チモシェンコ大村のロン・ポール研究+くだらない話

ロン・ポール氏のブログ翻訳を通じて、リバータリアン思想・オーストリア経済学について勉強しています。

わずか3分で可決された「財政の崖」回避法案

2013-01-11 17:12:56 | 経済
「財政の崖」とは、まったくうまいキャッチコピーを連中は思いつきましたね。アメリカ経済が崖から落ちたら大変なことになるぞ、恐ろしいぞ、今すぐ何とかしないとヤバイ。そうやって世界中の人を脅してきたわけです。しかし、今回の「財政の崖」回避法案の内容を見れば、結局「財政の崖」ちゅうのんは、特定の団体・組織への利益誘導を図るための口実にすぎなかったということがよく分かります。例えば、こちらの記事にあるように、今回の法案可決で、ハリウッド業界に対する最大1500万ドルの税額控除継続が決まりました。

まったくの茶番ですよ、これは。日本のメディアも単に「財政の崖が回避された」と報道するだけでなくて、その法案の内容に迫って欲しいものです(期待はしてませんけど)。

アメリカ経済が非常に危険な状態にあるのは事実ですが、ロン・ポール氏もこちらでおっしゃっているように、均衡財政を達成しようと思えば2004年の歳出レベルに戻るだけでいいのです。2012年の歳入が約2.5兆ドル、2004年の歳出が約2.3兆ドル。帳尻が合うどころかお釣りが出ます。2004年に戻ることがそんなに難しいことですか。本当の意味で経済を回復させたいのであれば、この点を真剣に考えるべきでしょう。ところが連中は、誇張された「危機」を利用してどの団体に利益を誘導すべきかという点で争っていたわけですね。なんとも見苦しい茶番ではありませんか。



Texas Straight Talk 2013/01/07

Fiscal Cliff Bills Passed in 3 Minutes――They Don’t Even Pretend to Read the Bills Anymore!

わずか3分で可決された「財政の崖」回避法案
~もはや法案を読んでいるふりさえもしなくなった議員たち~(拙訳:チモシェンコ大村)

先週上院と下院で起きた出来事は、なぜ国民が政治不信になるのかをまたしても説明してくれました。154ページにも及ぶ「財政の崖」回避法案は、採決のわずか3分前に上院議員に手渡されました。154ページを3分間で読むことなど誰もできませんから、この法案は読まれずに可決されたと言ってよいでしょう。

そして下院では、この長くて複雑な法案を議員に渡してからわずか22時間後にこれを採決にかけたのです。したがって、法案を最後まで読むことは不可能だったと考えられます。第112回議会(訳注:2012年の議会)では、透明性の名の下に、法案を公開してから下院で採決にかけられるまで丸3日間待たなければならないことが決められていました。しかし、今回の採決は、この「3日ルール」を明らかに違反しています。

作り出された危機への解決策がなければ世界は終わってしまうという悲鳴の中、採決はこのように急がれたのでした。通常よりはるかに多くの利権団体が法案作成に関係していたのも納得です。

合衆国憲法第1条第7節には、「歳入の徴収に関するすべての法案は、まず下院で発議されなければならない」とあります。しかし、これまで何度も行われてきたように、上院は、すでに存在する下院法案に今回の法案を添付しただけで、憲法上の要請を満たしたと主張しています。

法案可決までのプロセスの中ですでに不正があり憲法違反があったわけですが、その法案の中身はさらにひどいものでした。

今回の“救済”法案には、政界に太いパイプを持つ企業に対する税制優遇措置がふんだんに盛り込まれているのです。優遇措置を受ける企業が金を出して雇ったロビイストの正体は、多くの場合は、法案作成に深く関わった人間です。

しかし、減税や税制優遇そのものが問題というわけではありません。税金を本来の持ち主に返すことを、政府から金が奪われたと解釈するのは間違いです。財産はそれを産み出した人間のものであって、政府のものではありません。しかし、ハリウッドやラム酒製造業者など、政界にコネを持つ利権団体だけは税制上の優遇措置を受け、国民の大半は給与税の増額という形で非常に厳しい増税の直撃を受けているのです(訳注:参考)。今回の法律は、財政支出を減らすどころか、ごく一部の大企業だけに減税措置を講じ、その埋め合わせをその他の国民に押し付けているのです。

「財政の崖」法案によって救済される企業利権は他にもあります。例えば、2008年農業法の9カ月の延長が決められました。これは最悪の企業助成政策で、小規模農家や納税者を犠牲にして数十億ドルもの助成金が大企業の経営する農場に投入されます。

先週の土壇場での法案可決は2点において最悪の結果をもたらしました。1つは、ほとんどすべての国民に対する増税であり、もう1つは、歳出の強制削減発動を2カ月先送りしたことです。強制削減がもたらす“苛酷な”歳出削減をめぐって多くの不安の声が聞こえましたが、実際のところ、この強制削減はほとんど効果を持たないのです。これが発動しても、次の8年間で1.6兆ドルの歳出増となります。これを歳出削減と議会が呼んでいるのは、強制削減がない場合には同期間で1.7兆ドルの歳出増を見込んでいるからです。しかし、いずれにせよ支出が増えることには変わりません。

私は、議会や大統領が方針を変え本気で歳出削減に取り組むとはほとんど信じていません。しかし幸いながら、この福祉・戦争国家の与える脅威に多くの人が気づき始めています。政府支出や税金そしてインフレが米国経済を完全に破壊してしまう前に、この運動がさらに広がり政治家に方針転換を迫ることを望んでいます。

議会に求める「新年の決意」

2013-01-10 17:17:21 | 合衆国憲法
昨年末、ロン・ポール氏が連邦議員を引退されました。本当にお疲れ様でした。彼に多大な影響を受けた私としては、今すぐにでも氏にお会いして心よりお礼を申し上げたいところです(もちろん、そんなことはできないのでお手紙を書くとします)。彼の起した知的革命(intellectual revolution)はアメリカの若者を中心に多くの一般市民を熱狂させました。私もその中の一人です。彼のリバータリアン運動が全盛期を迎えたここ数年間、ちょうど私はニューヨーク州に住んでおり、その“革命”の空気を味わうことができたのです。これは幸運でした。もちろんアメリカでもロン・ポールは既得権益層の最大の敵で大手メディアでは無視され続けていますが、それでも日本よりはマシです。ずっと日本に住んでいれば、ロン・ポールという名を耳にすることさえもほとんどなかったでしょう。「自由」の真の意味を理解することもなかったでしょう。

ただ残念なのは、私がロン・ポールの名を知りオーストリア経済学やリバータリアニズムに触れたのはごく最近のことなのですね。2011年です。それまでの私は無知でオメデタイ日本人の典型でした。政治や経済に関しては分かっているふりだけをしておりました。ところが、東日本大震災を契機に、「国家とは危険な暴力装置である」ということを肌身で感じ、「では、国家はどうあるべきか」ということを考え始めたのです。その中で出会ったのが、ロン・ポール氏であり、彼の思想的背景であるオーストリア経済学およびリバータリアニズムだったのでした。したがって、私のロン・ポール研究歴はたったの2年弱です。もっと早くから彼の思想に触れたかったといつも思います。

私が2011年5月から翻訳しているロン・ポール氏のTexas Straight Talkですが、議員引退を受けウェブサイトが閉鎖されているようです。これからはファンサイトである"Ron Paul.com"のほうで続けていくのかな。もしそうであれば、私も引き続きロン・ポール氏の文章を訳して、勉強を続けていきたいと思います。

あと、最近気になっていることは、「ロン・ポールを生んだテキサスは、他の地域と比べて何が違うのか」ということですね。彼の自由思想がなぜテキサスの人に受けたのか、大変興味深いです。そして、日本でリバータリアン活動を始めるとしたら(可能ならば)、どの地域が最適なのか。つまり、日本においてテキサス的な選挙区はどこなのか、そんなことも考えています。いくらインターネットの時代とはいえ、選挙は土の上で行われます。リバータリアンの地盤が初めになければ何も始まりません。

Texas Straight Talk 2012/12/31

New Year’s Resolution for Congress

議会に求める「新年の決意」(拙訳:チモシェンコ大村)

私はこれで連邦議員を引退しますが、新年を前に同僚議員に決意してもらいたいことがいくつかあります。2013年は、自由と平和そして繁栄のために、より多くの議員がリバータリアン思想に基づく憲法に即した政治を行うことを強く望みます。

これから数日以内に、議会では、新人や再選された議員が、国内外に限らずあらゆる敵から合衆国憲法を守ることを厳粛に誓うことになっています。そのような厳かな宣誓をする前に、まず合衆国憲法第1条第8節と権利章典を再読してください。ほとんどの法律は、合衆国憲法にある重要な条項の多くをあまりにも安易な形で違反しています。もし議員が利益団体からの圧力を前に“ノー”と言えないのであれば、支持者との約束を守らず誓いを破ったことになります。議会は利益団体のためにあるのではありません。法の支配を守るためにあるのです。

また、憲法を違反した戦争に終止符を打つよう議員たちに強く望みます。無人機による攻撃をやめ、外国の内政に干渉し諜報活動を行うのをやめなければなりません。ジョージ・ワシントンが戒めたように、“すべての国家に対して誠意と正義をもって”接するよう努力しなければなりません。我々は、さらなる敵を増やし、人命を犠牲にし、今となっては両政党を支配するネオコン的かつ介入主義的な考えの下に行われる予防戦争によって国家を破綻させているだけなのです。

外国政府への支援もあからさまな憲法違反であり、これをやめさせなければなりません。米国の政府予算からみれば比較的小規模の支出かもしれませんが、それでも多くの国家において米国からの経済的支援はそれらの国の予算の大部分を占めます。さらに、外国政府を支援することで、敵と味方両方に、予期しない影響を与えます。米国が税金を使って支援している国々の政情、経済、法律、社会問題について、議員は何も知る由が無いのです。

さらに、議会は積み重なる債務に歯止めをかけなければなりません。連邦準備銀行(FRB)によって貨幣化される米国債は我が国をおびやかす真の脅威です。まずは、連邦議会の権限について合衆国憲法第1条第8節に書かれている内容を再確認するところから始めるとよいでしょう。

議会は個人の自由と自由市場を尊重しようと決心しなければなりません。自由市場についてもっと勉強してください。自由市場がどのように通商を支え、なぜいかなる法律や規制よりも多大な富をもたらすのかについて学んでください。経済的自由こそ自由の意味するところなのだと理解してください。同意した成人の間で結ばれた自由意志による契約を妨げることはしてはなりません。政治的なつながりを持つ企業や業界が経営に失敗しても、これを救済してはなりません。市民が望まない取引を市民に強制してはなりません。市民が自由に売買することを禁止することは許されません。自分勝手な“公平さ”に基づいた法律を作ろうとするのはやめるべきです。所有権を守ってください。個人を守ってください。それだけで十分なのです。

その他もっと多くの決意を連邦議会の議員たちにはしてもらいたいと思いますが、大事なのは、合衆国憲法と就任の宣誓を尊重し、これらを軸に2013年の議会運営を行うことなのです。