久しぶりに曲目解説です。
現在練習中の「心の瞳」。日航機の事故で命を落とした坂本九さんの最後の曲としても知られていますね。
作詞は荒木とよひささん、作曲は三木たかしさんです。
九ちゃんは、札幌テレビジョン（STV)とご縁が深く、昭和の時代毎週日曜日に「サンデー九」（サンデー九ちゃんと呼んでいました）というレギュラー番組を持っていました。社会福祉色の強い番組で、年末のチャリティー特別番組が毎週のレギュラー番組になったものだと記憶しています。北海道のテレビ視聴者にとって、九ちゃんは毎週お目にかかる気持ちのやさしいお兄さん的存在でもありました。STVは日本テレビ系列ですので、その後九ちゃんは「24時間テレビのSTVのキャスターも務めました。
九ちゃんの奥様は、柏木由紀子さん。「ほそうで繁盛記」という旅館が舞台の怖い人ばかり出てくるドラマで、唯一美しく可憐な、主人公の気の弱い夫の妹を演じていらっしゃいました。九ちゃんとの結婚が決まった時、他人事ながらとてもうれしかった覚えがあります。
そんなお二人は素敵に年を重ねられ、ある日九ちゃんは作詞家の荒木さんに「二人のためのラブソングをつくってほしい」と依頼されたのだそうです。荒木さんは、「九ちゃんの柏木さんへの想いを歌で代筆する」という思いで歌詞を書かれました。それが、「心の瞳」です。
この曲は（結果的に九ちゃん最後のシングルになってしまいましたが）「懐しきLove Song」というレコードのＢ面にプレスされました。
そのころ九ちゃんは札幌でラジオの仕事があり、当初は予定になかったもののその公開収録で「心の瞳」を歌ったのだそうです。そして・・・その帰路、日航機の事故にあわれてしまいました。
ちょうどその放送のときに、千葉県のある中学校の先生が「心の瞳」を聞いていて、ぜひ子供たちに歌わせたいと思ったのだそうです。録音しながら聞いていたため、何度も繰り返し音源を聞いて楽譜に起こし、それを合唱用に編曲、合唱コンクールに出場されたそうです。そこからこの歌（合唱版）が中高生を中心に広く歌われるようになり、音楽の教科書にも掲載されているとのことです。
中学生にとっては「心の瞳」で恋人を見なくても十分に若さのもつ美しさがあるでしょうが、歌詞を深く読み込んで、人生の先輩の心をおもんぱかるという経験になるのかもしれませんね。私たち世代にとってはダイレクトに心に響く文言ですので、飲み込まれないように冷静に演奏するよう心掛けたいものです。
九ちゃん、亡くなったのは43歳でした。
