チモシェンコ大村のロン・ポール研究+くだらない話

ロン・ポール氏のブログ翻訳を通じて、リバータリアン思想・オーストリア経済学について勉強しています。

安全と自治

2012-07-25 12:23:08 | 治安
Texas Straight Talk 2012/07/23

Security and Self-Governance

安全と自治(拙訳:チモシェンコ大村)

コロラドの映画館で先週起きた無分別で恐ろしい殺人事件は、米国民に、命は美しくともはかないものであること、そして、家族や友人、愛する者の存在を当たり前に思ってはいけないということを思い出させてくれました。この事件で負傷した方、また犠牲になった方の遺族に祈りを捧げたいと思います。この悲劇を機に、命を大切にする社会を作るために何をすべきかを我々は考えなければなりません。

一方で、政府があらゆる危険から国民を守ることができるわけではないという冷然たる現実を我々は直視しなければなりません。どれだけ法律を作っても、どれだけ警察や連邦職員を街に配備しても、どれだけ頻繁にインターネット通信を監視しても、覚悟を決めた個人や集団はそれでも多大な危害を市民に加えることができるのです。自分の安全と家族の安全を守る責任は我々個人にあります。

また、平和的で生産的かつ責任ある個人の集団を築き上げるのは、政府の役目ではなく、市民社会の仕事です。政府にはモラルを強制することも、問題を抱えた個人を励ますこともできません。個人の行為に対して政府が法や警察、刑務所を用いて行う外部からの統制は、悲惨な犯罪が起きた後でしか意味を持ちません。

対照的に、内部自治は、人間の行為を律する上で、いかなる法よりもはるかに強力です。この内部自治は、初めは親から、さらには親戚や模範となる大人からの良い影響を通じて、生まれたときから形成されていきます。幼少期を過ぎると、宗教や市民活動、社会活動を通じ、人格形成が起こります。モラルという礎なしには自治を達成することはできません。

しかし、政府は道徳的な存在ではありません。国家は我々の権利を保護しなければなりませんが、我々の人格まで作ることはできないのです。悲惨な犯罪が起きるたびに、当然ながら国民は、類似の犯罪が将来起こらないよう「何かしろ」と政府に求めます。しかし、この反射的な衝動は、ほとんどいつも、悪法の法制化と自由の喪失につながるのです。

警察の検問や監視カメラ、金属探知機でまみれた世界に本当に住みたいでしょうか。政府が完璧な安全を提供してくれるなどと本当に信じられるでしょうか。暴力事件を犯してやろうと妄想する不平分子や精神的に不安定な人物、あるいは社会的疎外者を一人残らずどこかに収容するしかないのでしょうか。一方で、国家が安全を提供してくれるという幻想よりも自由のほうがより重要だと認めることはできるでしょうか。

自由は安全によって定義されるのではありません。自由とは、市民が政府の干渉なく生活できることを意味します。リスクの無い世界を政府が作ることはできませんし、そのような架空の地で生きることを我々も望まないでしょう。全体主義的な社会のみが絶対的な安全を価値ある理想として敢えて謳います。なぜならば、それにより、市民の生活を国家権力によって完全にコントロー ルすることができるからです。悲惨な事件が起きて、政府の偽りのセキュリティー・ブランケット(訳注:幼児が安心感を得るためにいつも手にするお守り毛布)が手招きをする中で、それでも自由の価値を信じることができるとしたら、その時に初めて、自由は意味を持つのです。

インフレーションは貨幣的現象である

2012-07-18 11:03:21 | 経済
おなじみロン・ポール議員の週刊アップデートより。

Texas Straight Talk 2012/07/16

Inflation is a Monetary Phenomenon

インフレーションは貨幣的現象である(拙訳:チモシェンコ大村)

今月末、連邦議会は前例のないチャンスを手にすることになります。議員と納税者に向けて意味のある情報開示をするよう、連邦準備制度理事会(FRB)に強制できるチャンスです。私の提出した下院法案459号、通称「FRB監査法案」は、7月に議会で採決される予定になっています。同法案には270人以上の賛同者がおり、議会の指導者の支持を得ています。しかし、同法案の下院での可決は戦いの始まりに過ぎません。多くの上院議員と大統領は今なお、金融政策に関する国民的な議論を行う重要性を理解していません。

米国民はすでに気づいていますが、FRBの政策、特に2008年以降の政策は、極端なインフレを誘導するものであり、長期的には米国経済に重大な打撃を与えるものです。国民は、多くの経済学者がいまだに理解できていないことを理解し始めています。それはつまり、インフレは貨幣的現象であり、物価上昇はその現象の一つの兆候にすぎないということです。(現金、電子取引に関わらず)ドルの供給量が、実際に手に入るモノやサービスの量の増加よりも早く増えれば、物価はいずれ上昇します。

この根本的真理はミルトン・フリードマンをはじめとする多くの経済学者によって詳細に解説されていますから、「インフレはコントロールされている」などという現代のケインズ経済学者たちの主張には弁明の余地がありません。普通のアメリカ人であれば、博士号などなくとも、FRBのバランスシートを見ただけで、近年行われた膨大な貨幣創出について理解することができます。彼らは、この貨幣創出が最終的に致命的な結末をもたらすことを知っているのです。

私はこれまで長々とインフレについて語り、また、FRBによる貨幣創出がなぜ実質的な増税になるのかについて話してきました。何もないところからドルが作り出される度に、自分のポケットの中のドルや銀行に貯蓄しているドルの価値は希釈されます。しかし実際のところ、FRBが急激に通貨供給量を増やしたことでもたらされる影響については、やっとその一部が見え始めたところに過ぎません。元FRB議長のアラン・グリーンスパンも先週ラリー・クドローに説明していたとおり、FRBが2回連続の量的金融緩和政策によって生み出したドル建て預金のほとんどは、FRB加盟銀行のバランスシートにまだ残ったままです。経済不安を極めて冷静に判断した結果、銀行は貸し渋り、企業は事業を拡大せず、個人は借り入れを少なくしようとしているのです。つまり、2008年以降FRBによって作られた何兆ドルものお金は市場にほとんど流れていないということです。このドルが最終的に世界経済に流入すれば、経済のあらゆる部門で物価が急激に上昇するでしょう。

インフレがもたらす真の害悪は、新たに作られたお金がまず初めに、銀行など、政治的便宜を受ける一部の利害関係者に利益をもたらすということです。しかし、貨幣的インフレが時間をかけて最終的にもたらすのはいつも貯蓄の目減りと購買力の低下です。これは、健全な経済において資本蓄積と投資の鍵となる貯蓄を抑制します。また、インフレは、高齢者や固定の収入で生活する者に最も大きな打撃を与える傾向にあります。

何十年もの間FRBが意味のある監視を全く受けずに活動してきた結果、全国民の貯蓄は失われ、購買力は損なわれ、生活の質は低下しました。FRBの政策によってマーケットシグナルは歪められ、個人や企業は間違った判断の元、資本の配分ミスを引き起こします。また、避けることのできない景気循環を誘導することで経済破綻をもたらします。この景気循環については、多くの人は資本主義にその原因を求めますがこれは間違いです。さらにFRBはこれらを全て極秘にやってのけ、一部の財界人・政界人に便宜供与するのです。今こそFRBを監査しなければなりません。これは、我が国の通貨と経済の将来を牛耳る絶対的権力を排除するための最初の一歩なのです。

部分準備銀行制度、政府、モラルハザード

2012-07-12 14:12:36 | 経済
おなじみロン・ポール議員のブログから。今回は「お金」について。必読です。"create money out of thin air"(何もないところからお金を生み出す)という表現をロン・ポール氏もオーストリア学派の人たちもよく使いますが、このフレーズこそがまさに銀行(民間も中央銀行も)の詐欺行為を的確に言い表しています。その詐欺行為は主に二つに分けられ、ひとつは連邦準備制度によるトレジャリー(米国債)の貨幣化、そしてもう一つは、今回のテーマである部分準備銀行制度が可能にする無限に近い信用創造です。

その後者について簡単に解説してみます。

学校で習う「銀行のもうけの仕組み」では、まず顧客が銀行にお金を預け、銀行はそのお金を元に他の人や企業に貸して利益を得る、という感じになってますね。しかし、学校で教わらないのは、顧客が一斉に銀行に駆けつけて預金を引き下ろそうとしたら確実に銀行は破綻するということです。なぜなら、銀行の金庫の中には預金総額に見合うだけの現金が用意されていないからです。こりゃ困りますよね。だから各国の中央銀行(日本なら日銀)が支払準備率というものを定め、預金総額の一定率以上を銀行が常に保有していなければならないようになっています(実際には各銀行が中央銀行にもっている口座の中に預け入れる)。これで安心、安心。でも、ちょっと待ってください。問題は、この支払準備率が意味のないくらい恐ろしく低いのです。日銀の場合ですと、0.01%くらい。ほぼゼロです。これは見方を変えると、顧客が銀行に100万円預け入れると、銀行はそれを元に100億円(=100万円 X 1/0.0001)の預金があることにして、そこから100万円を引いた99億9千9百万円を融資に回せるということです。これが"creation of money out of thin air"の意味するところです。恐ろしいですねー、怖いですねー(淀川長治風に)。

もう少し詳しく知りたい方は、

End the Fed (Ron Paul)
What has government done to our money? (Murray Rothbard)
The Creature from Jekyll Island: A Second Look at the Federal Reserve (G. Edward Griffin)

などを参考にしてください。


Texas Straight Talk 2012/07/09

Fractional Reserve Banking, Government, and Moral Hazard

部分準備銀行制度、政府、モラルハザード(拙訳:チモシェンコ大村)

私が議長を務める小委員会では先週、部分準備銀行制度と、政府(納税者)が提供する預金保険によってもたらされるモラルハザードについて公聴会を開きました。部分準備銀行制度とは、預金者から預かったお金のごく一部しか手元に残さないという銀行の慣行を指します。通常、ほぼ100%の預金は他に貸し出されていますが、預金者はいつでも預金の全額を引き出せると信じているのです。貸し出されたお金は再度銀行に預け入れられ、支払準備制限ぎりぎりになるまで再度貸し出されます。これにより、部分準備銀行制度の与える影響はさらに複雑になるのです。

マリー・ロスバードも言っています。「部分準備銀行制度とは、何もないところからお金を作り出すことを意味する。本質的にやっていることは偽札作りと同じである。偽札作りの場合、お金や、お金の代わりになる倉庫証券の形を装ったものを印刷することで、何もないところからお金を作る。この方法により、一般市民から、そして本当の意味でお金を稼いだ人々から、財産を騙し取るのだ。部分準備銀行制度においても同様に、お金に代わる倉庫証券が偽造され、それがお金と等価なものとして一般に流通する。しかし、両者の類似性には一つ例外がある。銀行が作った証券の場合、法的にはそれを偽造紙幣として見なすことができないのだ」

主流派の経済学者たちは、この「貨幣乗数」(訳注:マネタリーベースに対し何倍のマネーサプライを作り出すことができるかの指標)に基づく信用創造を、経済活性化をもたらす奇跡に近いプロセスだともてはやします。しかし、実際のところ、低く設定された支払準備率は、銀行が何もないところから何兆ドルもの信用を作ることを可能にし、生産構造を歪め、景気循環をもたらします。この景気循環の中で、バブル景気が自然な経過を辿り、ひとたびその崩壊が始まれば、一部の人は当然ながら現金を持とうとするでしょう。そして、実物の貨幣を手に入れるために、彼らは銀行の口座から預金を引き出そうとします。しかし、銀行の預金というものは、わずかな元の現金預金の上に莫大な量の信用を上乗せしたものから成り立っています。ドルが口座から引き出されるたびに貨幣乗数は低下し、信用収縮が引き起こされます。そしてもし、預金者が銀行に大挙して押しかけ、銀行が保有する現金を上回る量のお金を引き出そうとすれば、この砂上の楼閣は丸ごと崩れ落ちてしまうのです。まさにこれが、一部の欧州銀行が現在直面している脅威です。

銀行預金残高が常に現金保有量を超えているわけですから、部分準備銀行制度の下では、銀行が約束したとおりに預金者の求めに応じてお金を支払うことが不可能なのは明らかです。つまり、この制度は銀行を機能的に破綻させるのです。全ての預金者が一度に預金を引き出す可能性は比較的低いですが、それでも取り付け騒ぎは定期的に起こっています。なんとか銀行が存続できている唯一の理由は、預金保険という政府からの補助があるからです。これは、銀行制度の安定性を補強し、取り付け騒ぎを防ぐために作られました。預金保険は取り付け騒ぎの発生件数と影響を緩和することに成功していると言われていますが、これは政府による銀行の救済をあからさまに保証したものにすぎません。預金保険は、銀行の預金を全く不健全な金融機関に融資することを助長し、これによってモラルハザードが生み出され、金融システムに不安定性をもたらすのです。

銀行がもたらす金融不安に対する唯一の解決策は、真の自由銀行制度を確立することです。銀行が失敗を犯した場合、今後は政府のいかなる援助も受けるべきではありません。他の業種と同様に、銀行も市場原理にさらされなければなりません。健全な業務を行って現金保有を手元に増やし顧客の信用を得ている銀行は生き残り、そうでない銀行は落ちこぼれていくでしょう。

他の金融業務の例に漏れず、銀行業にもリスクはつきものです。したがって、政府はリスクを排除しようと無駄な努力を続けるべきではないのです。政府の介入を取り除き、市場を機能させればいいのです。結果として、顧客、借り手、投資家のニーズを満たした、より安定したシステムができるでしょう。

FRB監査法案、いざ下院本会議へ!

2012-07-05 14:35:03 | 経済
リバータリアン代表ロン・ポール議員の週刊ブログ"Texas Straight Talk"の翻訳を始めてから早1年が経ちました。今後もコツコツ勉強を続けていきます。

Texas Straight Talk 2012/07/02

Audit the Fed Headed for the House Floor!

FRB監査法案、いざ下院本会議へ!(拙訳:チモシェンコ大村)

米下院監査・政府改革委員会は先週、私の提出したFRB(連邦準備制度理事会)監査法案(HR459、Federal Reserve Transparency Act of 2011)を重要条項の修正もなく全会一致で可決し、FRBの透明性を求める者にとって大きな勝利となりました。これにより、おそらく7月末頃に下院本会議において同法案の採決がとり行われることになります。263人という桁違いの賛同者がいますから、法案可決の可能性は非常に高いと言ってよいでしょう!米国における通貨がどのように操作されているか、そしてFRBがいかに通貨の取扱いを誤ってきたか――これらの問題にメスを入れるまたとないチャンスがやってきました。両院議員は同法案の内容と重要性をこれまで以上に理解する必要があります。

FRBは、米国経済と世界経済両方に対しとてつもなく有害で説明責任も負わない組織です。FRBの政策は、議会が決める財政政策や予算、税制よりもはるかに大きな影響を平均的米国民に与えます。実際のところ、FRBは議会よりも金を使っており、お気に入りの金融機関を救済するために、何兆ドルもの新しいお金をバランスシートに計上しています。

数十年間、FRBは容赦なく米ドル供給量を(現金、電子取引両方において)増やし、金利を人為的に低く維持してきました。このような金融政策は、倹約を罰し貯蓄をむしばむことで、固定の収入で生活をするお年寄りや貧困者に危害を加えるのです。また、FRBによる通貨供給量の拡大は、人為的に低く維持された金利とあいまって、破壊的な誤投資の連鎖をもたらします。この結果、住宅、株式市場、雇用においてバブルが発生しますが、最終的にこのバブルは崩壊し、国民の生活は破壊されるのです。

FRBは議会によって創設されましたが、現行法では、FRBの政策の中で最も米国民に影響を与えるその金融政策について議会が全面監査することは禁止されています。FRBの財務報告書は毎年監査されますが、その金融政策については監査を免除されています。議会の調査機関であるGAO(米政府説明責任局)も、現行法では、FRBのディスカウント・ウィンドウ(訳注:預金取扱金融機関に資金提供する窓口。ここでの貸出金利が公定歩合に相当する)や公開市場操作、外国政府や外国銀行との協定、連邦公開市場委員会(FOMC)による指令について調査することは禁じられています。まさにこういった情報を公開させなければならないのです。

現在の金融規制改革法(ドッド・フランク法)で義務付けられた監査は、FRBの緊急融資プログラムや手続きに関するものだけを対象とし、融資に関する重要な詳細に焦点を当ててきませんでした。公開市場操作やディスカウント・ウィンドウ貸出など、FRBの他の業務に関するほとんどの情報は、訴訟の結果として公開されたに過ぎません。議会が行動を起したからではないのです。現行法でも、FRBにはそれらの情報を将来的に公開することが求められています。しかし、情報公開には2年のタイムラグがあり、GAOもFRBの手続きに関する部分しか監査することができません。FRB監査新法案は、GAOと議会に制限なしの監査権限を与え、FRBの全ての貸付活動を監視下に置くことを可能にします。

また、FRBは外国中央銀行とドル・スワップ協定(2008年において6千ドル以上)を締結していますが、一方で、スペインやギリシアを含む欧州圏において景気の先行き不透明感が拡大しています。この状況を考えると、FRBが欧州への財政援助を続けていることについて、FRBは国民への説明責任を果たすべきであり、また、その活動を議会によって監視しなければなりません。FRB監査法案は、FRBが欧州中央銀行や他の外国銀行と結んだ協定についても透明性をもたらします。

FRB監査法案では、監査の対象が制限されません。FRBの全面監査がついに可能になるのです。ドルの価値や購買力を操作する組織が、議会による監視や国民への説明責任なしに影でこっそりと活動することは許されるべきではありません。FRBには透明性が必要であり、同法案はこれを提供します。この法案を下院で可決させ、上院でも可決し、即座に法制化しなければなりません。今、そのチャンスがやってきました。