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歌手のフォルマント

2016年01月09日 | その他
声・楽器に関わらず、音色というのは「倍音」が決めているということはご存じでしょうか。
たとえば、440ヘルツのA(ラ)の音。オーケストラの演奏に先立ってオーボエがまずA音を出し、続いてコンサートマスターがその音を引き継ぎ、さらにほかの楽器のメンバーが次々とA音を出して基準音をそろえていきます。バイオリンだな、クラリネットだな、フルート、チェロ、金管だな・・・といろいろな楽器の音色を聞いて開演を待つ時間はワクワクするものです。そして、同じAの音をだしているのに楽器の違いがわかる、すなわち楽器特有の音色が聞きわけられるのは、その楽器(+奏者)のもつ倍音が違っているからです。

人間の声で言えば、voice codeと即物的な名称がつけられている声帯は、どんな名歌手であっても長さ、素材、厚みなどに一般人との違いはありません。声は肺に取り込まれた空気が陽圧を受けて呼気となり排出される際に気道をとおり声帯を震わせることでつくられます。この音は「喉頭原音」と呼ばれ、コーラの瓶の口に息を吹きかけて作るようなボーッという、味も素っ気もない音です。この「音」が、身体(主に咽頭・頸部・頭部)の各所に響き、その人特有の声を作り出します。そして、その「響かせ方」の特有性が、その人の持っている声の倍音を形成します。

人が歌う声をスペクトル分析すると、多くの人が2000ヘルツ近辺に主たるデータが集まるのだそうですが、プロの歌手の場合、それに加えて3000ヘルツにも有意なデータ集積があり、これを「歌手のフォルマント」と呼びます。これがいわゆる「響き」であり、鼻腔、副鼻腔、口腔で増幅された倍音で形作られたものです。つまり、プロフェッショナルな歌い手は、持って生まれた(生体に備わった)倍音に加え、トレーニングによってあらたな倍音を付加しているということです。
(外に聞こえる音は主要な周波数近辺の高さとなるそうで、3000ヘルツの倍音が出ているからといって3000ヘルツの音が聞こえるわけではありません)

この「歌手のフォルマント」は、①顎を引く、②軟口蓋を上げる、ことなどで口腔・副鼻腔の容積を大きくすることによって得やすくなると言われ、なるほど男性歌手のみなさんは①を心がけているのではと思わせる方が見受けられます。また、②についてはコーラスのトレーニングでも心がけるよう注意される点です。

理屈がわかったからといって技術が進歩するわけではありませんが、知識の裾野が広くなると人生が楽しくなりますので、ちょっとご紹介してみました。


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