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ちいさい ねこ♪

ひとつでも多くの心揺さぶられる瞬間をとどめておきたいから・・・。

映画レビュー「ペイチェック 消された記憶」

2008-03-17 08:31:54 | 映画レビュー
※昨夜テレビ放映されましたね。このレビューは2005年8月29日に書いたものです。

【ひとこと】
 莫大な報酬と引き換えに消された3年間の記憶。罠にはめられた男の「記憶」探しが始まった。

【物語のあらすじ】
 マイケル・ジェニングスはフリーのコンピューター・エンジニア。機密漏洩を防ぐ為に、彼が携わった企画開発の記憶を削除しては高額の報酬を得る。ある日、友達から持ちかけられた開発計画は、3年という長期に渡る代わりに、一生遊んで暮らせる報酬がもらえるというおいしい話だった。

 彼はうまくやったはずだった。開発計画は成功した。なのに、9200万ドルもの報酬は自ら放棄。そして彼自身が19個のガラクタを自分に宛てて送りつけていた。なぜ?やがてFBIに拘束され、命までも狙われ、彼ははめられたことを知る。ガラクタを手に逃げ出し、謎を追うマイケル。自分の失った記憶と、愛を取り戻す為に。

【感想など】
 ベン・アフレック主演のアクション大作という触れ込みでしたから、ちょっと警戒しながら(つまんないんじゃないかと心配しながら)観てましたら、あらら、面白いじゃああーりませんか!アクションも楽しめて、謎解きもできて、得した気分です。

 主人公が何を開発したのかがわかってしまうと、先の見えちゃうストーリーなんですけど、19個のガラクタ(本当は20個)が彼を救う手立てとして有効に働くのはちょっと爽快でした。「ははぁ、こういう使い方かぁ」ってね。

 それとマイケルの恋人・レイチェル役のユマ・サーマンが、アクションにもきっちり貢献していて良かったっす。彼女の顔とか容姿は好き嫌い別れると思うのですけど、私は好きなんですよ。綺麗で賢くて勇気があって、何よりも愛に命を賭ける純粋な女、という役どころがぴったりです。

 敵役のジミーを演じたアーロン・エッカートもなかなか憎たらしくてよかったですよ。設定は近未来なので、話の中核になる「マシーン」も、「絶対ないとは言い切れないかな?」とそこそこリアルでした。

 つっこもうと思えばアラはあるんですけど、ここはひとつ温かい目で見てやってくださいな。

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映画レビュー「TAXI NY」

2008-03-16 08:58:10 | 映画レビュー
※来週土曜日(3月22日)夜9時~フジテレビ系列「土曜プレミアム」で放映予定ですね、この映画。↓のレビューは2006年2月26日に書いたものです。

【ひとこと】
 このリメイクは大好きだ!

【物語のあらすじ】
 自転車で暴走していたメッセンジャーのベル・ウィリアムス(クイーン・ラティファ)は、念願かなってタクシー運転手に。愛車をバリバリに改造し、NYの街を駆け抜ける。だが、ある日、超ドジな刑事アンディ・ウォッシュバーン(ジミー・ファロン)の頼みで銀行強盗一味を追いかける手伝いをさせられ、盛大に事件に巻き込まれてしまう。モデルばりの美女4人を追うおかしなコンビがNYの街に大騒動を引き起こす。果たして、強盗一味を逮捕できるか!?

【感想など】
 リュック・ベッソン製作で大ヒットした「TAXi」シリーズ1作目をリメイク。舞台はフランス・パリからアメリカ・ニューヨークに移された。主役もサミー・ナセリからクイーン・ラティファへ。ストーリー展開は元作にほぼ忠実。だが、このリメイクは大好きだ!

 なんといっても展開のスピードが圧倒的に良い。「TAXi」シリーズはすべて観ているけれど、1作目が実は一番好き。サミー・ナセリのとぼけた味わいにクイーン・ラティファは引けを取らない。しかも今回のリメイクでは、相棒役のジミー・ファロンが活躍している。彼がナタリー・コールの歌を熱唱しながら運転するあたりなんてお腹の皮がよじれるくらい笑った。脇役のアンディ・ママやベルの恋人ジェシーなど、かなりツボ。そこここにちりばめられた笑いは吉本新喜劇さながらなのだ。ベタだけど笑える。97分間のうち、私はおそらく40分くらい笑っていただろう。そのくらいツボ。

 クイーン・ラティファのノリが誰かに似ていると思っていたら、はっと思い当たった。あれは「ゴースト ニューヨークの幻」でおかしな霊媒師を演じたウーピー・ゴールドバーグだ。あの「なんでアタシがこんなことに巻き込まれなきゃいけないのよーーーーー!!!」という雰囲気がそっくりっ!私は「ゴースト」がかなり好きで、あのウーピーも大好き。それでこの作品もゲラゲラ笑いながら観ちゃったわけだな。

 リメイク版はとかく評価されにくいものだけど、この映画に関して言えばかなりイイ出来じゃなかろうか?好みの問題はあるにせよ、元作と比べないで楽しんで観た方がいい。改造されたフォードがかっこ悪いとか、そういうのはまあアメリカだからしゃあないとして。強盗役のオネエチャンたちもかなーりイケてるしね。

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映画レビュー「小さな中国のお針子」

2008-03-12 22:38:25 | 映画レビュー
「小さな中国のお針子 BALZAC ET LA PETITE TAILLEUSE CHINOISE」2006年1月27日

【ひとこと】
 水底に沈んだ、遠い青春の日々。

【物語のあらすじ】
 1971年、ルオ(チュン・コン)とマー(リィウ・イエ)、二人の青年が山奥の村へ「再教育」のために送られた。文化大革命の嵐が吹き荒れる中国。二人は反動分子の子供、ブルジョアの手先として、過酷な労働に従事させられる。屈辱的な待遇が続き、本さえも入手できない日々。だが、近隣で唯一の仕立て屋である老人(ツォン・チーチュ)の孫=お針子(ジョウ・シュン)に恋をして、二人は寒村の貧しい生活にも生き甲斐を見出していく。微妙な恋心をひた隠すマーと話上手なルオ。やがて、苦労して手に入れた本をお針子に読み聞かせるようになったルオと、お針子は結ばれる。だが、文明に触れて「考える」ことを始めたお針子が、村を出てしまい・・・

【感想など】
 三角関係がこうも美しく描かれると、なんだか非常に新鮮です。若い3人のことだから、もっとドロドロになってしまうのかと思いきや、マーがぐっと耐え忍んで、ルオとお針子を見守り続けるんですね。これがとてもさわやかで、せつないんですよ。彼女を愛しているのに、親友・ルオに気を遣って、絶対自分の気持ちを言い出そうとはしません。ルオの留守中にもお針子を見守り、彼女の悩みを解決する手助けをし、彼女に尽くす、なんとまぁ、いい奴じゃないですか・・・・。

 彼らは自分達が受けてきた教育を捨て去る事はなく、後にはそれぞれの道で成功を納めました。マーがフランスでヴァイオリニストとして生きるようになった頃には、ルオは歯科医として有名になり、上海では社会的にも重要な役に就いています。あの山奥での生活は3年間。27年も後に、お針子への想いを二人が語り合うシーンの泣けること。こういう純粋さに私は弱いです(涙)。昔、一人の美しい女性がいて、二人の男が彼女をそれぞれの方法で愛し、思い出だけを手に、別れていく、いいですねぇ、こういう話。

 フランス映画だけあって、情景描写も素晴らしいです。村は目をむくくらいに辺鄙!田舎!!山奥です。徒歩でテクテク登る石段の数ときたら、金毘羅さんの比ではありません。考えただけでもめまいがします。切り立つ崖を人々が背負い籠をしょって黙々と歩くシーンや、銅山の狭い坑道を這って鉱石を運ぶさま、山の上の畑までし尿を肥料として運ぶところ、どこをとっても厳しすぎる労働ですよ。ですから、村の娘達が歌い踊るシーンや、水浴びに興じる場面などが活きて来るんですね。マーの奏でるヴァイオリンの音色も心を潤してくれます。ルオとお針子が水の中で戯れ、やがて初めて結ばれるシーンは、なんともいえず美しい・・・。

 27年後に、マーがお針子を尋ねていく際、彼は香水をお土産に買いました。結局彼女には会えずじまいで、その香水ビンは古ぼけたミシンと共に水底へ沈みます。愛らしいピンクの小瓶につめられた「trezoa(「宝物」っていう意味らしいですね。)」。水の底では、3人が今でもバルザックやユーゴー、トルストイなどを読んでいるのでしょう。いつまでも色褪せない遠い青春の日々と、甘くせつなく美しかった恋。

 原作・脚本・監督を務めたのはダイ・シージエ。自伝的な話らしいです、これ。主人公3人以外のキャラクター(村長や仕立て屋のおじいさん、マーに歌を教えてくれる老人など)もかなり個性的で、その当時の雰囲気をよく伝えており、興味深く観られました。村長の虫歯を3人が治療するところや、ルオの「語り」に触発された仕立て屋が最新モードを生み出すあたり、とても良いシーンがたくさんありました。マラリアとおぼしき高熱に苦しむルオを「治療」する様子は「おいおいホントかよっ!?」と思いましたけどねw

 要となった3人の役者たちがそれぞれの持ち味をよく表現し、映画そのものの価値を高めています。若い人よりもむしろ、中高年の人にオススメしたい秀作でした。


【追記】
 本作でマーがお針子のお土産にと買い求めた香水はイブ・サンローランのベビードールらしいです。(そっち系の知識まったくないので、わかりませんでした。スミマセン。)でも、映画の中では「trezoa」と商品のすぐそばに出ていたんだが・・・???あれは、意味合いを観客にわからせるための演出だったのかしら?ちなみに、ランコムから「trezoa」という名前の香水も発売されてますが、このビンは映画に出てくるものとは明らかに違います。

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映画レビュー「007/カジノ・ロワイヤル」

2008-03-10 08:39:31 | 映画レビュー
【ひとこと】
 新生ジェームズ・ボンドのスピーディーなアクション!

【物語のあらすじ】
 「00(ダブル・オー)」に昇格したばかりの若きジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)は、テロリストに投資その他の利益で資金を供給する「ル・シッフル」(マッツ・ミケルセン)を追う。モンテネグロで開催される超高額ポーカーで一攫千金を目論む「ル・シッフル」、そうはさせじとMI6を代表して参加するボンド。財務省の役人である美女・ヴェスパー(エヴァ・グリーン)を伴って、現地に乗り込んだが・・・

【感想など】
 ちょっとぉ、ちょっと、ちょっとぉ~、なにこのカッコ良さはぁ!!??今までの007と、違うじゃないのぉー。これ、好き、こういうのは大好き!アクションが信じられないくらいスピーディーでリスキーでエキサイティングでボンドもすんごいかっこいい!全編とにかくリアル。ストーリー展開は水戸黄門的なお約束で、ある意味安心できる。オープニングテーマもアニメの技法を実写とうまく融合させスタイリッシュな仕上がり。これは劇場で観るべきだったなぁーーーーーーー。ああ、残念!

 もう最初から飛ばしまくりのボンドを熱演したのはダニエル・クレイグ。今回のボンドはシリアスに人を殺すし、物も壊す、その暴れっぷりたるや「マジですかっっ!!??」と驚かされっぱなし。これまでの007シリーズは、どこか時代劇にも似た「つくりごと」風味満載だったけど(そこが嫌いだったのだけど)、今回からはガラッと雰囲気を変えて、シリアス路線でいくわけね?いいですよー、それは。大賛成。

 ボンド・ガールは男に都合よく設定された美女と思っていたら、本作のヴェスパー・リンドはなんとも複雑な背景をもつ知的な女性。初めて目の前で殺しを見て、ショックを受け、怯えるシーンがイイ。シャワールームでのボンドとのやりとりも、これまでの007シリーズとはまったく違う。実にリアルでボンドが優しくて、こういう慰められ方はすごくステキ。共感できる女性として描かれるヴェスパーに私は好感をもった。

 さらにいつもの「M」はジュディ・デンチ。この人の顔見ると、「あー007だw」と思っちゃう。あいかわらずの威厳。無鉄砲なボンドに舌打ちしながらも、職務遂行に必要なバックアップは怠らず、しめるべきところでキッチリしめてみせる、さすがの貫禄だった。

 ダニエル・クレイグのルックスは、決してハンサムとは言えないと私は思う。けれどもたたみかけるように繰り広げられるアクションシーンを観ていると、その身体能力の高さや、ずば抜けた判断力にほれぼれさせられる。嘘っぽかった007がにわかに真実味を帯びた存在として意識される本作、私の中では「秀逸なアクション映画」として位置づけられた。あと20分短く編集してもらったらさらに見やすかったw これ、続編もできるらしい。絶対観たい!

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映画レビュー「トスカーナの休日」

2008-03-08 12:18:03 | 映画レビュー

「トスカーナの休日 UNDER THE TUSCAN SUN」2006年1月23日

【ひとこと】
 There is nothing to regret.

【物語のあらすじ】
 フランシスは書評なども書く作家。夫の浮気が原因で離婚にいたったにも関わらず、思い出深い家を追い出される羽目に。友達の好意で譲ってもらったイタリア行き観光旅行のチケット。気晴らしのつもりで旅立ったフランシスは、由緒正しい館をトスカーナで見つけた。心細い一人暮らしが、館に手を入れ、土地の人々と交流を深めるうちに、次第に充実したものになっていく。やがて出会った男・マルチェロと恋に落ち、幸せいっぱいのはずが、皮肉にも・・・

【感想など】
 ダイアン・レイン演じるヒロインの「心の再生」を描いた佳作です。なんといってもイタリアという土地の魅力が画面いっぱいにあふれていますよ。明るい太陽の光に満ちた美しい風景。これを観たら「行ってみたい!」と思わずにはいられませんね。

 ヒロインが見つけた館は「太陽に憧れる家」という意味のしゃれた名前がついている、元は伯爵一家が住まいにしていたところ。これが改装をすると見違えるくらい立派な家になるんですねぇ。最初の頃、知人は誰もいないトスカーナで、発作的に館を買ってしまったことを後悔していたフランシス。それなのに、家が少しずつ綺麗になっていくにつれて、彼女の心も癒されていくんです。このあたりの展開が実にいい。

 情熱的なイタリア男・マルチェロに口説かれて、恋に落ちた後のフランシスが活き活きと輝き始める様子なんて、ほんとにうっとりします。このまま幸せになるのね・・・と夢見てしまう観客の期待はあっさり裏切られるんですが(汗)。なにせ「情熱的な」イタリア男ですから、心変わりも早いこと早いこと!でも、マルチェロはいいこと言いましたよ。

「There is nothing to regret.」

 これですわ。これですよ。一目見て、恋に落ちて、君を愛した、そのことに後悔なんてない。俺は君が欲しかった。その気持ちに嘘なんてないんだ。ま、「勝手ないいわけ」ととっちゃうと、すげー腹立つ言い草ですがねぇ。ってか、おめー、もう新しい女作ってんじゃんっ!?と食ってかかることもできたはずなんですが・・・。

 でも、フランシスはあまりにも傷つきすぎていて、マルチェロに未練たらたらの文句を言う気力も失くしてました。あまりにも深すぎる悲しみと、突然すぎる事態の変化には、呆然とするしかないですから。嗚呼、せっかく離婚の痛手から立ち直ってたのに。

 そして、フランシスがどうするか、それはどうぞ映画をご覧になってください。彼女は自分が描いていた夢を図らずも実現させてしまいます。とても素敵な方法で。いつか列車が通ると信じて線路を引く、彼女がしていたことは、そういうことだったのです。

 誰だって別れは辛い、耐え難い辛さに苛まれるものです。できることなら、愛し合ったその瞬間に、時を止めてしまいたい。ずっと幸せなままに、その虹色の世界にとどまっていたい。けれど、時間は残酷にも人の気持ちを変えてしまいます。もう二度と戻ってはこない至福の時に、人は想いをはせるだけなんです。「あの頃はよかった。幸せだった。」と、涙を流して・・・。

 永遠の愛なんて、この世のどこにもありはしない。そうかもしれません。だから、探すんです。人は、探さないではいられないんですよね。その「瞬間」を。心から愛する人を。もしかしたら、運命の人がどこかにいて、自分を待っているかもしれない、そう信じていたいんです。

 人を愛するってことは、素晴らしいことですよ。たとえ、その想いがいつか風化してしまったとしても。その人を愛した事実は変わらず、思い出はいつまでも心に残り、人生を彩ってくれる、そんなものですよ。愛さなければ良かったなんて、思うのは悲しすぎる。生きることは、出会いと別れの繰り返し。何度でも出会って、それと同じ数だけ別れて、時には涙して、人は少しずつ成長するんですね。辛い恋であっても、決して後悔しないでいたいものです。

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映画レビュー「リトル・ミス・サンシャイン」

2008-03-06 07:26:56 | 映画レビュー
【ひとこと】
 負け犬ってのは、どうせダメだからと、やってみる前にあきらめる奴のことだ。

【物語のあらすじ】
 ニューメキシコ州アルバカーキに住むオリーヴ(アビゲイル・ブレスリン)は、ちょっと太目の眼鏡っ子。夢は子供のミスコンでクイーンになること。毎日ビデオで優勝したときの笑顔などを真剣に研究し、おじいちゃん(アラン・アーキン)といっしょにダンスを特訓している。地方予選で2位だったオリーヴ、「リトル・ミス・サンシャイン コンテスト」に繰上げ出場が決まり、カリフォルニアまで行かねばならなくなった。でも、お父さん(グレッグ・キニア)は「成功するための9段階」などという怪しいプログラムを売り込むのに躍起、娘のミスコンどころではない。お母さん(トニ・コレット)は自殺未遂後の精神状態が不安定な叔父さん(スティーヴ・カレル)を家に連れてきて面倒見ることになり、なんだかとてもイライラしている。お兄ちゃん(ポール・ダノ)は空軍パイロットを目指して沈黙の修行中で、会話は最低限の筆談のみ、「みんな大嫌いだ」と学校へも行かずにひたすら身体を鍛えている。頼みの綱のおじいちゃんも、老人ホームを追い出されて居候の身、実はこっそりヘロインをやっていたりする。てんでバラバラの一家だけれど、ここはひとつ可愛いオリーヴのために・・・・とみんなでカリフォルニアを目指すことに。一家6人黄色のオンボロミニバスに乗り込んで、過酷な旅が始まった!

【感想など】
 ハートウォーミングストーリーという宣伝文句の通り、本当に心温まる良い話!あんなにもバラバラだった家族が、旅を通して少しずつ歩み寄り、それぞれが成長し、絆を取り戻していく様子に、ラストは拍手喝采の感動作です。第79回のアカデミー賞で脚本賞を獲得した本作、祖父役のアラン・アーキンが助演男優賞、なるほどなるほど、納得の出来栄えでした。くすくすゲラゲラあっはっはと笑って、ほろりと泣けて、しみじみさせられて、スカッと爽快だった映画ですよ。

 なんといってもオリーヴ役のアビゲイルが可愛かったですねぇ~。歌や踊りが玄人はだし、とか言うんじゃなくて、なんとも言えない愛嬌があるんです。彼女がおじいちゃんに向かって翌日のコンテストに勝てるか自信がないなどと弱音を吐いて、ポロポロ涙をこぼすところなんて、ものすごくキュートでチャーミング。オリーヴはお父さんが「負け犬」「勝ち馬」と常に言っているせいで、自分が負け犬になったら父親が落胆し、自分を嫌いになるかも?と心配しているのですよ。この子がほんとにめちゃめちゃ可愛いから、映画そのものがほんわか温かく仕上がっていますねぇ。家族の絆を結ぶ要と言える存在です。一家の太陽であるオリーヴを 家族それぞれが思って行動するその姿は滑稽でも、なんだか応援したくなるのですよ。

 それとね、オリーヴの弱音を聞いたときのおじいちゃんのことばが、すんごいステキでしたよ~。「負け犬ってのは、どうせダメだからと、やってみる前にあきらめる奴のことだ。お前は負け犬なんかじゃないぞ。」って。このおじいちゃん、息子(オリーヴのお父さん)が仕事で手痛い失敗をしてしまったときにも、とっても温かい励ましをくれるんですね。道中ミニバスの中でお兄ちゃんに「助言」するくだりなんかは「チョイ悪オヤジ」全開w 不良老人っぽい風貌ですけど、人としての器が大きくて、魅力的な人物でしたよ。

 「イン・ハー・シューズ」で、キャメロン・ディアス扮するちょっとオツムの弱い妹にふりまわされる冴えない姉を演じていたトニ・コレット。彼女は本作で娘のために、家族のために、一所懸命がんばるお母さんを好演していました。この人は派手さこそないけれど、いい味を出しますね。脇役が出しゃばりすぎたら全体のバランス壊しますから、このくらいの力加減でちょうどいいんだと思いますよ。それはお兄ちゃん役のポール・ダノにも言えましたね。かなり見せ場のある役どころでしたが、いい塩梅に演じていましたよ。思わぬことから自分の夢をあきらめねばならない事態になり、自棄になるくだりはハラハラしてしまいましたけど、ティーンエイジャーの迷いや悩みをリアルに見せてくれます。あとね、結果論ですけど、叔父さん役のスティーヴ・カレルも良かったんじゃないですか?あのキャスティングで。あの役がロビン・ウィリアムスだったら、彼がぜーんぶもってっちゃいますから。

 なんにせよ、これはオススメの良作でした。100分という短めの映画ですし、PG―12指定なのがちょっと残念ですが。アメリカの子供ミスコンって変なのー、とか、州法ってめんどくさいなぁ、とか、いろいろ考えつつ、ロード・ムービーとしても景色その他を楽しめて、非常に良かったと思います。お金がなくたって、ツキがまわってこなくたって、大丈夫だ、なんとかなるさ!なんとかするのさ!と思わせてくれる1本です。

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映画レビュー「それでもボクはやってない」テレビ編集版

2008-03-05 08:26:11 | 映画レビュー

【ひとこと】
 真実は神のみぞ知るっていうけど・・・

【物語のあらすじ】
 フリーターの金子徹平は大事な面接を受けるために電車に乗った。途中、履歴書を持ってきたかどうかが気になり、確認しようと一時下車する。案の定、履歴書を忘れていたけれど、遅刻しては元も子もない、と慌ててまた電車に飛び乗った。だが、その満員電車の中で、あろうことか「痴漢」と間違われてしまう。「痴漢なんてやってない。俺じゃない。」必死で否定しても誰も聞いてはくれず、警察へ身柄を移される。そこでも「お前がやったんだろう?」とはなから決め付けられて、頑強に否認した徹平、とうとう拘留されてしまった。ストレスフルな取り調べ後、起訴されて、裁判にかけられることに・・・

【感想など】
 今年の日本アカデミー賞でも11部門にノミネートされていた『それボク』。テレビ編集版は、劇場公開版とだいぶ違うんだろうか?と思いながら観た。ひさしぶりの周防正行監督の新作、とにかく「すげぇーリアル」。痴漢冤罪事件を題材にして、かなり熱心かつていねいに取材した後、じっくり撮影しただけのことはあるんじゃないだろうか。

 正直、裁判の様子は本物を見たことがないのでよくわからない。しかし、非常にリアルに感じた。拘置所での様子(食事・睡眠・朝の身支度などの詳細)とか、取調べがどんな風に進むのかとか、体験の無い者にも実感できるような緻密さで表現されていたと思う。終始、「こんな風に扱われるのか。怖いなぁ。弁明はまるで無視されるんだ。問答無用だな。」と思いながら観ていた。無実でも、誰もろくに話を聞いてくれないのは現実としてそうなんだろう。警察や検察は最初から「クロ」と決めてかかる。証拠が無くても「お前だろ?」と自白を迫られる。弁護士も当てにできない。面会に来てくれる親とか友達とか、何をどうすればいいものかわからず、ただ慌てて、心配するだけで。

 主演の加瀬亮は「硫黄島からの手紙」にも出ているらしい。(そういえば録画しただけでまだ観ていない。)本作での演技はとてもよかった。不安、悔しさ、焦り、心細さ、情けなさ、実に真に迫っていた。特に印象的だったのは、拘置所での朝のシーン。洗顔やハミガキなどを追い立てられるように済ませているうちに、不意にぼんやりとして、にじむ涙を拭う。さまざまな感情が交錯しているんだろうと、観ているこちらまで辛くなるような演技だった。取り調べ中も、もちろん裁判でも、また無実を証明するための再現ビデオ撮影シーンでも、徹平は常に不安と戦いながら最善を尽くそうとしていた。判決を言い渡されるときの愕然とした顔から茫然自失へ、そして怒りとも呆れともいえない微妙な表情に変わる、この演技がすごい。これでアカデミー賞の主演男優賞を逃した(吉岡秀隆が『続・ALWAYS三丁目の夕日』で受賞)とは、不思議に思うくらいの熱演。彼は今後もきっといい演技をするだろう。次回作にも期待できる俳優だと感じた。

 脇役陣もいい。特に、もたいまさこのお母ちゃん。ろくに連絡もしてこない息子が「痴漢だ」と逮捕拘留されていると知った驚き。なんとか疑いを晴らそうと目撃者を探す真剣な顔。息子の無実を信じて、とにかく助けたいと行動する親の心理をよく演じていた。私は自分自身も家族も逮捕拘留されたことなどないが、もしも、そういう立場になったらどうするだろう?と、感情移入して観てしまった。拘置所に差し入れできるものとできないもの、具体的にはどのようなバックアップができるのか、etc.非常に勉強になった。

 主人公が警察でさんざん言われたこと、「自分がやりましたって認めりゃすぐに出してやる」これが実情なのだろうな、痴漢事件は。立証が困難な上に、数が多すぎる。殺人や強盗などと比べると、どうしても軽い扱いにならざるをえないのもわかる。しかし、痴漢をされた女性の身になってみれば、軽く扱っていいものでもない。実際にやった男は厳しく処罰してもらいたい。けれど、冤罪で人生を狂わされてしまった人にはまったく気の毒な話だ。現在の日本の裁判制度、警察の捜査のしかた、問題があるんだと周防監督は観客に提起した。それを観た私達がどのように受け止め、どう行動していくかで、少しでも問題が解決できればいい。女性としては、「痴漢」などという卑劣極まりない犯罪がなくなることを願う。


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映画レビュー「クイーン」

2008-03-04 15:26:47 | 映画レビュー
【ひとこと】
 神と国民に生涯を捧げたのに・・・

【物語のあらすじ】
 1997年の8月、ダイアナ元皇太子妃の交通事故死をめぐって、英国は悲嘆と混乱の中にあった。謀殺説もまことしやかに喧伝された事故当初、沈黙を守り続けていた英国王室。だが、マスコミは国民の怒りや憎しみが英国王室と女王に向けられていると連日報道し、女王は悩み苦しむ。すったもんだの末に、チャ-ルズと離婚して王室を離れたダイアナ、もう彼女の言動にふりまわされたくない、という女王の本音を承知の上で、ブレア首相は国民の声に耳を傾けるべきだと進言する。そして・・・

【感想など】
 アカデミー賞の主演女優賞を見事獲得したヘレン・ミレン。なるほど、これはまさにオスカーにふさわしい演技でしたよ。映画そのものは「英国王室を美化しすぎ」などの声も聞かれる内容ですけれども、ヘレンの演技は卓越しています。一般に、君主たるもの軽々しい発言は控えねばならないと言われます。私的なことよりも公的なことを優先するべきとも。封建主義の時代と違って現代では、国民の意向も無視できませんし、対外的な交渉なども大変で、女王の双肩にかかる重圧たるや想像を絶するところ。この映画では、女王の務めや立場などが実に詳しくわかり、それまで気難しい顔のおばさんでしかなかった女王が、かなり身近な存在に感じられます。

 ヘレン・ミレン演ずる女王は、普通の女性で、2人の孫には優しい気遣いを見せるおばあちゃんで、気さくなマダム。けれど、世界にただ一人の「英国女王」です。彼女の立場の難しさや、苦悩の深さは、映画の中でもポイントをきっちりおさえて表現されていました。神と国民に生涯を捧げる、それは生半可な覚悟でできることではなく、たしかに彼女は「偉大な女性」の一人。出て行った息子の元嫁のことなんて、ホントは知ったこっちゃないはずですが、そう言いたくても言えないのがツライですね。

 圧巻だったのはブレア首相に促されてロンドンに戻ってきた女王の戸惑いを表現したシーン。ダイアナに捧げられた花とメッセージを見て回りながら、自分に対する批判をひしひしと感じていた女王ですが、ある少女が手に持っていた花束を女王に捧げた瞬間、ぱぁっと安堵の表情に変わります。これが素晴らしい。怒りや憎しみを向けられることに対して苦痛を感じる女性、そんな顔を女王が見せたことなどなかったのですよね。周囲がみんな敵に見えていた女王の目にも、変わらぬ敬意をはらってくれる国民が見え始める、その演出は実に素晴らしく、人間らしい女王の一面をよく表していました。

 女王以外の王室の人々がどのような反応を示していたのか、映画で描かれたことがすべて真実だとは思いませんが、非常に納得できる話になっています。ダイアナは世界中の人々に同情され、愛された、悲劇のプリンセスでしたよね。けれども、英国王室にとっては「やっかいな存在」であったのはたしかです。裏の事情が語られた本作は、フィクションであったとしても、よくできていました。

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映画レビュー「イン・ザ・カット」

2008-03-03 12:58:59 | 映画レビュー
「イン・ザ・カット IN THE CUT」2005年10月9日

【ひとこと】
 ロマンティック・コメディの女王 メグ・ライアンが大胆な演技を披露!!!とセンセーショナルに報じられた作品(だったと思う)

【物語のあらすじ】
 フラニーは大学で文学を教えているお堅い女性。腹違いの妹とは仲良くつきあうものの、常に他人と一線を画すようにしか向き合えない。ある日、近所で猟奇的な殺人事件が起こり、刑事がフラニーの家にも聞き込みにやってくる。風変わりな彼女にどこか惹かれるものを感じた刑事・マロイは、「どこかで一杯飲まないか」と誘いかけ、深い仲に・・・。やがて、第二、第三の事件が二人の周囲で起こる。犯人は一体誰なのか?フラニーの身に迫る危険は?

【感想など】
 確かに、大胆でした。この映画、ジェーン・カンピオン監督がニコール・キッドマン主演で撮る予定だったそうですね。それをメグが「どうしてもやりたい」と申し出て、ニコールはプロデューサーにおさまり、撮影されたのだとか。

 ロマ・コメといえばメグと評されるほどの人気者が、なぜこれに出演しなければならなかったのか?私にはいまだに謎です。画は非常に美しいのに、サスペンスとしては不出来ですし、描きたかったテーマに今いち共感できない消化不良ムード満載でしたよ?

 カンピオン監督の意図したテーマは、おそらく「女性の性(さが)」なんですよね・・・。いつも要求ばかり多くて、「愛という言葉」や「形のあるもの」を欲しがり、男を悩ませる、どうしようもない習性というか。それをサスペンス仕立てにする必要性があったのかどうか、そこがまずは大きな疑問です。

 伏線は張ってあるのに、投げっぱなしが気になります。引っ掛けようと用意したキャラが「うう~~ん・・・こいつは要らない」ってか「逆効果?」だったり。犯人が連続猟奇殺人におよぶ経緯も必然性も動機もろくに語られないので、サスペンスとして観ちゃった人は「ええ!?」でしょう。

 まさかスプラッター映画に本格的に出演したくてこれに出たわけじゃないだろうし、メグは何を「ステップ・アップ」させたかったのかしら???それとも、そろそろ脱いでおかないと、女優としては幅が狭まるわ!と思った?

 メグのボディは、というと、背中や脚のほっそりした感じはおそらく日本人一般に受けるでしょう。胸は・・・・映さない方が良かったのでは?カンピオン監督って、けっこう意地悪ですね。それともニコールが割り込んできたメグに意地悪したのか?もうちょっと綺麗に撮ってあげようと男性監督なら思ったんじゃ?ファッ○シーンもシャロン・ストーンあたりがやりそうな感じ。あんまり感心しませんでした。

 メグ・ライアンの熱烈なファンで、彼女が出ていればなんでもいいとおっしゃる方にお薦めです。

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映画レビュー「美しき運命の傷痕」

2008-03-01 19:28:24 | 映画レビュー
映画レビュー「美しき運命の傷痕 L’ENFER HELL」2008.2.29

【ひとこと】
 不幸てんこ盛り。

【物語のあらすじ】
 ある事件のために父親を亡くし、トラウマを抱えた美しき三姉妹と母親の物語。ポーランドの巨匠、故クシシュトフ・キェシロフスキ監督と執筆パートナーのクシシュトフ・ピエシェビッチの共著である脚本を元に「ノー・マンズ・ランド」のダニス・タノビッチが脚色・監督を務めて製作された映画。天国・地獄・煉獄の3部作中、第2作に当たる

 長女・ソフィー(エマニュエル・ベアール)は二児の母。カメラマンの夫(ジャック・ガンブラン)が他の女と深い関係にあるのではないかと疑って、証拠を探し、密会現場を突き止め、夫の愛が冷めてしまったことを嘆く。彼女は二人の子供と共に生きていこうと、最後には夫を拒絶する。

 次女・セリーヌ(カリン・ヴィアール)は異性と接することに不慣れで、愛することにも愛されることにも臆病。老いた母(キャロル・ブーケ)を一人面倒見ている。自分に好意をもってくれているのかと思った男性(ギョーム・カネ)にも、不器用っぷりをさらけだし、その男性から過去の意外な真実を告白される。

 三女・アンヌ(マリー・ジラン)は父親ほども年齢の離れた大学教授(ジャック・ペラン)に恋してしまい、彼を執拗に追いかける。自分には彼しかいないのだ、などと言い張って、結局周囲の人間を皆不幸に巻き込んでしまう。

【感想など】
 三者三様、というか、この場合、母親も入れると四様なのかな?とにかく、どこまでも不幸な女性達の悲劇を描いた映画で、悲しすぎる話に鑑賞後おもいっきり暗くなった。あまりにもかたくなな母親が犯した罪は、死んでも償えないと私は思う。もうちょっと彼女に分別とか余裕とか憐憫の情とか理性とかがあったなら、三人の姉妹はこんなにも不幸にはならなかったような・・・。「何も後悔していない」とキッパリ言い切る人を潔いと思う私でも、この母親の言動には首を傾げるし、娘達三人の人生をめちゃくちゃにしたのは、父親ではなく母親ではないのかと感じた。アンヌは母を「王女メディア」になぞらえていたけれど、咎なく殺された(精神的に、ね)に等しい娘達から優しくされるのを当然のことと母は思っていたのだろうか?むしろ誰も会いに来ないことが当然では?

 次女のセリーヌは随分優しい、よくできた娘なのだと思える。かたくなで冷酷かつ気難しい母に、親身になってやっていたのは彼女だけに見えた。その不器用さもせつない。優しく美しいのに、愛され方を知らない女、それはたしかに「不幸」だ。好意の示し方を知らず、他者から捧げられる愛を受け止める術もわからない。まるで無垢な子供のように、戸惑ってみせたり、かと思うといきなり裸になってみたり。明らかにバランスを欠いた行為が、彼女の傷の深さをあらわしている。

 しかし、ソフィーの夫に対する愛し方はあまりにも自分勝手だ。実際、夫の不倫相手は実在したわけで、彼女の勘はあたっていたのだが、その確かめ方がいただけない。どんなに美しくて貞淑な良き妻でも、嫉妬にかられて愛人の部屋にしのびこむなんて決してやってはいけないと思う。ソフィー自身が言っていたけれど、あれは「自分を辱める」行為だ。ミジメになるだけとわかっていて、ああしないではいられなかったソフィーの不安や不満を痛々しく思う。「私だって女よ。」と夫にアピールしてみせる、あれも、男にすればゲンナリさせられるしぐさに違いなく、エマニュエル・ベアールの美貌がよけいにイタイ。あぁ、あんな美女でも、ナイスバディでも、男は妻に飽きるものなのね、不倫相手の方が魅力的に見えちゃうものなのね、と、いまさらながら確認させられるとツライ。

 三女・アンヌは若くて可愛く、他にいくらでもふさわしい相手がいそうに思える。なのに、父親ほども年の離れた教授に恋して、しつこく追いかけ、別れを告げられてもなお離れられずにいる。その恋心はいじらしいが、やっていることは不幸を撒き散らす行為に等しい。何も知らなかった教授の家族にまで、不快な想いをさせる権利が、果たしてアンヌにはあるのだろうか?幼くして父を亡くしたことは可哀想だけれども、それだからといって人の家庭を壊す権利などないはず。一途な女も度を越すと手に負えない。思い込みの激しさは母譲りか。なんにせよ、自分で自分を追い詰める恋しかできないなんて、やりきれないと感じる。

 それにしても、ほんの少しだけ態度や言葉を改めたら、三人(いや四人?)とももっと愛されて、幸せになれるだろうに・・・・と思ってしまったことよ。それができないから皆苦しむのだけど。「変わる」ってのは、言葉で言うほど簡単じゃないから。たしかに、これは地獄の苦しみを描いた作品だった。なんで「女」ってこんな哀しい存在なのだろう?簡単なことのように思えるのに、ただ愛する人に愛されて満ち足りる、それだけのことがこんなにも難しいなんて・・・。

 「赦す」ことができない、それこそが不幸の根源であり、地獄へ続く道を自ら歩んでしまう元凶なのだ。親の影響とは、かくも大きいのか。この映画では、ラストの母と三人姉妹の対話場面で「再生」へと向かう母子を象徴的に表現していたらしい。けれども私には、そのようには受け取れなかった。自らを強引に肯定してしまう母に、あきれる三人の娘達、と見えた。それは私自身が「赦す」こと抜きに人生を変えることなどできないのでは?と思っているから。

 映画の冒頭で流れるカッコウの托卵、誤解や偶然によって変えられた運命を暗示するものと読み解かれるのが一般的らしい。私はこれを非常に理不尽な外部からの干渉により壊されたhomeの映像として観た。いわゆる「災難」がふりかかって、本来帰属すべき場所を失ってしまった三人の姉妹、その不安定な人生の礎が、カッコウによって卵をダメにされた鳥の巣のように思えた。

 天国編にあたる「HEAVEN」を観たのは随分前だ。ケイト・ブランシェットが美しかった。トム・テイクヴァ監督の撮った映像も素晴らしかった。物語そのものがとても好きだった。この「美しき運命の傷痕」は、万華鏡や螺旋階段をモチーフに撮られたシーンなど非常によく、嫌いではないが、やはり観ていてツライものがあった。傷を負った人間が、再生するのには何が必要なのか・・・。これは「トリコロール」三部作でも描かれた主題。キェシロフスキの伝えたかったものをはたしてダニス・タノビッチは十分に表現できていたろうか?

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