食べながら歩いていると、
「武蔵」
と、呼びかけられた。
声のした方を見ると、いか焼きの出店の中で、日に焼けた男が笑っていた。
「ユウジ!」
嬉しくなって、かけ寄った。昔の露天商のバイト仲間である。
「お前、どーしたんだよ。バイト?」
「そー。あっちーよ。汗だくだく」
ユウジは手にしたうちわで自分を扇ぎながら言った。
「今日の祭りのために来たんだけどさぁ。なーんか聞き覚えのある街の名前だと思ってたんよ。そしたら、お前の街なんだわ。元気そうだな」
「ああ。ユウジもな」
「お前の彼女?カワイーじゃん」
ユウジが、おれの横のせいあを見て、ニヤニヤしながら言った。
「ばっか、ちげーよ」
笑った。
「孫」
「ぶっ、何言ってんの、オメ。ま、いーや、食ってけよ、いか焼き」
「悪(ワリ)ィ。金無い」
マジでそろそろ金欠。
「しょうがねぇな、奢ってやるよ。かわいい彼女に免じて」
「マジで?やった、ラッキー」
我ながらよく食う。
いか焼きを2本もらって、1本せいあに渡そうとすると、彼女は、
「あたし今いい。まだかき氷あるし。あんたもどーすんの。かき氷、溶けるよ」
と、非常に的確に指摘した。
ほんとだ、どーしよう。右手に食べかけのかき氷といか焼き。左手にもう1本のいか焼き。ユウジがタレをいっぱいつけてくれたから、指に滴り落ちそうになっている。
すると彼女は、いきなり無言で左手のいか焼きを奪い取り、おれのかき氷の上に思いっきりブスッと突き立てた。いか焼きはすぐに、くてん、と倒れて、タレがかき氷のイチゴシロップと混じり合った。タレとシロップの混合液は、出店の裸電球に照らされて、世にも奇妙な色彩で、光り輝いている。
「何すんだよ、オメーっ!」
思わず叫んだ。だが彼女は、無愛想ないつもの顔で、眉をピクリとも動かさない。
信じらんねぇ。鬼か、コイツ。
…まぁ、食えないことなさそうだけど。
いやいや、そういう問題じゃねぇ。あの、箸ぶっ刺すお供えもののご飯じゃないんだから。
ユウジも、
「…オメーの彼女、機嫌ワリィのか?」
なんて、心配そうに聞いてくる。
「いや、これが、ふつー…」
…いい加減慣れろよ、おれも。
わさびおにぎりといい、これといい、彼女の言動が基本的にブラックだということに。
するとその時、彼女がぷっと吹き出して、そのままおかしそうに笑い転げた。
夕方見た、彼女の母親の写真を思い出した。でも、おれにとってはそれよりも。
…なぁ。気づいてっか。お前、今、すげー無邪気に笑ってるよ。
なんつーか、ホレ。…かわいいよ。
その時、ドンッと大きな音がして、夜空に大きな花が咲いた。おれも彼女もユウジも驚いて、一斉に空を見上げた。周りの客も、同じように空を見上げて、わぁっ、と感嘆の声をあげる。花火大会の始まりだ。
次々に打ち上げられる花火に向かって、誰かが「たーまやー」と、声を張り上げる。するとその周りから、笑い声がおこる。
茂さんたちの花火は、やっぱりサイコ-だ。
≪つづく≫
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「武蔵」
と、呼びかけられた。
声のした方を見ると、いか焼きの出店の中で、日に焼けた男が笑っていた。
「ユウジ!」
嬉しくなって、かけ寄った。昔の露天商のバイト仲間である。
「お前、どーしたんだよ。バイト?」
「そー。あっちーよ。汗だくだく」
ユウジは手にしたうちわで自分を扇ぎながら言った。
「今日の祭りのために来たんだけどさぁ。なーんか聞き覚えのある街の名前だと思ってたんよ。そしたら、お前の街なんだわ。元気そうだな」
「ああ。ユウジもな」
「お前の彼女?カワイーじゃん」
ユウジが、おれの横のせいあを見て、ニヤニヤしながら言った。
「ばっか、ちげーよ」
笑った。
「孫」
「ぶっ、何言ってんの、オメ。ま、いーや、食ってけよ、いか焼き」
「悪(ワリ)ィ。金無い」
マジでそろそろ金欠。
「しょうがねぇな、奢ってやるよ。かわいい彼女に免じて」
「マジで?やった、ラッキー」
我ながらよく食う。
いか焼きを2本もらって、1本せいあに渡そうとすると、彼女は、
「あたし今いい。まだかき氷あるし。あんたもどーすんの。かき氷、溶けるよ」
と、非常に的確に指摘した。
ほんとだ、どーしよう。右手に食べかけのかき氷といか焼き。左手にもう1本のいか焼き。ユウジがタレをいっぱいつけてくれたから、指に滴り落ちそうになっている。
すると彼女は、いきなり無言で左手のいか焼きを奪い取り、おれのかき氷の上に思いっきりブスッと突き立てた。いか焼きはすぐに、くてん、と倒れて、タレがかき氷のイチゴシロップと混じり合った。タレとシロップの混合液は、出店の裸電球に照らされて、世にも奇妙な色彩で、光り輝いている。
「何すんだよ、オメーっ!」
思わず叫んだ。だが彼女は、無愛想ないつもの顔で、眉をピクリとも動かさない。
信じらんねぇ。鬼か、コイツ。
…まぁ、食えないことなさそうだけど。
いやいや、そういう問題じゃねぇ。あの、箸ぶっ刺すお供えもののご飯じゃないんだから。
ユウジも、
「…オメーの彼女、機嫌ワリィのか?」
なんて、心配そうに聞いてくる。
「いや、これが、ふつー…」
…いい加減慣れろよ、おれも。
わさびおにぎりといい、これといい、彼女の言動が基本的にブラックだということに。
するとその時、彼女がぷっと吹き出して、そのままおかしそうに笑い転げた。
夕方見た、彼女の母親の写真を思い出した。でも、おれにとってはそれよりも。
…なぁ。気づいてっか。お前、今、すげー無邪気に笑ってるよ。
なんつーか、ホレ。…かわいいよ。
その時、ドンッと大きな音がして、夜空に大きな花が咲いた。おれも彼女もユウジも驚いて、一斉に空を見上げた。周りの客も、同じように空を見上げて、わぁっ、と感嘆の声をあげる。花火大会の始まりだ。
次々に打ち上げられる花火に向かって、誰かが「たーまやー」と、声を張り上げる。するとその周りから、笑い声がおこる。
茂さんたちの花火は、やっぱりサイコ-だ。
≪つづく≫
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