積ん読の部屋♪

本棚に積ん読な本を読了したらばの備忘録。

川端康成『掌の小説』あらすじと感想

2022-06-15 09:12:42 | 紙の書籍
新潮文庫 川端康成『掌の小説』を読了しました。

あらすじと感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。





【目次】
骨拾い
男と女と荷車
日向
弱き器
火に行く彼女
鋸と出産
バッタと鈴虫
時計
指環

金糸雀

写真
白い花


落日
死顔の出来事
屋根の下の貞操
人間の足音

二十年
硝子
お信地蔵
滑り岩
有難う
万歳
胡頽子盗人
玉台
夏の靴

雀の媒酌
子の立場
心中
竜宮の乙姫
処女の祈り
冬近し
霊柩車
一人の幸福
神います
帽子事件
合掌
屋上の金魚
金銭の道
朝の爪

恐しい愛
歴史
馬美人
百合
処女作の祟り
駿河の令嬢
神の骨
夜店の微笑
夫人の探偵
門松を焚く
盲目と少女
母国語の祈祷
故郷
母の眼
三等待合室
叩く子
秋の雷
家庭
時雨の駅
貧者の恋人
笑わぬ男
士族
質屋にて
黒牡丹
日本人アンナ
雪隠成仏
離婚の子
顕微鏡怪談
踊子旅風俗
望遠鏡と電話
鶏と踊子
化粧の天使達
白粉とガソリン
縛られた夫
舞踊靴
楽屋の乳房
眠り癖
雨傘
喧嘩

化粧
妹の着物
死面
舞踊会の夜
眉から
藤の花と苺
秋風の女房
愛犬安産
ざくろ
十七歳
わかめ
小切
さと

五拾銭銀貨
さざん花
紅梅
足袋
かけす
夏と冬
笹舟



秋の雨
手紙
隣人
木の上
乗馬服
かささぎ
不死
月下美人

白馬

めずらしい人 
解説 吉村貞司


【あらすじ】
122編と作品数が多すぎるので、一部のみにさせていただく。

「骨拾い」
両親を早くに失った私は、幼い頃から祖父を一人で介護していた。私が16歳の時に祖父が亡くなり、祖父は火葬された…。

「指環」
「伊豆の踊子」の原形をなす話。

「夏の靴」
謎めいた高貴な少女が馬車を追いかけ…。

「弱き器」
砕け散ってしまった観音像を巡る話。


【感想】
全般的に女々しく、いい意味での著者の変態性がそこかしこに現れている。決して本人の言動というのではなく、作品の世界観のようなものについてだ。ここには収録されていないが、『片腕』などはその最たるものだと思うし。
読んでいると全編に流れる時代がかった日常感、貧しさに正直なところうんざりしてくる。あえて具体的には書かないが、いろいろな差別にもうんざりする。そういう時代だったのだと思うので、それはそれで仕方がないのだろう。いい悪いではなく。
そして、心底女性が嫌悪と恐怖の対象なのだろうと感じる。田山花袋や永井荷風などとは、全く違う女性の描き方をしているし。

前半に多い“夢”のような“現実”のような作品は、読んでいて変な感触を感じる。そこかしこに“狂気”をはらんでいて、不穏な影を落としている。
同じ“夢”つながりでも、夏目漱石や内田百閒とも違う感じ。完全に“夢”でもないし、“日常の延長線”のようでいてそうでもないような…。
“狂気”と“美”は表裏一体なのだと思う。この短編集を読んでつくづく感じたことだ。


【余談】
本当は川端康成の『片腕』が読みたかった。ちくま文庫『川端康成集 片腕 文豪怪談傑作選』に収録されているが、公式サイトやほかのオンラインショップをいつ見ても〈在庫なし〉になっている。書店でも取り寄せができなかった。唯一、見つけたのは古本だけ。
決して潔癖症ではないが蔵書は新品が好きなのだ。図書館で借りるのはいいのだけど。
仕方がないな~と、代わりにこの本を購入した。まだ『片腕』を新品で購入することは諦めていない。

短編集とはいえ600ページを超す厚さ3㎝の文庫本は、さすがに読み応えがあった。というより、読み終わるまで時間がかかった。
この短編集は、川端康成がほとんど20代に書いたものが収められているということだ。その十数年後に、「私の歩みはまちがっていた」と断言したらしい。
そうなのか…。凡人にはわからないが。

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荒木健太郎『もっとすごすぎる天気の図鑑』内容と感想

2022-05-21 18:46:05 | 紙の書籍
KADOKAWA 荒木健太郎『もっとすごすぎる天気の図鑑』を読了しました。

内容と感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。




【目次】
はじめに
キャラクター一覧&紹介
1 すごすぎる雲のはなし
コラム1 積乱雲には地域によって違う名前がある
2 すごすぎる空のはなし
コラム2 気象庁ってどんなところ?
3 すごすぎる気象のはなし
コラム3 気象研究所ってどんなところ?
4 すごすぎる季節のはなし
コラム4 髪の毛で湿度がわかる
すごすぎる天気のはなし5
おわりに
参考文献・ウェブサイト・写真提供
さくいん
SPECIAL THANKS


【内容】
雲、雨、雪、虹、台風、竜巻など空と気象にまつわる、おもしろくてためになる知識をやさしく紹介されている。


【感想】
前著の『すごすぎる天気の図鑑』をよりわかりやすく改訂した感じの本。総ルビはそのままに可愛い♡キャラクターのイラストやフローチャートが増え、さらに老若男女に読みやすくなったと思う。お子さまにも断然おすすめ♪
今回も参加させていただいた「先読み企画」で返信した内容が、フィードバックしていただいたようで嬉しい♪ 少しでもお役にたてたかな?
初めて手にする「空と雲・天気」の本としてとにかく推したい一冊!


【余談】
今回で著者の「先読み企画」に参加したのが3回目になる。Twitterでフォロー、「先読み企画」がtweetされたら返信して、PDFのリンクを教えていただく。それをDLして読んでから感想を返信する。
フィードバックされたものは膨大な量だと思う。それにひとつひとつ返信してくださる誠実さに感動する。
参加された方は巻末のスペシャルサンクスに名前(ニックネームでも)を載せていただけるのだ。これが嬉しい~♪
大切なのは正しい知識をもって空と雲を愛でて、防災に繋げることだと思う。これからも愛でますよ~♡

ちなみに今、一番売れている天気の本らしく、なんとすでに25万部突破! この出版業界が厳しいご時世に紙の書籍がこの部数とは。すごいことだ~!


前著と並べてみた♪



著者の蔵書を並べてみた♪
ちなみに、難易度は左上から右上に向かって下がる。左下の2冊は絵本で可愛いのに泣ける。




本を持ってお気に入りの珈琲専門店で読書タイム♪
静かにクラシックが流れている素敵なお店です。珈琲ももちろんおいしい♡




【リンク】
興味のある方はぜひ著者のSNSもご覧ください。
Twitter 荒木健太郎(@arakencloud)
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カーソン・マッカラーズ『結婚式のメンバー』あらすじと感想

2022-04-27 10:12:41 | 紙の書籍
新潮文庫 カーソン・マッカラーズ『結婚式のメンバー』を読了しました。

あらすじと感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。





【目次】
PART ONE
PART TWO
PART THREE
訳者解説

【あらすじ】
この街を出て、永遠にどこかへ行ってしまいたい―むせかえるような緑色の夏、12歳の少女フランキーは兄の結婚式で人生が変わることを夢見た。南部の田舎町に暮らし、父や従弟、女料理人ベレニスとの日常の倦み、奇矯な行動に出るフランキー。
狂るおしいまでに多感で孤独な少女の心理を、繊細な文体で描き上げた女性作家の最高傑作。


【感想】
兄の結婚式の前後を淡々と描いている。舞台は第二次世界大戦中のアメリカ南部の田舎町。夏は気狂いな緑色をしている。
思春期に入りかけた12歳、身長は伸びすぎ不器量な容姿で怠け者、おまけに意地悪な性格のフランキー。この少女には共感できるところがほぼほぼない。珍しい主人公だと思う。
フランキーはいらいらするほど自己卑下と妄想に憑りつかれている。突拍子もない行動を起こしては、自らの首を絞めている。何度も何度も。

読みながらフランキーを不快に感じつつ、胸の奥底がちりちりとする感覚に襲われる。これはなんだろう…?
自分も同じ年頃に感じていた感覚があることに気づいた…。行き場のない感じ、世界や人と繋がりたいという欲求。おそらく、ほかの人たちにも大なり小なりある感覚なのではないだろうか?

この物語は「人生とは思うようにならない」ことを教えてくれる。それは哀しいけど真実なのだと思う。


【余談】
この本はどこかの書評かなにかでおすすめされていたので読んでみた。作者の傑作とされていて、自伝的要素が強い作品だという。納得。訳者の解説を読むと、作者の背景も知ることができておもしろい。
《村上柴田翻訳堂》シリーズ、作家 村上春樹が翻訳している作品のひとつ。
翻訳ものは読みづらいものが時折あるけど、この作品はするすると読める。おすすめの一冊。



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西條奈可・宮部みゆき 他『なさけ<人情>時代小説傑作選』あらすじと感想

2022-03-17 15:37:40 | 紙の書籍
PHP文芸文庫 西條奈可・宮部みゆき 他『なさけ<人情>時代小説傑作選』細谷正充 篇を読了しました。


あらすじと感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。





【目次】
善人長屋 西條奈可
抜け殻 坂井季久子
まぶたの笑顔 志川節子
海の紺青、空の碧天 田牧大和
地獄染 村木嵐
首吊り御本尊 宮部みゆき
解説 細谷正充


【あらすじ】
善人長屋 西條奈可
お縫は千七長屋の差配の娘。巷では善人長屋といわれているここは、実は住人たちはみな訳ありだった…。

抜け殻 坂井季久子
向島に住まうおくめは50すぎの市兵衛の囲い者。おくめはかつては金栄堂という金つば屋の嫁だったが、息子の栄太と浅草ではぐれてしまい離縁されてしまった。

まぶたの笑顔 志川節子
芽吹長屋のおえんは、かつて松井屋の嫁だった。向島で息子の友松とはぐれ離縁された。

海の紺青、空の碧天 田牧大和
長太郎の姉お芳が安芸から江戸へ嫁ぐことになった。長太郎はこれがおもしろくない。なんとしても縁談をこわしたいのだ。

地獄染 村木嵐
新吉と奉公先の一人娘お文、佐吉とお袖。この二組の若い男と女は実は…。

首吊り御本尊 宮部みゆき
捨松は上総屋の奉公人でまだ十一。奉公が辛くて実家の長屋に逃げ帰ったが、母親は自分を見ようともせず、ただ泣くばかりだった…。


【感想】
善人長屋 西條奈可
長屋の住人がみな悪人という設定に吹き出す。加助だけは本当に真人間だったのに、長屋を追い出されずおいてあげることにするのがほっ。。とする。

抜け殻 坂井季久子
息子を失って抜け殻になってしまったおくめが痛々しい。最後はほんのりと元さやに戻れそうな予感に希望を感じる。

まぶたの笑顔 志川節子
息子を失ってしまったが、喪失と悲しみを乗り越え、前にすすもうとするおえんに幸あれと思う。

海の紺青、空の碧天 田牧大和
シスコンの長太郎がおかしくて苦笑もの。最後はふふっとなる。

地獄染 村木嵐
このアンソロジーの中で唯一、胸が悪くなる話。悪党の新吉(佐吉)に腹がたつ。お袖もお文もこんな男に惚れて哀れだ…。

首吊り御本尊 宮部みゆき
貧乏人の性がどうしようもなく辛く悲しい…。子は親を選べない。暮らしが苦しいのになんで子を次々とつくるのだろう?
土蔵の壁の折れ釘にぶら下がっていた捨松の母親が、いろんな意味で恐ろしい…。


【余談】
首吊り御本尊 宮部みゆき は、新潮文庫『幻色江戸ごよみ』に収録されていて読了していた作品だった。どうりで既視感があると思ったよ~。
今、ブログ内を検索してみたら、読了して記事をアップし損ねてた。あらら。








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カレル・チャペック『園芸家12カ月』内容と感想

2022-03-05 15:16:33 | 紙の書籍
中公文庫 カレル・チャペック『園芸家12カ月』小松太郎訳 を読了しました。

内容と感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。





【目次】
庭をつくるには
園芸家になるには
1月の園芸家
 種
2月の園芸家
 花つくりのコツ
3月の園芸家
 芽
4月の園芸家
 労働の日
5月の園芸家
 恵みの雨
6月の園芸家
 野菜つくり
7月の園芸家
 植物学の一章
8月の園芸家
 シャボテンつくり
9月の園芸家
 土
10月の園芸家
 秋のうつくしさについて
11月の園芸家
 準備
12月の園芸家
 園芸家の生涯について
訳注
解説 小松太郎
新装版解説「愛好家」礼賛 阿部賢一
参考地図


【内容】
われわれ園芸家は未来に生きているのだー。
草花をこよなく愛したチェコの作家、カレル・チャペックが描く、園芸家愛好家の幸福な熱狂に満ちた一年。そのユーモラスな筆致で世界中の読者を魅了し続ける、無類に愉快な名エッセイ。


【感想】
園芸あるある♪な文章が延々と綴られている、とても楽しいエッセイ。カレル・チャペックの実兄が描く挿絵も可愛い♡
ただ、どうしても全編、田口トモロヲの顔が浮かんでくるのには困った~。NHKのドラマ『植物男子ベランダー』好きだったからね。


【余談】
文庫の帯には、園芸王子の三上真史が爽やかなお顔で文章を載せている。彼がNHK『趣味の園芸』のメインMCから外れた頃から、番組があまりおもしろくなくなってきたので、最近はもうほとんど観ていない。
いや、別に村雨辰剛 はいいんだけれども、氷川きよしはこの番組向きなんだろうか?とか思ってしまうし。バラエティ色が強くなってどうもね…。


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