽堂」)です。正対している面のモザイクは「鶴亀」。ホワイエの反対面に設けられた中庭側の外観です。
モザイク模様のボディ部分には亀甲文様、下部には青海波を思わせる扇面模様があしらわれています。そして、壁面の下部両側には和歌を刻んだ歌碑が建てられています。全部で5基の歌碑が配置されているとのことです。
この5首は、「皇后さまのお誕生月である春を讃え、ご長寿をことほぎ奉る」古歌から選ばれたもので、そのうちの一つである大伴家持のうた「はるのそのくれなゐにほふももの花 したてるみちにいてたつをとめ」は、皇后陛下(当時)の雅号「桃苑」がふくまれることから選ばれました。
寄りの写真です。
別の面「春夏秋冬」には、また違ったモザイクが施されています。
こちらが、ホワイエ側から見た外観です。植栽がまだ育っていなく、建物の様子がよくわかります。
上から、1階平面図、2階平面図、北側立面図、矩計図です。(上2点と下2点は方向が逆転していますのでお気を付けください)
両陛下は、正面入り口から入って階段を上り、2階の控室で落ち着かれたのちに2階客席の間を通って「玉座」に着席されるという導線でしょうか。
最近のお出まし動画などでは、舞台上手側の1階入り口から入られる様子が伝えられていますので、控室自体が別場所に移動したかもしれないですね。
どこを拝見しても、皇室に対しての深い尊崇の念を感じ取ることができる丁寧かつ真剣勝負な造作・意匠となっており、息詰まるような思いです。
こちらは、ホワイエバルコニーの下部ですが、西陣の帯地が使用されています。広幅ですので、丸帯ですね。
階段の手すり下垂れ壁(?)をぐるりと囲うような形で貼り回されています。
明り取りの丸窓は、コンクリート壁面を貫通する形で設けられ、さらに繊細な意匠がほどこされています。
舞台正面には玉座。
ホワイエの床は人造石研ぎ出し(テラゾー)です。美しいです。
ちなみに、設計当初モザイクのテーマが「鶴」であったらしいことに皇后陛下(当時)が「あれは鶴ですか?」(意訳)と尋ねられた由、その意味するところは「鶴は皇太子を象徴する意匠なので、このデザインはどうなのか」ということのようだった、それ以後「はばたく鶴の形象をはばたく白鳥とし」(今井)たとのことです。中庭に面する鶴亀は寿ぎの鶴で、その他の大きな白い鳥は白鳥ということですね。
ということで、この建築は今井兼次先生の手仕事への愛着と、時代が共有していた皇室への憧憬・尊崇の念が創り出した珠玉の作品です。中を見てみたい!
当記事制作にあたっては「新建築」1966年4月号、「今井兼次建築創作論」他を参考にさせていただきました。ありがとうございました。
こちらが、「新建築」1966年4月号に掲載された竣工間もない「桃華楽堂」(当時の名称は「楽部音楽堂」)です。正対している面のモザイクは「鶴亀」。ホワイエの反対面に設けられた中庭側の外観です。
モザイク模様のボディ部分には亀甲文様、下部には青海波を思わせる扇面模様があしらわれています。そして、壁面の下部両側には和歌を刻んだ歌碑が建てられています。全部で5基の歌碑が配置されているとのことです。
この5首は、「皇后さまのお誕生月である春を讃え、ご長寿をことほぎ奉る」古歌から選ばれたもので、そのうちの一つである大伴家持のうた「はるのそのくれなゐにほふももの花 したてるみちにいてたつをとめ」は、皇后陛下(当時)の雅号「桃苑」がふくまれることから選ばれました。
寄りの写真です。
別の面「春夏秋冬」には、また違ったモザイクが施されています。
こちらが、ホワイエ側から見た外観です。植栽がまだ育っていなく、建物の様子がよくわかります。
上から、1階平面図、2階平面図、北側立面図、矩計図です。(上2点と下2点は方向が逆転していますのでお気を付けください)
両陛下は、正面入り口から入って階段を上り、2階の控室で落ち着かれたのちに2階客席の間を通って「玉座」に着席されるという導線でしょうか。
最近のお出まし動画などでは、舞台上手側の1階入り口から入られる様子が伝えられていますので、控室自体が別場所に移動したかもしれないですね。
どこを拝見しても、皇室に対しての深い尊崇の念を感じ取ることができる丁寧かつ真剣勝負な造作・意匠となっており、息詰まるような思いです。
こちらは、ホワイエバルコニーの下部ですが、西陣の帯地が使用されています。広幅ですので、丸帯ですね。
階段の手すり下垂れ壁(?)をぐるりと囲うような形で貼り回されています。
明り取りの丸窓は、コンクリート壁面を貫通する形で設けられ、さらに繊細な意匠がほどこされています。
舞台正面には玉座。
ホワイエの床は人造石研ぎ出し(テラゾー)です。美しいです。
ちなみに、設計当初モザイクのテーマが「鶴」であったらしいことに皇后陛下(当時)が「あれは鶴ですか?」(意訳)と尋ねられた由、その意味するところは「鶴は皇太子を象徴する意匠なので、このデザインはどうなのか」ということのようだった、それ以後「はばたく鶴の形象をはばたく白鳥とし」(今井)たとのことです。中庭に面する鶴亀は寿ぎの鶴で、その他の大きな白い鳥は白鳥ということですね。
ということで、この建築は今井兼次先生の手仕事への愛着と、時代が共有していた皇室への憧憬・尊崇の念が創り出した珠玉の作品です。中を見てみたい!
当記事制作にあたっては「新建築」1966年4月号、「今井兼次建築創作論」他を参考にさせていただきました。ありがとうございました。