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蔵馬ウケネタ、日常のことなど思った事を綴る。

お久しぶりの ブログ内小説 🌸 C101ありがとうございました(委託)&一人語り

2022年12月31日 18時44分14秒 | イベント、同人誌関係
こんにちは。今日はお久しぶりのブログ内小説です。
ふと、こういう話もいいなと思い書いてみたくなりました。

その前に。
今回 C101(冬コミ)にて、
ある屋敷の主人飛影に仕える蔵馬の片思い話
”✿鈴蘭の口づけと秘めやかな花の蜜 R18
本を手に取っていただきました方々、ありがとうございました。
委託で東6タ34a AZUREDRAGON 様で出していただいた本です。

思い切り内容はパラレルで、でもちゃんと飛蔵になっています!
飛影を飛影らしく書くことを意識していたので、
この本を書くとき飛影のことばっかり考えていました。
この時飛影らしい感じだったらどうやって言うのかな…とか。そういう感じで。
あまり長くしゃべらせたくない、でも大事なことを込めたいという。

逆に、(唐突に名前出しますが)
黄泉なら一々要らないことまでしゃべりそう。
長々と蔵馬への気持ちを語りだしたり…。
飛影はそういう感じではないのでサイトの小説書いていても、
「長くしない!でも気持ち伝える!」って意識します。


☆彡この本久しぶりの本で、今回C101では
東6タ34a AZUREDRAGON 様で委託をしておりました。
久しぶりの本で、色々、思い出しつつ書いたのですがとても楽しかったです。

蔵馬の片思い本、蔵馬が飛影に寄せる思いをえがいた話で、こういうテイストの
蔵馬を書くのはとても楽しかったです。
絵を描いてくれた SEI様ありがとうございました。




憤る気持ちとか抱きながらそばにいる蔵馬、
その蔵馬をずっとそばにいて見てくれている人もいる、
片思いだけではなく、ずっとそばにいる人の大切さも描きました。
※この本は一部私のところにもあるのでサークル参加するときに持っていきます。
➡サークル活動復帰すると以前告知したのですが多分短期なので、スケジュールの関係で
幽白オンリー出られないので、出られるイベントに出ると思います。
また近くなったら告知しますが、復帰する期間、よろしくお願いいたします。
この話出したいな、と思っている間サークルやると思いますので…。


鈴蘭の口づけと秘めやかな花の蜜 手に取ってくださった方々、ありがとうございました。
久しぶりに作った本を手してくださった方がいて本当にうれしいです、ありがとうございました。

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蔵馬も飛影も逆らえないし隙間をつくことが出来る人、といえばやっぱり
躯様で…。本気な躯様ではないけれど、蔵馬を見ていたら会いたくなってしまうというね。

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”その距離は。近くて遠い”
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一年もそろそろ終わりになる12月…魔界にも冬は来ていた。
吹雪の夜が過ぎ、躯は部屋のソファーに腰掛けていた。

「さっみぃなあ」
魔界育ちで、育った環境も過酷な故、身体の寒さも心の寒さも慣れてはいる…はずなのに。

最近顔を出さない小さなあの子が、気になっている。
窓の外を吹きすさぶ風を見て、コーヒーカップを手に取った。
「あっちも、寒いだろうなあ」
ソファーにある、小さな包みに手を伸ばし、立ち上がった。

キラキラと光る金色のリボンと、膨らんだ大きな袋。
金色のリボンのラッピングと、薄ピンクの袋が、魔界の女王の持つものとは思えない
かわいらしさを醸し出す。

コーヒーを一気に飲み、躯は雪の積もる、百足の門をくぐった。

最近何も刺激的なことがない。パトロールで出会う妖怪たち征伐したという報告ばかり。
百足の中のもめごとも解決が早い。読みかけの本も、進まない。
…会いに行ってみるか。

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「さむっ……」

12月も終わりに近付けば、手は凍えて、夜の住宅街は無言の人々ばかりが行きかっている。
22時。駅の改札をくぐり急ぎ足で歩いても、寒さはますばかりだ。

白い息を吐いて、蔵馬はコンクリートを見た。
こんな日…あの人も寒いだろうな。一瞬思い、そして自嘲した。
そんなはず、ないか。雪の、氷の国の人だから。
でも、会いたいと思ってくれているかな……。
小さく笑い、マンションの自分の部屋のドアを開けた。
そして一度立ち止まった。

身体が、重い。
額に手を当てれば、ほんの少し熱を帯びていた。
「え……」
今こんな。だるいと思ってはいたけれど……。
冬のこの時期、倒れるわけにはいかないのに。
音のしない部屋が、蔵馬を迎える。
「はっ……」
深い息を吐いた。足先まで冷たくなり、肩が冷え切っていた。

コートを脱ごうと、そっと手を伸ばした……一瞬感じた気配。
「あっ……」

深い碧の瞳が開いた。
誰の気配もないはずの部屋に…静かに腕を組んで佇んでいる人。

「む、くろ」
「よぉ、元気か、人間の仕事も大変…」
そこで躯の言葉が切れた。

白いフワフワのコートを羽織り立っている躯を蔵馬が見つめ……しゃがみこんだ。
「どうしたっ!」
蔵馬の肩からずりおちたコートをとり、躯が掌に触れた。
「お前……」


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ふわりと、蔵馬の身体は浮いていた。躯の腕の中に……。

「ここで、いいのか」
目に入ったベッドにその体を落とすと、そのわきに躯がしゃがみ込んだ。
「は、い。ありがとうーーーーー」
言葉が、続かなかった。
氷の様に冷えた手が、布団の脇からはみ出た。
「な、にか……大事な用事で…ここに」
心配げに、蔵馬は躯を見た。丸い瞳が頼りなげに躯を見つめていた。
相変わらず、吸い込まれそうな瞳。柔らかな微笑みは影を潜め、蔵馬は体を震わせていた。

「別に。お前のことを思い出しただけだ」
ふっと、躯は立ちあがった。

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そっと額に当てられたものに、蔵馬が、あ、と言った。
躯の首にかかっていたストールを、濡らし蔵馬の額に当てられていた。
「ありがとう、ございます」
弱く、蔵馬が言った。
「本当に、何か大事な用事では」
「別に。ちょっとお前の顔見たくて来てみただけだ」
この時期浮かれた人間どもが落ちてきてばかりで飛影は駆り出されてばかりだ。
自分の大事なものに会えなくて、このところ飛影の機嫌が、黒龍よりも荒れていた。
しかし実際、邪眼師など都合よく見つかるものではない。
隙間なく埋められていくスケジュールに、飛影は次第に無言になっていた。

飛影の代わりにと思ったのは、吹雪が収まった夜。
様子見にいって……軽い気持ちで思い立った、吹雪が去った日。

こんな、弱ったこの子を見るとは思わなかった。

思い切り優しく、頬を上げて躯は微笑んだ。
「待っていろ」

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「これ……」
けふっと、せき込みながら蔵馬はそれを見た。

小さな器に盛られた、おかゆだった。奥を見れば、土鍋に湯気が立っている。
「このくらい俺も作れる」
蔵馬の肩に手を回し……匙でおかゆを掬い、躯が暖かい手を伸ばした。

瞬間、ガタんと音がした。
閉じられていた窓を開ける音だった。二人の視線が、そちらに向いた。

「何忍び込んでやがる」
飛影だった。荒れた妖気が、飛影の身体の後ろから漂っては部屋を支配する。

「なんだよ、おでましかよ。寝込んでいるのを看病して…!!」
ぐいと、躯の服を、飛影は掴みかかっていた。

「どうしてお前がここにいるかと訊いているんだ!なんでもいい!出ていけ」
ふふん、と躯が笑った、大声で。
「せっかくおかゆまで作ってやったのになあ」
「飛影っ、いきなり来たけど、躯はわざわざ…」
言いかけて、蔵馬は喉をかきむしった。
「お前はしゃべるな!」
蔵馬の身体を抱きしめるように手を伸ばし、飛影が躯をにらんだ。
バチバチと言う空気が触れ合うように見える二人…けれど躯は余裕を湛えて、長い丸い瞳を転がした。

「クリスマスプレゼントまで持ってきたのによ」

キラキラと光るリボンと袋を、ソファにおいて、窓の取っ手に足をかける。


「ブランケットだ。大事に使えよ」

手をひらひらと振り、躯は気配を消した。

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「蔵馬……」

何を考えているか普段は分からない飛影のまなざしに、明らかな心配が浮かぶ。
蔵馬の頬に触れる手のひらが暖かい。
飛影の、温もりだ。いつも、寒い季節蔵馬に触れるとき、飛影の手は暖かい。
飛影全体から漂う、包み込むような空気が、蔵馬を満たしていく。

「大丈夫。ちゃんと休めば治る、から」
言う蔵馬に、匙を飛影はとった。
何度も、飛影は粥を蔵馬の口に運んだ。

「あいつが作ったものをとは、気に入らないけどな」
ほんの少しできた隙間に蔵馬のところに来るしかできない自分のもどかしさが飛影を包んだ。

「ごめんなさい……せっかく…きてくれたのに」
沈んだ声は、床に吸い込まれて消えそうなほどだった。

どんなに遠い道を超えて来てくれているか、わかっている。
人間のスケジュールとは違うほどの過酷な時間を飛影が費やしていることも。
それでも会いに来てくれる時は優しい。
多くはない言葉の中にある気持ちが、じわじわ伝わるのだ。

「治ったら…俺が…」
続く言葉を、飛影は遮った。何が続くか、飛影はわかっている。

「ひとりで魔界に来るな」
言う飛影の顔が近かった。迫る距離で、飛影の瞳に真剣な光が宿った。
「呼べば、迎えに来るから」
蔵馬の髪を撫でれば、泣きそうな顔でその人は頷いた。

長い髪を撫で、飛影は言った。
「ちゃんと眠れ」

蔵馬の瞳が、閉じられた。
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すうすうと、寝息が聞こえた。繋がれた手が、強い。
飛影の手を離すまいと、蔵馬が両手を重ねていた。

『ねえ、飛影――』
眠りに落ちる前に、蔵馬は何度か言いかけてはやめた。
ゆらゆらたゆとう瞳が、不安定に回った。そして飛影の瞳を捕らえて、止まった。
『心配するな』
蔵馬の手のひらをすっと撫でれば、んっと、甘い声が一瞬漏れた。
『こうしてそばにいるだろ、今も――明日も』
不安げに揺れていた瞳が、光を取り戻した。

眠る蔵馬に布団をかけなおしてやり、呟いた。
「お前が治るまで、いるからな」

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今年一年、PCサイト、スマホサイト、ブログ読んでくださりありがとうございました。

1月も唐突に更新するかもしれないです。