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蔵馬ウケネタ、日常のことなど思った事を綴る。

赤い恋色/飛蔵小説/

2019年02月11日 00時44分47秒 | 蔵馬受けblog内小説

以前ブログに書いたものを、少し長く直して小説にしてみました。
あらすじだけバーッとブログに書いたものを、組み立て直してみました。



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深々と降る雪は、白い肌をさすようだった。

「はあ…」
息を吐けば白く消えた。肌が震えてるのがわかっていても、いつもの速さで歩けず幾らも進めない。
寒さでは気持ちも落ちるばかり…。自然、ゆっくりになっていく。夜の八時も過ぎ、空気は冷たさを越して
氷になったような気さえした。
(会いた
いな…)
最近は残業続きで、言えと会社を行き来するだけ。帰ったらベッドに身体を投げ出す…そればかりだった。
こんな日々が続いて、ふと浮かぶのはあの人のことばかり。凍るような空気の中、積もる雪は、エントランスを
埋めていた。オートロックでも、キーを挿す入口には雪が落ちていて。ため息を吐くしかなかった。
靴でそれを蹴ると、蔵馬は白い息を吐いた。
魔界はどうなっているかな…。
魔界にも雪なんか降っているのかな。よく考えたら…魔界に生きていたのが遠い昔で、よく思い出せない。
そう思うと、笑えてきた。長く生きてきた割には、覚えていない。武術会で戻ったときには…意識も記憶も戻った気が
したけど。
そう思うと思い知る、今、こんなに人間界に馴染んでいる。

魔界が遠く感じる。確かにそこに住んでいたはずなのに。ふと蔵馬はマンションの前に外灯を見た。
「飛影……」
魔界に戻って、あのひとについていけるのだろうか。迷っているわけではないけれど。人間の時間に慣れてしまっている。
それでも、この先同じ時を過ごしたいのはあのひとだけだ。


「冷えるぞ」
背中から降ってきた声に、びくんと、肩が跳ねた。
この声!
「えっ…」
バサッと、蔵馬を包む音。黒衣が、黒髪を包んでいた。呆けた瞳をした蔵馬に、飛影は黙っていた。バッと
振り返ったのは蔵馬だった。





「風邪をひく」
眉を寄せた飛影の機嫌が悪いのは、明らかで。ぐいと、飛影は蔵馬の手を掴んだ。
「来い、気をつけろ」
「えっ……」
来いってどこに、と言う言葉は、消えた。気付けば飛影の黒衣の中。ふわりと、蔵馬は腕の中に抱き込まれていた。

ハッとすれば、そこは見たことのない花の広がる丘だった。
「なに、これ……」
赤い花が、蔵馬の周りを取り囲んでいた。そっと蔵馬のからだを置くと、飛影は囁いた。
「触れて見ろ」
この空気…人間界の空気はない、魔界の空気。なのに人間界のような街。ベージュの屋根が並ぶそこは…石畳の続く、
海辺の街のようだった。その海辺に、赤い花が咲いていた。
「あったかい……」
花びらが、暖かかった。
「この花は熱を持っている」
海辺に赤い花が広がっていた。その中に伏せた蔵馬の、からだを飛影が包んでいた。黒衣の中で抱きしめられて、
蔵馬は花に触れた。
「ここは、偶然パトロールで見つけた」
海辺なのに、真っ赤な花が咲き誇っている。
「一年中、咲いている花だと聞いた」
花畑の中で…蔵馬のからだを抱いた。抱きしめられて、口の中に…飛影の口の中に何かが見えた。


「あっ……ん」
後ろから、抱きすくめられて蔵馬の唇に何が触れた。飛影の唇。蔵馬の顔をうしろ向かせて、飛影が口づけていた。
花を含み、飛影の唇が蔵馬のそれに触れた。暖かい…花びらが暖かかった。熱を含む赤い花びらは蔵馬の口へ伝い、
そして舌に重なった。じゅる、と言う音がして蜜が広がる。
「んっ……」
ごくんと、蔵馬の喉を通るもの。花びらが喉を落ちていく。それは熱さのまま、蔵馬の喉を温もりに染めていく。
「……っ」
後ろから抱きすくめたままで、蔵馬はぐっと首に力を入れた。熱さだけ口に合って、一番触れたい者が、ない。
「ひ。え……」
もっと、飛影の腕を感じたい。
「寒くないだろ」
「そ、だけど……」
そうじゃない。
不意に訪れた飛影と、予想できなかった温め方に、蔵馬の胸に火がついていた。
「もっと…あっためて」


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