チモシェンコ大村のロン・ポール研究+くだらない話

ロン・ポール氏のブログ翻訳を通じて、リバータリアン思想・オーストリア経済学について勉強しています。

自由社会にそぐわない資本取引規制

2012-05-31 12:31:09 | 経済
おなじみリバータリアン代表ロン・ポール議員のブログから。

Texas Straight Talk 2012/05/29

Capital Controls Have No Place in a Free Society

自由社会にそぐわない資本取引規制(拙訳:チモシェンコ大村)

国家が人民の国外逃亡を阻止するために壁を作る必要性に迫られるという状況―これは専制国家の最大の特徴です。先日上院に提出された国籍離脱防止法案(Ex-PATRIOT Act)という言語道断の悪法には懸念を抱かざるを得ません。勤勉な米国民から富を取り上げようと無数の法律や規制がこれまで導入されてきましたが、今回の新法案は、すでに負担過剰の納税者の顔につばを吐き、合衆国憲法を蹂躙するものです。

現行法ではすでに、200万ドル以上の純資産を持つ米国民で国籍離脱をした者は、全ての資産を売却したとみなされ、その想定売却益に課税される懲罰的な出国税を支払わなければなりません。国籍離脱防止法案はこの現行法をさらに徹底したもので、国籍離脱者の“将来的な”全収入に対しても30%の資産利得税を課すことを提案しています。この追加課税に飽き足らず、同法案は、税金対策で国籍離脱した米国民を国税庁の裁量だけで取り締まり、そのような国籍離脱者を“二度と”米国に再入国できないようにすることを国税庁に許可しています。同法案はさらに、合衆国憲法(訳注:第1条第9節)で定められた法の不遡及の原則(訳注:実行時に適法であった行為を事後に定めた法令によって遡って違法とし処罰することを禁止する)をあからさまに違反し、過去10年以内に国籍を離脱した者にも法の適用対象を広げています。

今回の法案や、それに類似した法律は、貯蓄や投資、起業に萎縮効果を与えます。この法案は、フェイスブックの創始者の一人が米国籍を離脱し何百万ドルもの税金を逃れた疑いがあるという報道を受けて提出されました。しかし、同法案の提案者たちは、成功した起業家を妬むのに必死で、大事なことを無視しています。この法案は、一生懸命働き、貯蓄し、賢く投資し、住宅価格上昇の恩恵を受ける中流階級の米国民をわなに陥れるのです。そういった国民であれば、退職するまでに余裕で200万ドルの資産を持つようになっているでしょう。特にインフレが加速し続ける状況では有り得る話です。彼らは、資産を温存できるよう、生活費の低い国に移住し、連邦準備制度が引き起こすインフレから逃れようとするかもしれません。多くのベビーブーマー世代はすでにそうしています。もしこのように国外に移住すれば、連邦政府は彼らを罰し、米国にお金を置いている限りその後も一生彼らを罰し続けるのです。

残念ながら、このような法案を検討しているだけで、それがまだ可決されていないにもかかわらず、すでに世界中の銀行に影響を与えています。米国人顧客は外国銀行にとって将来的な悩みの種になっています。米国民と同じように、外国銀行も米国税庁と関わりたくはありません。もし米国人顧客がトロイの木馬となり、米国税庁が銀行業務に巧みに介入するようになれば、米国人に銀行サービスを拡大して得られる利益よりも損失のほうが大きくなるかもしれません。

我々は、合衆国憲法修正第4条が骨抜きにされた連邦政府の下に生きています。現政府は、大統領の命令だけで米国民を無期限拘留し、セキュリティーの名の下に空港で幼児や高齢者に乱暴を働き、そして国民の経済活動のすみずみまでコントロールするのです。現政府は自国民に対して全面戦争を仕掛けていると考える国民が増えているのも驚きではありません。日に日に政府による包囲網は狭まっています。しかし、災いの前兆を予感した者が国外に逃げようとしても、出国させてもらうだけのために法外な税金を納めなければなりません。そして、彼らがどこに逃げようと、政府の触手から完全に逃れることはますます難しくなるでしょう。突き詰めていくと、国籍離脱法案は、国民の資産をコントロールすることで国民を統制しようとするものなのです。これは自由社会には似つかわしくない法なのです。

無期限拘留:暴政は続く

2012-05-22 15:55:19 | 合衆国憲法
おなじみリバータリアン代表ロン・ポール議員のブログから。

Texas Straight Talk 2012/05/21

On Indefinite Detention: The Tyranny Continues

無期限拘留:暴政は続く(拙訳:チモシェンコ大村)

悪い知らせです。2013年度国防権限法案が先週可決されました。これにより、米国内で逮捕された米国民が裁判なしに無期限拘留される恐れが今後も残ることになります。国防権限法の中でも悪名高い第1021節と第1022節は、合衆国憲法による人身保護が一部の米国民には適用されないという、憲法を逸脱した概念を成文化したものでした。同僚議員の中には、それらの条項はすでに修正済みだと我々に信じ込ませようとする者もいます。しかし、今年提出された法案やその修正案のどこにも、憲法で保障された権利を回復するような文言は見当たりません。

今回の修正案の支持者は気づかれたくなかったでしょうが、この修正案は全く何の意味も持ちません。修正案が実質的に謳っていることは、「人身保護の権利がある者には人身保護が与えられる」ということだけです。全く役立たずな内容です!

アメリカン大学法科大学院のスティーブ・バラデックはこの修正案について以下のように書いています。

「ゴーマート修正案は、前回強く反発を受けた点について何の対応もしていない。同法案は、米国内で拘留された個人にすでに適用されている措置を法令によって講じたにすぎない。また同法案は、米国内で逮捕され軍施設に拘留される者については何も述べていない。2013年度国防権限法案以前に軍施設に拘留された者は今後も拘留されることになる」

実際のところ、問題となっている修正案は事態をさらに悪化させるものです。同法案には、米国内で拘留された者には逮捕から「30日以内」に人身保護令状を請求する権利があると書かれているからです。本来ならば、米国内で拘留された者には、逮捕されてから直ちに人身保護令状を請求する権利がすでに認められているにもかかわらずです!

私は、アダム・スミス下院議員とジャスティン・アマシュ下院議員によって提案された修正案に賛同しました。この修正案は、国防権限法案第1021条を修正し、米国内で逮捕された者が裁判なく無期限拘留されたり軍事裁判にかけられないことを明確にするとともに、軍施設への強制拘留について書かれた第1022節を撤廃するものです。これにより、昨年の国防権限法案の違憲条項を無効にする狙いがありました。我々の文章は次のように明快です。「本法案、2013年度国防権限法案において、米国内あるいは米国領土または米国の占有地で拘留、拘束あるいは逮捕された者は何人(なんぴと)も、軍隊使用授権決議(AUMF)に基づく拘留を目的とした米軍への身柄引き渡しを受けることはない」

ここでの「人(person)」が我々の修正案における鍵です。合衆国憲法による保護が与えられる対象を決めるに当たって、建国の父たちも米国民と外国人を分けませんでした。合衆国憲法の父であるジェームズ・マディソンは書いています。「外国人は米国民と違い合衆国憲法の関係者ではないという理由で、外国人が合衆国憲法を遵守しているにもかかわらず、憲法上の保護を受ける権利がないというのはつじつまが合わない」と。

合衆国憲法第3条に書かれた我が国の法廷制度は強みであって弱点ではないことを忘れてはなりません。告発人と対面する権利、伝聞証拠からの保護、陪審裁判を受ける権利―これらの制度は、無実の人間を守るとともに、罪を見極め罰するためにあります。この法廷制度はこれまで十分に機能してきました。現在のところ、300人以上がテロ関連の容疑で有罪となり、連邦刑務所で長期間服役しています。例えば、1993年の世界貿易センターの爆弾テロに関わった6人はそれぞれ民間法廷で裁判にかけられ、何百年もの刑期を務めています。

先週の国防権限法案可決は、合衆国憲法を尊重するものにとっては非常に残念なニュースとなりました。米政府が法的権限を行使し、米国内で米国民を逮捕し、裁判もなく密かにその身柄を無期限拘留する―こういった状況は極めておぞましいものです。米国民は、自分の選挙区の議員がどちらに票を投じたのかをチェックするべきです。このような形で我々の自由を破壊した政治家を逃がせてはいけません。

連銀を改革すべきか廃止すべきか

2012-05-16 10:05:43 | 経済
主要メディアは相変わらず偏向報道ばかり。特権階級にとって最も危険な男、ロン・ポールが共和党予備選から事実上撤退したという報道をしてやがります。違う。正確には、今後の予備選にはこれ以上資金を費やさないと言ってるだけです。ロン・ポールの選挙戦はこれからも続くのです。もちろんロムニーに勝てる見込みは少ないですが、これは単なる大統領候補を決めるだけのレースではありません。自由のための戦いであり、ロン・ポールにとっては啓蒙活動のようなものかもしれません。みなさん、テレビを消して本を読みましょう。この知的革命は今後も続けていかなければなりません。

Texas Straight Talk 2012/05/14

The Fed: Mend it or End it?

連銀を改革すべきか廃止すべきか(拙訳:チモシェンコ大村)

私は先週、連銀を改革あるいは廃止するための様々な計画案を検討する公聴会を開きました。その目的は、連銀の抱える問題について活発で持続的な議論を促すことでした。この議論が、連銀を抑制するための具体的な行動につながることを願っています。

まず初めに、連邦準備制度について理解する必要があります。連銀は一部の有力銀行家による秘密結社(カバール)だと主張する人もいれば、連邦政府の一部だという人もいます。実態は、その両方の少しずつが正しいです。連邦準備制度とは、大きな政府と大企業の癒着構造であり、納税者から金を巻き上げるための組織です。リーマンショックの際、連銀は大銀行を救済し、経営状態の悪かった企業を下支えしました。本来なら倒産させてしかるべきにもかかわらずです。これにより、どんな米国企業も受けるべきでない市場歪曲的な便宜がそれら大企業に供与されたのです。最近のJPモルガンに関するニュースはこのことを示す好例です。JPモルガンは救済措置として当時250億ドルを受け取りましたが、さらに20億ドルの損失を出したことを先日報告しました。欠陥だらけで、杜撰で、間違った判断を繰り返す金食い虫に連銀が250億ドルも与えたところで、その姿勢を改めることもできなければ、財政規律というものを教えてやることもできません。にもかかわらず、連銀は、一企業が破綻に陥るより、この種の資本破壊を行うほうが望ましいと判断したのです。明らかに、連銀を改革する必要があります。

公聴会ではいくつかの連銀改革案が議論されました。そのうちの一つの案は、連銀の目標から完全雇用の実現を削除し、物価安定だけに専念させようというものです。もう一つの改革案は、連邦公開市場委員会の構成を変えようというものでした。また他には、連銀とその機能を完全に国有化すべきだという案もありました。しかし、連銀が現在行っていることが悪質でインフレを誘導するものであれば、連銀の代わりに財務省に紙幣を印刷・発行させたところで、事態はさらに悪化するだけでしょう。ワイマール共和国で起きたようなハイパーインフレが起きる可能性もあります。

公聴会では金本位制の問題点と利点についても議論されました。古典的金本位制が生きていた時代は間違いなく人類史上最も素晴らしい時代でした。19世紀末の数十年の間に欧米は目覚しい進歩を遂げました。その当時はまだ政府によって金本位制が維持されていました。第一次世界大戦が始まると、金(ゴールド)の兌換停止という欲望が頭をもたげたのです。ひとたび金(ゴールド)とのリンクが断たれ財政規律が失われてしまえば、そのダメージを修復するのにとてつもない緊縮財政を要することが予想されました。そこでその代わりに、欧米諸国は金為替本位制を導入することにしたのです。しかし、この制度は10年も続かず、イージー・マネーが大恐慌を生み出す結果になりました。

現在の法定不換紙幣制度を維持するよりは、金本位制に回帰するほうがよっぽど良いのです。しかし、政府が金(ゴールド)との兌換を停止する権限を持つ限り、我々は同じ過ちを犯す可能性があります。

唯一の有効な方策は、政府を通貨ビジネスから完全に閉め出すことです。そのための方法が、競合する通貨の導入です。これは、政府からの特別な計らいや認可なしに複数の通貨を流通させようというものです。歴史を通じて、法定不換紙幣制度は、そのインフレ誘導体質のため、必ず崩壊してきました。我が国の法定不換紙幣制度もその例に漏れません。

米国民は、連銀の危険性と、健全な通貨を取り戻すことの重要さを学ばなければなりません。連銀の作った幻影が完全に消滅してしまうその日に備えるため、下準備を今始めなけれなりません。公聴会の映像が私のウェブサイトにあります。全国民にぜひ見ていただきたいと思います。

終わりなき海外駐留

2012-05-09 12:41:00 | 軍事
おなじみロン・ポール議員のブログから。

Texas Straight Talk 2012/05/09

Enduring Commitments Abroad

終わりなき海外駐留(拙訳:チモシェンコ大村)

オバマ大統領は先週、夜明け前のアフガニスタンに電撃訪問し、ウサマ・ビンラディンの殺害1周年を記念するとともに、同国での米軍の駐留継続を認める戦略協力協定に署名しました。大統領は、「両国は揺るぎない互恵関係を築きつつある。あなたたちが立ち上がれば我々も立ち上がる」と発言しました。この発言が実際意味するところは、米国はアフガン政府を支援するため、当初の撤退期限であった2014年を越えてさらに10年も米軍を駐留させるということです。

また大統領は、アフガンからの米軍即時撤退を主張する人に対して、「我々にはアフガンに安定をもたらす義務がある」と反論しました。しかし、そのために後どれほど時間がかかるのでしょうか。我々はすでに米国史上最も長い戦争を続けており、人的・経済的損失も尋常ではなく、その出口も見えていません。

アフガンが安定化に向かっているという証拠はほとんどありません。実際のところ、4月には、さらに34人の米軍兵士が死亡し、暴力と混乱は激しさを増しています。大統領がアフガンを出発してから90分以内に、カブールで自殺テロが起き、さらに7人が死亡しました。米軍のアフガン駐留がこの国の安定化に何も役立っていないことは明らかです。ウサマ・ビンラディンもアルカイダも事実上いなくなった今、我々は、作る国などないような地で国家建設に勤しんでいるのです。

オバマ大統領のアフガン訪問がなぜ通常の訪問ではなく“電撃”訪問であったのかを考えてください。10年経った今でも、アフガンを行き来するのは非常に危険だからです。アフガンでの目覚ましい進歩を語る大統領の楽観的な言葉より、こちらの事実のほうが説得力がないでしょうか。

米軍の駐留継続は何を意味するでしょうか。韓国に聞いてみてください。この国では、休戦後も米軍が50年以上駐留を続けています。一部の試算では、米国の納税者は、韓国での米軍駐留のために年間400億ドルも負担させられているということです。世論調査によると、韓国人の中でも特に若者は米軍駐留にうんざりしており、我々に韓国から出て行ってもらいたいと思っているようです。同じことが沖縄についても言えます。沖縄では市民が声を上げ、米軍撤退の方向へ動き始めています。

ソ連は、統一国家を実現するためにはアフガンを取り込まなければならないと考えました。しかし、彼らは判断を間違えただけでなく、多大な代償を払うことになりました。開戦から9年が経過し、1万5千人のソ連側犠牲者を出した時点でやっと、モスクワの共産主義政権は過ちに気がつき、アフガンから軍を撤退させました。ソ連のアフガン撤退が完了したのは1989年初めです。その間にソ連はさらなる経済危機に陥りました。これも大部分は、ソ連が多くの属国からなる世界帝国を維持しようとしたからです。同じ年の後半になると、ソ連圏は崩壊を始めました。東欧政権の崩壊から始まり、ソ連自体も潰れることになったのです。ソ連崩壊はその後継国家にも多大な経済的打撃を残し、今でも完全には回復していません。ソ連が1989年に気づいたときはもう手遅れでしたが、これを米国が学ぶにはまだ遅くはありません。大統領閣下、アフガンから撤退すべきなのは今です。2024年ではありません。

戦争の代償

2012-05-02 12:16:04 | 軍事
Texas Straight Talk 2012/04/30

The Costs of War

戦争の代償(拙訳:チモシェンコ大村)

エリック・シンセキ退役軍人長官は今月、多発する退役軍人の自殺を防ぐため、現在勤務している20,590人の精神衛生専門スタッフに加えて、さらに1,900人の精神衛生専門看護師、精神科医、心理学者およびソーシャルワーカーを配属すると発表しました。これまでの大統領の一部は我が国の軍隊を前例の無い規模で乱用し、議会も大統領に好き勝手をさせてきました。その結果、不幸なことに、軍隊内での自殺者数は、現役軍人と退役軍人の両方において、急上昇しています。自殺による軍人の死者数は戦死者数をはるかに超えています。今月のAir Force Times誌の記事によると、空軍兵士の自殺は昨年から40%も増加したようです。

アフガニスタンでの戦争が20年目に入り、兵士に何度も出征を強いていることを考えると、これらの統計は悲しいですが驚きではありません。

皮肉なことに、エリック・シンセキ退役軍人長官はかつて、イラクの侵攻と占領はネオコンが言うほど容易なことではないと大胆な発言をし、これが原因で、当時のブッシュ大統領によって更迭されたことがありました。当時のポール・ウォルフォウィッツ国防副長官は、軍務経験が無いにもかかわらず、イラク占領には数十万人の兵士配備が必要だとするシンセキ将軍の見解に対して、“見当違いもはなはだしい”と切り捨てました。この戦争の代償を見れば、どちらが正しかったかは今では明らかです。

いつまでも終わりそうにない戦争の隠れた人的損失に加えて、経済的損失も甚大です。ノーベル賞受賞経済学者のジョセフ・スティグリッツ氏は2008年に、「世界を不幸にするアメリカの戦争経済 イラク戦費3兆ドルの衝撃」(The Three Trillion Dollar War: The True Cost of the Iraq Conflict)という本を書いています。この中でスティグリッツ氏は、軍装備品の交換から何千人もの負傷兵士の生涯サポートまで全ての戦費を計算し、イラク戦争には、ホワイトハウスが侵攻前に見積もっていた500億ドルを何桁も超える額の経費がかかることを明らかにしました。スティグリッツ氏の試算によれば、アフガニスタンでの戦費を入れて、総額7兆ドルを超えるということです。

一方で、国内のインフラは崩壊し、医療サービスは高額で手に届かないものとなり、インフレとともに失業者数は増加するばかりです。なんら不思議なことではありません。この7兆ドルが民間に与えうる生産力を想像してみてください。このお金が民間に回っていたら何ができたでしょうか。何が発見されたでしょうか。どんな病気が治癒できたでしょうか。何が建てられたでしょうか。どれだけの雇用を生んだでしょうか。

10年にわたる軍事活動の精算をする時が来ていますが、ロビイストや大物政治家と強固なつながりを持つ軍産複合体は予算削減の対象にはめったになりません。オバマ大統領の2013年度予算案では、大幅な兵力削減は必要としながらも、非常に高価でまったく不必要な兵器システムが実質的に無傷で残されています。防衛アナリストのウィンスロー・ウィーラー氏が今月指摘していましたが、“次世代”主力戦闘機F-35(訳注:野田政権が購入を決定したのもこれ)の価格はさらに2億8千9百万ドルも高くなるようです。ウィーラー氏によると、この戦闘機は、すでに時代遅れで設計もひどく、“空飛ぶピアノ”のような代物であるにも関わらずです。

F-35のような怪物を産み出す軍事請負企業には政治的なコネクションがあり、それがゆえに保護されるのです。しかし残念ながら、帰還兵はここまで手厚く守られることはありません。同じ2013年度予算案でホワイトハウスは、退役軍人が自己負担すべき医療費および薬剤費を引き上げ、増大する退役軍人給付費を抑える案を盛り込んでいます。異常さを増す退役軍人の精神病発症と自殺があと何年続けば、彼らの支援のための予算が増額されるようになるのでしょうか。

10年にわたる世界規模の軍事侵攻の代償を予言した人間は一笑に付され、職を追われました。彼らの警告していたことが正しかったのは歴史が示しています。不必要な戦争をしてきたこの10年で、米国は明らかに物騒な国になりました。経済崩壊はそこまで迫っています。何年も乱用された結果、軍も崩壊寸前です。我々は正気を取り戻すことができるでしょうか。